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知られざる過去 2
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晴天の霹靂を受けたように、俺の思考は動くことをやめていた。
「博士が、スパイ?そんなはずないじゃないですか!だって‥‥」
「信じられないのは分かるが、確固たる証拠があがっているのだ」
「そんな‥‥!」
「しかし、まぁ解せないことはある。それは、証拠がどれも古いものばかりだということだ」
「本当に‥‥博士が‥‥」
「ここで我々が、話し合っても仕方がない。だから、当人に話してもらおうじゃないか」
「え?」
「失礼します」
ノックとともに、博士が司令室へ入ってきた。俺を見て、少し驚いた表情をした後、申し訳なさそうに、作り笑顔をする。
「よく来てくれた、橘博士。賢明な貴公なら、もう分っているな?」
「ええ、僕の過去の経歴がバレた‥‥ということですね?」
「ご名答だ」
「博士!本当にスパイだったのか?!俺を‥‥皆だましてたのか?!」
彼の胸倉をつかみ、割り込むように問いただす。嘘であってくれ‥‥そう願う俺の期待を奪い去るような答えが返ってくる。
「そうだよ‥‥僕は、元々この国の情報を探るために送られたスパイさ‥‥だけどね、それは過去の話だ。今は、祖国に憎しみさえ覚えている」
「少しだけ‥‥昔話をしてもいいですか?」
「構わない。貴公の言い分を聞くために、ここへ呼んだからな」
「ありがとうございます‥‥一将‥‥よく聞いていてくれ」
俺は、突然の告白に呆然と立ち尽くし、博士の言葉をただ耳に入れることしか出来なかった。
「この国の技術力は、今でこそ敵国に次ぐ水準にあるけど、少し前までロボット技術の全くない連合国に比べればマシ程度だったんだ」
「そんな相手にわざわざ諜報部員まで送るのは、なぜか?それは、1度占領に失敗しているんだよ」
「ああ、私も覚えている。そのころは、軍の英雄が存命だったからな」
「はい、そうです。その人物やこの国の類まれなる医療技術を知るべく、我々が送られてきました」
「最初は軍医として軍に潜り込み、帝国にどんどん情報を流していった‥‥だけど、そんなある日に妻と出会ったんだ‥‥」
「彼女に惹かれていく内に、いつしか結婚し、幸せな家庭を築き始めていた。次第に諜報の仕事をおろそかになっていった」
「仕事をしなくなった諜報部員は消される、寝返られたら厄介な上だからね。僕の元にも暗殺者が来るのは時間の問題だった」
「仕事から帰宅すると、妻が無残な姿にされる光景を目の当たりにした。多少なりとも軍に所属している身だったからね‥‥僕は、妻を殺したその男を殺した」
「後は、情報を改ざんして、本当に僕が死んだように見せた。そうしないと、また刺客を送り込まれかねないからね」
「だから、僕は、帝国に憎しみを持っている。今は、妻の愛したこの国を救おうと思っている‥‥」
「ああ、貴公の言い分は分かった。だが、これからは、我々の監視下に入ってもらう。裏切った者は、こちらを裏切らない保証はないからな」
「はい‥‥僕も承知の上で、ここに来ました」
「7号のメンテナンスは、貴公にしか出来ない。貴公には、引き続き働いてもらおうか。ほぼ自由に動ける時間はないが‥‥即射殺されないだけ寛大な措置だと思ってくれ」
「分かりました‥‥では、失礼しました」
そう言い終えると、博士は司令室を後にした。廊下には、兵士が2人待ち受けており、彼らにどこかに連れられて行くのが見えた。きっと、作業場に軟禁状態になるのだろう‥‥
俺は、去り行く博士に何も言えず、ただその場にいることしか出来なかった。
しばらくの間、立ち尽くしていると、司令官が話しかけてきた。
「悪いな‥‥だが、貴公抜きにこの話を進めるのは、気が引けるのでな」
「いえ‥‥少しだけ頭の中を整理したいのですが‥‥よろしいですか?」
「構わない‥‥それが済み次第、次の作戦の概要を話すとしよう」
「はい‥‥失礼しました」
そう言うと、俺は司令室を出た。気持ちの整理‥‥出来るのだろうか?こんな状態で‥‥
そんなことを考えていると、規則的に鳴り響く地面を突く音が聞こえてきた。おそらく彩花の杖の音だろう。
俺がそう思って、廊下の奥を見ていると、暗闇の中から彩花の姿が見えた。不味いな‥‥彩花に格好の悪いところは見せたくないが、今は‥‥取り繕える余裕がない‥‥
俺は、静かに後ずさりしたが、後ろの棚に誤って、足をぶつけてしまった。
「誰かいるのですか?」
「ああ、こんばんは。彩花」
「漆山さんでしたか、こんばんは」
「あの‥‥いつになく元気がない声ですが、大丈夫ですか?」
「うん?ああ‥‥まぁ、色々とな‥‥」
「私でよければ、力になりますよ!」
「はは‥‥頼もしいな‥‥知らない方が幸せだということもあるって話だ、詳しくは聞かないでくれ」
「なるほど‥‥じゃあ、私と散歩しませんか?」
「散歩?それで、気持ちの整理がつくのか?」
「うーん、気晴らしにはなりますよ!ここの中庭は、綺麗なところだと兵士さんから聞きましたよ!ほら、行きましょう!」
そう言うと、彼女はゆっくりと前へ進んでいく。俺は、その後をゆっくりとついていった。
彩花の案内に従い、基地内を進んでいくと、綺麗な庭園が目の前に現れた。色とりどりの植物に、それを照らす月は、欠けることなく美しい円形をしていた。
「こんな所があったとはな‥‥」
「相当綺麗な場所なのですね‥‥漆山さんの声で分かります。それに色んな花の匂い‥‥手入れがよく行き届いていそうな庭園なのでしょうね」
「昔‥‥母とよく庭で遊んでもらいました‥‥懐かしいなぁ」
月明かりの下で、過去を懐かしむ彼女は、とても魅力的に見えた。しかし、彼女はつらくはないのだろうか?母親は、彼女の目の前で‥‥
暫しの間、沈黙が続くと、彼女はこう言った。
「漆山さんも‥‥いつかは、こんな風に許せる時が来ますよ‥‥」
「過去は、どれだけ憂いても帰ってきません。私も、母を求め続けました。ずっと泣いたり、犯人に対して憎んだり‥‥そんなことをしていました」
「だけど、何も‥‥帰ってはこなかった。あるのは、ただの自己満足で‥‥何も出来なかった自分自身を許せなくて、何かをし続けていたかったのです」
「だから‥‥私は、過去の私を許すことにしました。すると、辛かった過去ばかりに目が行かなくなって、今みたいに楽しかった記憶を思い出せるようになりました」
「漆山さんも‥‥きっといつかは、今の嫌な思い出を受け入れられると思うのです。だから、その時は‥‥私に聞かせてください」
「ああ‥‥分かった。約束しよう」
俺がそう言うと、彼女は静かに微笑んだ。彼女には、本当に救われてばかりだ‥‥いつか俺のことも、話さなければいけない日が来るんだよな‥‥その時は‥‥いや、いつかは、受け入れられるようになって欲しいな‥‥
そう思いながら、俺は、月を見上げる。
月を堪能していると、彩花が思い出したように言った。
「そうだ!今日は、満月なのですよね?」
「ああ、とても綺麗だ」
「異国では、月にまつわる告白があるらしいですよ!本で読んだことがあって‥‥」
「えっと‥‥漆山さんが、さっき言ったように、月が綺麗ですねって聞くそうですよ!すごくロマンチックで素敵ですよね‥‥」
「ああ、そうだな‥‥そろそろ戻ろう。夜風に当たりすぎると、風邪を引いてしまう」
「ええ、そうですね。戻りましょうか」
そう言うと、俺たちは、彼女の自室へとゆっくりと歩を進めた。
自室へと着くと、彼女が微笑みながら手を振っていた。俺も手を振り返したが、目が見えていないから、必要ないな‥‥と気が付き、少し恥ずかしがりながら、自身の部屋へと戻る。
「このまま時が止まればいいのに‥‥」
「博士が、スパイ?そんなはずないじゃないですか!だって‥‥」
「信じられないのは分かるが、確固たる証拠があがっているのだ」
「そんな‥‥!」
「しかし、まぁ解せないことはある。それは、証拠がどれも古いものばかりだということだ」
「本当に‥‥博士が‥‥」
「ここで我々が、話し合っても仕方がない。だから、当人に話してもらおうじゃないか」
「え?」
「失礼します」
ノックとともに、博士が司令室へ入ってきた。俺を見て、少し驚いた表情をした後、申し訳なさそうに、作り笑顔をする。
「よく来てくれた、橘博士。賢明な貴公なら、もう分っているな?」
「ええ、僕の過去の経歴がバレた‥‥ということですね?」
「ご名答だ」
「博士!本当にスパイだったのか?!俺を‥‥皆だましてたのか?!」
彼の胸倉をつかみ、割り込むように問いただす。嘘であってくれ‥‥そう願う俺の期待を奪い去るような答えが返ってくる。
「そうだよ‥‥僕は、元々この国の情報を探るために送られたスパイさ‥‥だけどね、それは過去の話だ。今は、祖国に憎しみさえ覚えている」
「少しだけ‥‥昔話をしてもいいですか?」
「構わない。貴公の言い分を聞くために、ここへ呼んだからな」
「ありがとうございます‥‥一将‥‥よく聞いていてくれ」
俺は、突然の告白に呆然と立ち尽くし、博士の言葉をただ耳に入れることしか出来なかった。
「この国の技術力は、今でこそ敵国に次ぐ水準にあるけど、少し前までロボット技術の全くない連合国に比べればマシ程度だったんだ」
「そんな相手にわざわざ諜報部員まで送るのは、なぜか?それは、1度占領に失敗しているんだよ」
「ああ、私も覚えている。そのころは、軍の英雄が存命だったからな」
「はい、そうです。その人物やこの国の類まれなる医療技術を知るべく、我々が送られてきました」
「最初は軍医として軍に潜り込み、帝国にどんどん情報を流していった‥‥だけど、そんなある日に妻と出会ったんだ‥‥」
「彼女に惹かれていく内に、いつしか結婚し、幸せな家庭を築き始めていた。次第に諜報の仕事をおろそかになっていった」
「仕事をしなくなった諜報部員は消される、寝返られたら厄介な上だからね。僕の元にも暗殺者が来るのは時間の問題だった」
「仕事から帰宅すると、妻が無残な姿にされる光景を目の当たりにした。多少なりとも軍に所属している身だったからね‥‥僕は、妻を殺したその男を殺した」
「後は、情報を改ざんして、本当に僕が死んだように見せた。そうしないと、また刺客を送り込まれかねないからね」
「だから、僕は、帝国に憎しみを持っている。今は、妻の愛したこの国を救おうと思っている‥‥」
「ああ、貴公の言い分は分かった。だが、これからは、我々の監視下に入ってもらう。裏切った者は、こちらを裏切らない保証はないからな」
「はい‥‥僕も承知の上で、ここに来ました」
「7号のメンテナンスは、貴公にしか出来ない。貴公には、引き続き働いてもらおうか。ほぼ自由に動ける時間はないが‥‥即射殺されないだけ寛大な措置だと思ってくれ」
「分かりました‥‥では、失礼しました」
そう言い終えると、博士は司令室を後にした。廊下には、兵士が2人待ち受けており、彼らにどこかに連れられて行くのが見えた。きっと、作業場に軟禁状態になるのだろう‥‥
俺は、去り行く博士に何も言えず、ただその場にいることしか出来なかった。
しばらくの間、立ち尽くしていると、司令官が話しかけてきた。
「悪いな‥‥だが、貴公抜きにこの話を進めるのは、気が引けるのでな」
「いえ‥‥少しだけ頭の中を整理したいのですが‥‥よろしいですか?」
「構わない‥‥それが済み次第、次の作戦の概要を話すとしよう」
「はい‥‥失礼しました」
そう言うと、俺は司令室を出た。気持ちの整理‥‥出来るのだろうか?こんな状態で‥‥
そんなことを考えていると、規則的に鳴り響く地面を突く音が聞こえてきた。おそらく彩花の杖の音だろう。
俺がそう思って、廊下の奥を見ていると、暗闇の中から彩花の姿が見えた。不味いな‥‥彩花に格好の悪いところは見せたくないが、今は‥‥取り繕える余裕がない‥‥
俺は、静かに後ずさりしたが、後ろの棚に誤って、足をぶつけてしまった。
「誰かいるのですか?」
「ああ、こんばんは。彩花」
「漆山さんでしたか、こんばんは」
「あの‥‥いつになく元気がない声ですが、大丈夫ですか?」
「うん?ああ‥‥まぁ、色々とな‥‥」
「私でよければ、力になりますよ!」
「はは‥‥頼もしいな‥‥知らない方が幸せだということもあるって話だ、詳しくは聞かないでくれ」
「なるほど‥‥じゃあ、私と散歩しませんか?」
「散歩?それで、気持ちの整理がつくのか?」
「うーん、気晴らしにはなりますよ!ここの中庭は、綺麗なところだと兵士さんから聞きましたよ!ほら、行きましょう!」
そう言うと、彼女はゆっくりと前へ進んでいく。俺は、その後をゆっくりとついていった。
彩花の案内に従い、基地内を進んでいくと、綺麗な庭園が目の前に現れた。色とりどりの植物に、それを照らす月は、欠けることなく美しい円形をしていた。
「こんな所があったとはな‥‥」
「相当綺麗な場所なのですね‥‥漆山さんの声で分かります。それに色んな花の匂い‥‥手入れがよく行き届いていそうな庭園なのでしょうね」
「昔‥‥母とよく庭で遊んでもらいました‥‥懐かしいなぁ」
月明かりの下で、過去を懐かしむ彼女は、とても魅力的に見えた。しかし、彼女はつらくはないのだろうか?母親は、彼女の目の前で‥‥
暫しの間、沈黙が続くと、彼女はこう言った。
「漆山さんも‥‥いつかは、こんな風に許せる時が来ますよ‥‥」
「過去は、どれだけ憂いても帰ってきません。私も、母を求め続けました。ずっと泣いたり、犯人に対して憎んだり‥‥そんなことをしていました」
「だけど、何も‥‥帰ってはこなかった。あるのは、ただの自己満足で‥‥何も出来なかった自分自身を許せなくて、何かをし続けていたかったのです」
「だから‥‥私は、過去の私を許すことにしました。すると、辛かった過去ばかりに目が行かなくなって、今みたいに楽しかった記憶を思い出せるようになりました」
「漆山さんも‥‥きっといつかは、今の嫌な思い出を受け入れられると思うのです。だから、その時は‥‥私に聞かせてください」
「ああ‥‥分かった。約束しよう」
俺がそう言うと、彼女は静かに微笑んだ。彼女には、本当に救われてばかりだ‥‥いつか俺のことも、話さなければいけない日が来るんだよな‥‥その時は‥‥いや、いつかは、受け入れられるようになって欲しいな‥‥
そう思いながら、俺は、月を見上げる。
月を堪能していると、彩花が思い出したように言った。
「そうだ!今日は、満月なのですよね?」
「ああ、とても綺麗だ」
「異国では、月にまつわる告白があるらしいですよ!本で読んだことがあって‥‥」
「えっと‥‥漆山さんが、さっき言ったように、月が綺麗ですねって聞くそうですよ!すごくロマンチックで素敵ですよね‥‥」
「ああ、そうだな‥‥そろそろ戻ろう。夜風に当たりすぎると、風邪を引いてしまう」
「ええ、そうですね。戻りましょうか」
そう言うと、俺たちは、彼女の自室へとゆっくりと歩を進めた。
自室へと着くと、彼女が微笑みながら手を振っていた。俺も手を振り返したが、目が見えていないから、必要ないな‥‥と気が付き、少し恥ずかしがりながら、自身の部屋へと戻る。
「このまま時が止まればいいのに‥‥」
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