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ラルフ様編3
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※※ 次の日学園に行きましたら、 「アンリ嬢。」と呼び止められました。
振り返りますと、ショートヘアで赤い髪が煌めく麗しの方がこちらを見つめていました。 黒いドレス姿がとってもよく似合う、男装の麗人のようなランゼ様。 一つ上の先輩です。
「アンリ嬢、ちょっといいだろうか。」
「ランゼ様・・・。」
ランゼ様は目が蕩けるほど美しい顔で、ついてきなという風にくるりと翻ると歩き始めました。 学園の上からは見えますが周りに声が聞こえない庭園までくると、妖艶な微笑みを浮かべたランゼ様が・・・
「あのさ、ラルフと恋仲になったんだって?」
「え?まったくもって勘違いですよ。」
きゅるるん・・・。ランゼ様、悪役令嬢ならぬ悪役令息風?煌めく瞳を見つめるとまったく動けません。
「ぷっ、勘違いと言い切っていいの?」
そっと頬を触られます。
もう、わたくしは堕ちてしまいそうです。 (あーあーあー、歌って踊る塚系でお願いします。)
「周りの連中がさ、私に教えてくれたわけ。ラルフが特定の女を誘ってたって。」
「な、なんと、言いますか・・・。
お食事を一度させて頂いただけですぅ。」
(あ、頭が真っ白で考えが何も出てこない。)
「あぁ、いいよ。わかったから。私はさ、婚約内定の一歩手前の処にいるわけ。好きな男がいるわけではないし、あいつとは幼馴染だからお互い割り切った状態の結婚になると思う。だから、学園にいる間あいつが誰かを好きになったら開放してやろうと思うんだ。」
煌めく目のなかに、痛みが見える。言葉で隠し切れない恋情が燃えているのだろう。 (あぁ、誰かが笑顔で笑うとき、誰かが涙を流す・・・恋ってそういうものなんだ。乙女ゲーム内だとしても、それぞれ皆が感情を持っている。強制力によってわたくしに惹かれていたなら、なんという悲劇なんでしょう。)
頬に触れていた手が少し下がる。顔が近づき吐息がかかります。
(なんという美しさなんでしょう。これが若い生命の輝きなんでしょうか。傷ついた目が輝きを彩ります。ヒロインだとしても、ぶりっこをしてこの場を濁したりしたくない。)
「ランゼ様、いいえ、ランゼ伯爵令嬢様。」
「はっ。」
わたくしの首を眺めていたランゼ様が、はっと我にかえりました。令嬢の爵位で呼び本来の立ち位置を分からせます。
さっと、わたくしはドレスの胸元から扇を出して開きます。
「わたくしに成り代わりたい?それともわたくしさえいなければ?」
「な、何をいうのだ。」
「ランゼ伯爵令嬢様?貴女はいつから黒のドレスをまとうようになりました?傷ついた心を隠してわたくしを脅すような仕草をして。」
「アンリ嬢、な、何を言うのだ。わたしは脅してなんかいない。」
「いいえ、確かに感じ取りました。ご自分とラルフ様だけには、正直になってもよろしいのでは。せっかくの学園生活ですもの。」
芝生の上に膝まついて崩れ落ちたランゼ様をしばらく見つめていると、
(よいことを思いつきました。)
「ランゼ様、今日我が家にお出で下さらないこと?」
「あぁぁ・・」
そこへ校舎のほうからバタバタと足音が聞こえました。
「アンリ嬢、なんともないか?」
ラルフ様が息を吐きながらこちらに問いかけ・・・て、ランゼ様が芝生の上に座りこんでいるのを見て驚いた顔をする。
ランラランラララランランラン♪
「ランゼ様、もしお時間があるようでしたら授業の後侍女がお迎えに上がりますので一緒に来てくださいませ。」
ランゼ様の横に行き、腕を持ち立たせるところを見ると、ラルフ様はランゼ様のことを男性扱いしているかのように見受けられます。幼馴染とはこんな感じなのでしょうか?
振り返りますと、ショートヘアで赤い髪が煌めく麗しの方がこちらを見つめていました。 黒いドレス姿がとってもよく似合う、男装の麗人のようなランゼ様。 一つ上の先輩です。
「アンリ嬢、ちょっといいだろうか。」
「ランゼ様・・・。」
ランゼ様は目が蕩けるほど美しい顔で、ついてきなという風にくるりと翻ると歩き始めました。 学園の上からは見えますが周りに声が聞こえない庭園までくると、妖艶な微笑みを浮かべたランゼ様が・・・
「あのさ、ラルフと恋仲になったんだって?」
「え?まったくもって勘違いですよ。」
きゅるるん・・・。ランゼ様、悪役令嬢ならぬ悪役令息風?煌めく瞳を見つめるとまったく動けません。
「ぷっ、勘違いと言い切っていいの?」
そっと頬を触られます。
もう、わたくしは堕ちてしまいそうです。 (あーあーあー、歌って踊る塚系でお願いします。)
「周りの連中がさ、私に教えてくれたわけ。ラルフが特定の女を誘ってたって。」
「な、なんと、言いますか・・・。
お食事を一度させて頂いただけですぅ。」
(あ、頭が真っ白で考えが何も出てこない。)
「あぁ、いいよ。わかったから。私はさ、婚約内定の一歩手前の処にいるわけ。好きな男がいるわけではないし、あいつとは幼馴染だからお互い割り切った状態の結婚になると思う。だから、学園にいる間あいつが誰かを好きになったら開放してやろうと思うんだ。」
煌めく目のなかに、痛みが見える。言葉で隠し切れない恋情が燃えているのだろう。 (あぁ、誰かが笑顔で笑うとき、誰かが涙を流す・・・恋ってそういうものなんだ。乙女ゲーム内だとしても、それぞれ皆が感情を持っている。強制力によってわたくしに惹かれていたなら、なんという悲劇なんでしょう。)
頬に触れていた手が少し下がる。顔が近づき吐息がかかります。
(なんという美しさなんでしょう。これが若い生命の輝きなんでしょうか。傷ついた目が輝きを彩ります。ヒロインだとしても、ぶりっこをしてこの場を濁したりしたくない。)
「ランゼ様、いいえ、ランゼ伯爵令嬢様。」
「はっ。」
わたくしの首を眺めていたランゼ様が、はっと我にかえりました。令嬢の爵位で呼び本来の立ち位置を分からせます。
さっと、わたくしはドレスの胸元から扇を出して開きます。
「わたくしに成り代わりたい?それともわたくしさえいなければ?」
「な、何をいうのだ。」
「ランゼ伯爵令嬢様?貴女はいつから黒のドレスをまとうようになりました?傷ついた心を隠してわたくしを脅すような仕草をして。」
「アンリ嬢、な、何を言うのだ。わたしは脅してなんかいない。」
「いいえ、確かに感じ取りました。ご自分とラルフ様だけには、正直になってもよろしいのでは。せっかくの学園生活ですもの。」
芝生の上に膝まついて崩れ落ちたランゼ様をしばらく見つめていると、
(よいことを思いつきました。)
「ランゼ様、今日我が家にお出で下さらないこと?」
「あぁぁ・・」
そこへ校舎のほうからバタバタと足音が聞こえました。
「アンリ嬢、なんともないか?」
ラルフ様が息を吐きながらこちらに問いかけ・・・て、ランゼ様が芝生の上に座りこんでいるのを見て驚いた顔をする。
ランラランラララランランラン♪
「ランゼ様、もしお時間があるようでしたら授業の後侍女がお迎えに上がりますので一緒に来てくださいませ。」
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