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暴食の章

第27話 一筋の希望

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 バチバチと燃え盛る機械を背に僕は絶望感に襲われる。何故バレたのか?計画は全て筒抜けだった?そんなはずはない…と思いたいが、この現状では撤退もあり得る。

「アルバーノ、ケラウノス…余は城に戻る、後は任せよう」

 城に…戻るだと?もしや計画だけはバレていないのか?首謀者の名前は何らしかの裏取りでバレただけ…可能性は大きい。まずサミエムの名前は言われていなかったという点。次に相手が計画通りに動いているという点だ。

「いや…まさか!」

 振り向くとサミエムが酷く驚いた顔と感情の色をしているのを見て、よぎった裏切り説をすぐにかき消した。というか、ベヒーモスは囮だって説明聞いてなかったのか?それとも計画がバレていると錯覚しているのか…とりあえず、作戦の第1段階は完了だ。高くそびえたつ扉を見て、確信する。

「おいおーい、酷いじゃないかぁ」

「…アルバーノさん」

「私は君たちを信じてこの国に入れただけじゃなく、自由が利くように手配したのに」

「よく言いますよ…あなたは信用してあの勲章を渡したんじゃない、僕たちの動向を把握するために渡したんだ」

「え…そうだったのか」

「…あぁ、その通りだよ」

「な、なんでですか!俺はてっきり…」

「最初から信用なんて無いさ、出身国不明の魂術師が我が国の三賢者を倒してその座を奪った?その戦いで私の弟子を殺された?……正直この2人をけしかけて同士討ちを煽り、漁夫の利を得たと考えた方が幾分か納得出来る」

「そ、そんなこと」

「御託は結構だ、出てきたモンスターは全て倒した…もうすぐ騎士隊も着く」

「チェックメイトだ、とでも言いたそうですね」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

「な、何故だ…何故まだ動き続けている!」

 防衛騎士たちを襲う倒したはずのモンスターたち…切れ者のアルバーノでも驚いたことだろう。これこそ不死の軍団、リバイバルモンスターズの恐ろしさである。機体の時間を一定の時間まで戻しつつ、魂だけの存在が戦い続ける。時空魔法と魂術魔法の最恐集団…

「我ながら相手にしたくないものだ!サミエム、行きますよ!」

「…おう」

「っっ!邪魔をするな!」

「わりぃな、これは仕事なんだ」

「メンタルポリューション!」

「う、おぇぇ…くそ……なるほど、お前たちを始末しなきゃあちらへは行けないということか」

「…」

「手加減なんて期待するなよ」

 恐ろしいほどの殺気に気おされ、足がすくむ。本当にこの強敵を倒せるのか?しかし、やらねばならない。ちゃんと魔物を倒してきたというのは本当らしい。普通は効かないような呪文も効いていたし…ライゼンの方は上手いことやっているんだろうな?!




 悲鳴と破壊音が響き続ける戦場で、僕は必死に考えていた。どうすればアルバーノを倒せるのか…僕たち2人でも互角とはお世辞にも言えない。魂術や幻術をおいそれと食らうような間抜けではないし、かといってサミエムの技で倒せるのかは正直怪しい。ならば…この1週間で作ったとっておきを使うしか!

「サミエム!少しの間、任せましたよ!」

「マジかよ!」

「このままじゃ不利になっていくだけです!」

「くっそー!やってやんよ!」

「おいそれと逃すはずないだろ!待て、灰崎!!」

ガキン!

「足止めしなきゃなんないんだよ…仲間のために」

「ガキが…!」

 持って数分と言った所だが、それで十分だ。ファントムメイクの応用技…ファントムマイン!即効性があり、強力でMP消費が少ない。だが、性質上こいつを踏み抜かなきゃならない。設置は数秒だが、見られてはバレてしまう。出来るだけ見えにくく分かりにくい所…いや、そんな所に設置すればサミエムが踏みかねない。どうすれば…

「あっ!あれを使えばバレない上に簡単に伝えられる!」
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