機械と花 ロボットだろうが感情はあるんだから恋愛くらいしてもいいだろ?

トリカブト

文字の大きさ
8 / 28

赤い英雄襲来 3

しおりを挟む
 背後から迫る鈍く光る剣をかろうじて避けると、後ろに飛びのき、距離をとる。
 真っ黒で所々返り血で赤くなっているロボットがそこにいた。その両手には、剣を2本携え、今まで対峙してきたどの敵よりも風格があり、一目で歴戦の戦士ということが分かった。
ラクアだ、俺は確信し、銃口を向け放つ。しかし、軽く躱され、一瞬にしてとった距離を詰められ、剣を振り降ろされる。上半身が浅く引き裂かれ、バチバチと電気の炸裂音が鳴り響く。痛覚がなかったのをこれ以上に感謝したことはない。
お返しと言わんばかりに銃を放つ。しかし、無情にも躱される。俺は、圧倒的な性能の差に絶望感を抱く。こんな相手に勝てるのか?それ以前に生き残れるのか?そんなことをお構いなしに攻撃は続く。それを紙一重で躱していく。防戦一方の俺に相手が距離をとる。

「これほど俺の攻撃を受けて立っていた者は久しく見なかったぞ」

 ラクアが不敵に笑いながら言う。その笑みは強者たる余裕からか?俺が悔しそうに表情を歪める。

「では、少し本気で行くぞ」

そう言うと、さっきの数段上の速度で間合いを詰められる。諸刃の剣になるがあれを使うしかないか。そう覚悟を決めると、振り上げられた腕を掴み、手榴弾のピンを抜く。

「ほう、自爆をするというのか?」

 彼は、余裕そうに問うと、手榴弾を持つ手を切り離そうと剣を振るう。俺は、さらに間合いを詰め、手榴弾を押し当てながら倒れこむ。爆裂音とともに黒煙が2人を包む。

やったか?今はない左手に確かな手ごたえを感じた。その僅かな希望を奪い去るように腹に剣が刺さり、俺の体は二分された。切り飛ばされ、地面に落ちる最中、何故か彩花のことを思い出していた。彼女は今何をしているのか?そんなことを考えながら、俺は、地に落ちた。

「土壇場で間合いを詰め攻撃するとは、経験が活かした結果か?どちらにせよ、俺にダメージを負わせられる者はそういない。」

 ラクアが、ゆっくりと近づいてくる。まるで、死神のようだ。俺は、自身の死を目の前にしてようやく彩花を好意的に思っていたのだと初めて実感していた。嫌だ、まだ死にたくない‥‥そんな思いも虚しく剣が振りあがる。俺は目を閉じ、恐怖から目をそらす。
 そんな俺の耳に聞こえてきたのは、激しく金属がぶつかり合う音。目を開くと、三俣さんがラクアの攻撃を止めていた。

「そいつは、俺の大事な後輩なんだ。死なせはしない」

 と三俣さんが言った。これほどまでに三俣さんを羨望の眼差しで見たことはなかっただろう。

「そのトライデント‥‥貴殿があの鬼神の三俣か?」

そうラクアが問う。長く綺麗な三叉槍で敵をなぎ倒していく姿は敵にとっては鬼のように見えるのだろう。俺がそう思っていると

「ふっ、相手にとって不足はない。本気で参る!」

 ラクアがそう言うと、目にもとまらぬ速さで突撃する。2人の壮絶な戦いを見届ける前に俺の意識は遠のいていき、目の前が暗くなった。



 不規則に上下に揺れる感覚で俺は目を覚ます。どうやら誰かに背負われているらしい。朦朧とした意識の中で振り絞るような声が聞こえてきた。

「7号君‥‥まだ死ぬときじゃないよ‥‥俺もお前も‥‥」

 三俣さんの声だ。生きているということはあのラクアに勝ったのか?しかし、相当なけがをしているらしい。先ほどから血の匂いがずっと鼻に纏わりついてくる。
 あれから何分経ったのだろうか?ここはどこなんだろうか?そんな疑問を浮かべているとまた意識が遠のいていくのを感じた。



 気が付くと、俺は橘博士のラボにいた。状況が全く読み込めず暫しの間、放心状態でいると

「一将!起きたか!」

博士が大きな声で言った。その表情には安堵が見えた。俺はどうなったんだ?三俣さんは?ラクアは?聞きたいことが多すぎて、何から聞いたものなのか混乱していると

「漆山さん!」

 彩花が泣きそうな声を出しながら、こちらへと近づいてくる。

「どうして何も言わずに危険なところへ行くのですか?!」
 
「なぜまた私に失う辛さを与えるのですか?!」

「答えてください!」

 そう言い終えると彼女は堰を切ったように、大粒の涙をこぼし始めた。彩花と知り合って間もないがこんなに大きな声で主張をはっきり聞くことは初めてだった。俺がその威圧にひるんでいると

「一将、とりあえずは今君が置かれている状況について話すよ」

 そう言うと、博士は、こう語りだした。

「三俣さんがラクアと戦闘した後、君は負傷した彼に背負われて拠点へと戻ってきたらし
い。君たちはひどく負傷していて簡易的な施設しかない拠点ではなく、街に緊急搬送されたんだ」

「君の外部損傷もひどかったけど、三俣さんの状態は最悪に近い状態で生きているのが不思議だった。君は幸いにも大事には至らなかったけど、彼は‥‥」

「三俣さんはどうなったんだ?!聞かせてくれ!」

俺が割って入るように言うと、博士は

「一命はとりとめたが、正直言っていつ危なくなるかわからない。今はこの街の病院で治療を受けているよ」

 と残念そうに言った。そんな‥‥俺が絶望感に打ちのめされていた。あの時もう少し俺に力があれば‥‥自身の不甲斐なさに腹が立ち、拳をベッドに突き刺す。

「司令官さんが、君が目覚めたらこの封筒を‥‥」

 博士が思い出したように言い、封筒を取り出し、俺に渡した。
 そこには絶望感が増長するようなことが書かれていた。どうやらラクアは生きているらしい。しかも、パーツを修復すればすぐにでも戦線へ出られるような状態だということが諜報部より報告されている。しかし、ラクアの機体のパーツはオーダーメイドらしく、修復には時間がかかるらしい。
 こちらの被害とあちらの損害‥‥両者を見て明らかになった。俺たちは、敗北を喫したのだ。小隊を組まない俺にとって、敗北とは死に直結する。初めての敗北だった。
 今すぐにでも敵を取りに行きたいが、この体は前回のものよりも脆く、戦闘向きではない。
 今はただ己の無力さと初めて味わう辛酸を嚙みしめるだけしか出来なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...