5 / 28
盲目の少女と戦うロボット 5
しおりを挟む
小さな街道を抜け、人通りの少ない路地を俺たちは歩いていると、何やら物々しい建物見えてきた。どうやら目的地へと着いたようだ。
俺は、後ろにいる彩花に
「基地に着いたぞ、もう少しついてきてくれ」
と言いつつ、振り返ると、彼女は先ほど買った花を大事そうに抱えながら、にこにこと笑みを見せていた。俺は、その様子に癒されていると、彼女は
「あっ‥‥はい‥‥」
と恥ずかしそうに言った。きっと聞いていなかったんだろう。
俺は、もう一度言い直すと、彼女は顔を赤らめながら頷いた。
ほほ染めた彼女を眺めたいという邪な考えを払拭するように、顔を横に振り、俺たちは基地内部へと進んでいった。
2人で基地内を進むと、質素だがしっかりとした扉が現れた。司令官の部屋だ。
俺は、扉をノックし
「失礼します」
と言った後、部屋の中へ入っていった。
部屋の中は決して広いということはないが、立派な造りで、奥にいる司令官の机は資料で山積みになっており、そのさらに奥には、ひげを蓄えた男性がデスクワークをしていた。
「報告に参りました、7号です」
と俺が言ったその時、司令官が
「何故報告がこんなに遅かった?貴様、職務を怠っていたのではないだろうな?」
と静かだが確実に怒りを感じる口調で聞いてきた。俺は
「いえ、護衛対象の負担を考えた結果、すぐにここへ報告に来るのは不可能に近いと判断し、今日ここへ参りました。」
と冷静に答えた。すると、司令官が
「ほう、ということは東雲氏の護衛は成功したと受け取れば良いのだな?」
と静かに問いかけ、続けて、
「報告によれば、ラクアらしきロボットが襲撃したとあるのだが、貴公は目撃したか?」
と尋ねた。俺は
「いえ、私が現場に着いた頃には敵も味方も、誰一人として立つものはおらず、邸宅は焼け落ちていました」
と答えると、司令官は
「そうか‥‥やはり全滅していたか‥‥」
とどこか悲しげな表情で呟く。俺は
「しかし、護衛対象であった東雲家のご令嬢は存命していました」
と言うと、後ろでたたずむ彩花の肩にそっと手をかけ、司令官が見える位置に立たせた。
「ご無事で何よりでございます、東雲様」
と司令官が言い、続けて、
「ご家族やご自宅の件、大変申し訳ございません。単に我々の力不足が招いた結果でございます、本当に申し訳ございません」
と深々と頭を下げ、謝罪した。彼女は
「い、いえ‥‥す、過ぎたことなので‥‥頭をあげて下さい‥‥」
と言った。その表情には、どこか寂しげな思いが隠されているような気がした。
司令官が頭をゆっくりと上げ
「ミスをした我々から申し出るのは恐縮ですが、また我々に護衛を任せてもらえないでしょうか?この基地にはわが国最強と名高い兵士の三俣(みつまた)がいますし、ちょうど大きな空き部屋もございます」
と少し申し訳なさそうに提案した。彼女は
「ぜひお願いします‥」
と承諾をすると、司令官が
「ありがとうございます。では、基地内の案内を七号にさせます、何かご入用の際は気兼ねなくお申し付けください」
と言い、続けて
「七号頼んだぞ、部屋は一番奥の部屋だ」
と命令した。俺が
「了解しました、では失礼しました」
と言い終えると、また山積みになったデスクワークに取り掛かった。
俺たちは、司令室から出ると、真っ直ぐに指定された部屋へ向かった。
すると、道中に長身の男がこちらに向かってきた。
「よう!7号君~♪隣の子は彼女?可愛いねぇ~」
長身の男が軽い口調で言ってきた。
「三俣さん、お疲れ様です。こちらは東雲家のご令嬢、彩花様です」
と俺は単調に答えた。
「相変わらずお堅いな~そんなだとモテないぞ~」
と三俣さんが口をとがらせながら言った。俺は
「俺は、モテる必要ありません。すいません、基地の案内があるので」
と言い、彩花の腕を引っ張った。すると
「そんなつれないこと言うなよ~俺も案内する~」
と言いつつ、後を付いて来た。俺は、呆れながら
「いいですが、奥さんが怒りますよ?」
と言った。すると、彼は
「彼女は不味い!頼む、チクらないでくれ!」
と青ざめたような顔で言ってきた。
「別にそんなことはしませんが‥‥」
俺がそう言うと、彼は
「じゃあ、部屋に行こうー!」
と意気揚々と歩き出した。
「三俣さん、そっちじゃないです」
と俺は歩き出した彼を呼び止め、正しい方角に指をさした。
彼は笑いながら
「はは、間違えちゃった~」
と言うと、俺のさした方向へ歩みを進めた。俺たちもその後を追うようにゆっくりと歩きだした。
指定された部屋に着くと、豪勢で立派な扉があった。どうやら最高級の客室を使用させてくれるらしい。
俺が、扉を開くとそこには、広い空間と充実した設備が広がっていた。中の家具は、豪華で高そうなものばかりで、生活するには少し億劫になりそうな感じだが、俺が使っている部屋の数倍はいい所だと思った。
そんなことを考えていると、彼女が
「あの‥‥少し気になったのですが、7号って何なのでしょうか?」
と疑いながら聞いてきた。
「ああ、それは製‥‥」
と三俣さんが言いかけたその時
「あ、愛称だよ、博士が最初に漆を漢数字と間違えて発音してからそうなったんだ」
と遮るように言った。彼が不思議そうにこちらを見ていると、彼女は
「そうだったのですね、これからはそちらでお呼びしたほうがよろしいですか?」
と尋ねてきた。俺は
「君が呼びやすいほうでいい」
と言うと、何かを察した三俣さんがニヤニヤと笑っていた。
俺は、その表情に既視感と嫌な予感がして、顔を背けると
「君~彼女に恋をしているのか~?」
と小声で彼が聞いてきた。どうやら嫌な予感が的中してしまったようだ。俺は
「いいえ、違います」
とはっきり否定した。だが、彼は
「いやいや、隠さなくていいって~懐かしいな~俺もあったな~」
と話を聞いていない様子だったので、俺は
「今日のこと奥さんにばらしますよ?」
と小声でささやくように言った。すると、彼は
「それだけは勘弁してくれよ~」
と言いつつ、平謝りをしてきた。
そんな会話をしていると、扉が勢い良く開き、新兵が
「7号さん、三俣さん!至急司令室まで来てください!」
と息が荒いまま言った。
新兵の様子からただ事ではないことを察した俺たちは、彼女に別れを告げ、司令室へと向かった。
俺は、後ろにいる彩花に
「基地に着いたぞ、もう少しついてきてくれ」
と言いつつ、振り返ると、彼女は先ほど買った花を大事そうに抱えながら、にこにこと笑みを見せていた。俺は、その様子に癒されていると、彼女は
「あっ‥‥はい‥‥」
と恥ずかしそうに言った。きっと聞いていなかったんだろう。
俺は、もう一度言い直すと、彼女は顔を赤らめながら頷いた。
ほほ染めた彼女を眺めたいという邪な考えを払拭するように、顔を横に振り、俺たちは基地内部へと進んでいった。
2人で基地内を進むと、質素だがしっかりとした扉が現れた。司令官の部屋だ。
俺は、扉をノックし
「失礼します」
と言った後、部屋の中へ入っていった。
部屋の中は決して広いということはないが、立派な造りで、奥にいる司令官の机は資料で山積みになっており、そのさらに奥には、ひげを蓄えた男性がデスクワークをしていた。
「報告に参りました、7号です」
と俺が言ったその時、司令官が
「何故報告がこんなに遅かった?貴様、職務を怠っていたのではないだろうな?」
と静かだが確実に怒りを感じる口調で聞いてきた。俺は
「いえ、護衛対象の負担を考えた結果、すぐにここへ報告に来るのは不可能に近いと判断し、今日ここへ参りました。」
と冷静に答えた。すると、司令官が
「ほう、ということは東雲氏の護衛は成功したと受け取れば良いのだな?」
と静かに問いかけ、続けて、
「報告によれば、ラクアらしきロボットが襲撃したとあるのだが、貴公は目撃したか?」
と尋ねた。俺は
「いえ、私が現場に着いた頃には敵も味方も、誰一人として立つものはおらず、邸宅は焼け落ちていました」
と答えると、司令官は
「そうか‥‥やはり全滅していたか‥‥」
とどこか悲しげな表情で呟く。俺は
「しかし、護衛対象であった東雲家のご令嬢は存命していました」
と言うと、後ろでたたずむ彩花の肩にそっと手をかけ、司令官が見える位置に立たせた。
「ご無事で何よりでございます、東雲様」
と司令官が言い、続けて、
「ご家族やご自宅の件、大変申し訳ございません。単に我々の力不足が招いた結果でございます、本当に申し訳ございません」
と深々と頭を下げ、謝罪した。彼女は
「い、いえ‥‥す、過ぎたことなので‥‥頭をあげて下さい‥‥」
と言った。その表情には、どこか寂しげな思いが隠されているような気がした。
司令官が頭をゆっくりと上げ
「ミスをした我々から申し出るのは恐縮ですが、また我々に護衛を任せてもらえないでしょうか?この基地にはわが国最強と名高い兵士の三俣(みつまた)がいますし、ちょうど大きな空き部屋もございます」
と少し申し訳なさそうに提案した。彼女は
「ぜひお願いします‥」
と承諾をすると、司令官が
「ありがとうございます。では、基地内の案内を七号にさせます、何かご入用の際は気兼ねなくお申し付けください」
と言い、続けて
「七号頼んだぞ、部屋は一番奥の部屋だ」
と命令した。俺が
「了解しました、では失礼しました」
と言い終えると、また山積みになったデスクワークに取り掛かった。
俺たちは、司令室から出ると、真っ直ぐに指定された部屋へ向かった。
すると、道中に長身の男がこちらに向かってきた。
「よう!7号君~♪隣の子は彼女?可愛いねぇ~」
長身の男が軽い口調で言ってきた。
「三俣さん、お疲れ様です。こちらは東雲家のご令嬢、彩花様です」
と俺は単調に答えた。
「相変わらずお堅いな~そんなだとモテないぞ~」
と三俣さんが口をとがらせながら言った。俺は
「俺は、モテる必要ありません。すいません、基地の案内があるので」
と言い、彩花の腕を引っ張った。すると
「そんなつれないこと言うなよ~俺も案内する~」
と言いつつ、後を付いて来た。俺は、呆れながら
「いいですが、奥さんが怒りますよ?」
と言った。すると、彼は
「彼女は不味い!頼む、チクらないでくれ!」
と青ざめたような顔で言ってきた。
「別にそんなことはしませんが‥‥」
俺がそう言うと、彼は
「じゃあ、部屋に行こうー!」
と意気揚々と歩き出した。
「三俣さん、そっちじゃないです」
と俺は歩き出した彼を呼び止め、正しい方角に指をさした。
彼は笑いながら
「はは、間違えちゃった~」
と言うと、俺のさした方向へ歩みを進めた。俺たちもその後を追うようにゆっくりと歩きだした。
指定された部屋に着くと、豪勢で立派な扉があった。どうやら最高級の客室を使用させてくれるらしい。
俺が、扉を開くとそこには、広い空間と充実した設備が広がっていた。中の家具は、豪華で高そうなものばかりで、生活するには少し億劫になりそうな感じだが、俺が使っている部屋の数倍はいい所だと思った。
そんなことを考えていると、彼女が
「あの‥‥少し気になったのですが、7号って何なのでしょうか?」
と疑いながら聞いてきた。
「ああ、それは製‥‥」
と三俣さんが言いかけたその時
「あ、愛称だよ、博士が最初に漆を漢数字と間違えて発音してからそうなったんだ」
と遮るように言った。彼が不思議そうにこちらを見ていると、彼女は
「そうだったのですね、これからはそちらでお呼びしたほうがよろしいですか?」
と尋ねてきた。俺は
「君が呼びやすいほうでいい」
と言うと、何かを察した三俣さんがニヤニヤと笑っていた。
俺は、その表情に既視感と嫌な予感がして、顔を背けると
「君~彼女に恋をしているのか~?」
と小声で彼が聞いてきた。どうやら嫌な予感が的中してしまったようだ。俺は
「いいえ、違います」
とはっきり否定した。だが、彼は
「いやいや、隠さなくていいって~懐かしいな~俺もあったな~」
と話を聞いていない様子だったので、俺は
「今日のこと奥さんにばらしますよ?」
と小声でささやくように言った。すると、彼は
「それだけは勘弁してくれよ~」
と言いつつ、平謝りをしてきた。
そんな会話をしていると、扉が勢い良く開き、新兵が
「7号さん、三俣さん!至急司令室まで来てください!」
と息が荒いまま言った。
新兵の様子からただ事ではないことを察した俺たちは、彼女に別れを告げ、司令室へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる