魂術師(ソウルテイカー)は産廃最強職!

トリカブト

文字の大きさ
32 / 107
暴食の章

第11話 金色霊魂祭開幕

しおりを挟む
 ざわざわという人の声と窓から遮りきれない寒気が気持ちのいい眠気を段々と消し去っていくような朝を迎え、少し怪訝そうに僕たちは身体を起こす。目をこすりながら喧騒の主を窓から確認すると、何やらよく分からない服を着た者たちが何やら呟いている。唐突なことにギョッとしたが、昨日の話を寝ぼけた頭で思い出し、勝手に納得した。

「お…おい、不味くないか?」

「え?」

「え?じゃないぞ!こいつら俺たちの邪魔しに来た奴らだろ?早く逃げるぞ!」

「ちょっと待って!落ち着いて聞いて欲しいことがある、実は……」

「なるほど、つまり俺たちは生贄ってことか」

「そういうことになるね…勝手に決めてごめん」

「まぁ仕方がないんじゃないかな、これで堂々と山に入れるんだし」

 サミエムは納得している雰囲気を出していたが少し不服そうな感情が見え隠れしていた。命を賭けさせるような選択を勝手に決められるのは嫌なのは当然のことだろう。自分がした軽率な行動を反省しながら身支度を整える。

「あれ?今起きたんだけど外の人何?変な格好の人ばっかりでウケる!」

 …そういえば静かだったな、一番安全な奴が…。



「金色山神に捧げる贄の者よ、集落の代表として礼を言う…ありがとう」

「いえ…お互いの利害が一致したというだけですから」

「そう言ってもらえるとこちらも助かる、ではこの儀式着に着替えて貰えるか?」

 乾いたしわだらけの手が何やら装飾のついた服を手渡す。広げてみると何も模様が無い白い質素な見た目に不自然な金の装飾品が付いている。うん……?これってメッキじゃないか?やけに軽いし…仮にも神とあがめるものに対する貢物にしては粗悪品っぽいな。

「……お二方とも準備は出来たようだな、では山にお入り頂こう」

 誰が言うでもなく山へと向かう一本道が集落の皆によって作り出される。嫌な花道だが行くしかない。決意を決め、僕たちは先へと向かった。



 まだ薄暗く寒い森の中を慣れない靴で歩くのは正直堪える。山に入って大体1時間と言った所だろうか?かなり深くまで来たと思う。後ろにいたアリフィカさんは疲れてサミエムの頭に乗ってるし…僕もあの大きさならああやって楽に登山出来ただろうか。

「灰崎…霧が出てきたぞ」

「そうだね、道が分からなくならないように気をつけよう」

 実際霧による遭難者が多いと情報もある。正直行く前は、しっかりと道しるべなり目印なり置いておけば対応出来るくらいだと高を括っていたが…なるほど、これは道に迷っても仕方が無い。一寸先は闇という表現があるが、まさにこのような状況だなと感じた。

「グルルルル…」

「アリフィカさんのお腹の音ですか?」

「失礼ね!私はそんな音出さないわよ!」

「じゃあ……」

「危ない!」

 サミエムが勢いよく押し飛ばしてきた。気を抜いていたからか、疲れていたか数メートル程飛ばされた。腰をさすりながら少し苛立った表情で起き上がろうとしたが、目を疑う光景が広がっていた。巨大な熊がいた。覆いかぶさるようにサミエムが襲われている。どうやらあれから守るために突き飛ばされたようだった。若い女性程ある手を振り上げ、鋭利な爪と鈍く光る牙を剥き出し、威嚇している。

「灰崎…早く…!」

「あっ、すみません!くらえ、メンタルポリューション!」

「グオォォ」

 低く腹に響く唸り声を上げながらよろめく奴を見て少し安心したのも束の間、大木のような身体を利用してタックルをしてきた。開けた平地ならなんとか避けられたもののここは狭い山道、ましてや霧がかかって足元もまともに見えない。僕たちはまともに渾身の体当たりをくらい、坂道を転げ落ちていった。




「…うっ」

 床に強打した身体を庇う様に辺りを見渡す。隣にはサミエムが、その奥にはアリフィカさんが寝っ転がっている。2人とも生きているようで、痛みの感情が読み取れる。当たり前だが死んだ生き物からは感情を読み取れない、こういう時にも便利なスキル?だな。さて、どこまで落ちてきたんだろうか?霧が濃くない事からかなり落ちてきたというのは明白だろう。

バキッ!ガラガラガラ…

 まさか…降りてきているのか?僕たちを探して……ともかく彼らを起こして何とかしないと。僕は急いで立ち上がり、なるべく早く起こそうとした。

「なんだよ…」

「あの熊が下りてきています、早く隠れますよ」

 僕たちは痛みが共鳴している身体を引きずりながら、近くの洞窟へと姿を隠した。初めは熟睡を邪魔された苛立ちの色を見せていたサミエムの感情はみるみる内に恐怖の感情へと変わっていく。あの巨体を誰より近くで体感してしまったからだろうか。しかし、これまで数々の強敵(片手で数えられる程度だが)と戦ってきたが彼にこのような感情を芽生えさせた強者は見た事がない。もしかしたら悪影響があるかもしれない。バキバキと木をなぎ倒す音が目の前まで来た時、絶望した。そこにいたのは全身が金色の神々しいターゲットなどではなく、少し錆を見せる不純物が入り混じった金の体毛に身を包んだ熊の体裁を取った禍々しい化け物であった。僕はそいつを見て、サミエムの恐怖を、セレンや村人の畏怖を理解してしまった。しかし、僕たちは戦わなければならない。そうしなければ…いや、そんな事よりもあの化け物を観察する必要がある。さぁ反撃を開始しよう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...