初めてのダンジョン攻略で美少女パーティを全滅させた俺に明日は無い

あぢか

文字の大きさ
13 / 20
2章 〜セカンド・アタック

吹けない角笛

しおりを挟む
 夕刻。俺は待ち合わせ場所の荷降ろし場にいた。多くの人が訪れるレジテイジでは、その分荷物の出入りも盛んだ。朝早くから多くの荷物を積んだ馬車やロバが、休む間もなく訪れては、荷物を降ろして去っていく。日の暮れる今頃になってようやく落ち着いてくるようで、大きな木造の門の前は閑散としていた。

「あれ、俺が一番乗りか…」

「よう、ボウズ」

「!」

 後ろから飛んできた声に振り返ると、イチロが歩いてきた。前に俺が持っていたくらいの大きさの背負子を背負っている。後ろには、一台の馬車が控えていた。

「御者ごとこいつを借りていく。ただし、雑木林の手前までだ」

「盗賊に襲われるからか」

「ああ。おやじさんも巻き込むわけにはいかねえ。奴らは、ダンジョンに行く時は襲ってこないだろうが、馬車だけになったら話は別だ」

「悪いね、命は惜しいんでさ」

 馬に餌をやっていた青年が声を上げた。彼が御者のようだ。

「ガーデナさんは?」

「もうじき来るだろ。…ほら」

「あーっ、またあたしが最後かーっ!」

 ガーデナは走ってくると、馬車を見た。

「…これで行くのね」

「ああ。…おい、ボウズ」

「何だ?」

 イチロは背負子の中から、紐付きの小さな布袋を取り出して、俺に差し出した。

「これは…」

 受け取ると、中には円錐形の何かが入っている。

「口を少しだけ開けて、中を見てみろ」

「?」

 言われたとおりにすると、中には獣の角をくり抜いて作った、一本の角笛が入っていた。そのらっぱの先端から出てきたものを見て、俺は思わず叫びかけた。

「! ら、ランジア…」

「昨日ぶりだね、ソータ」

 小声で言うランジア。イチロが低い声で言った。

「約束を守ったから、そいつはお前に返す。ついでに、その角笛と袋もやる。…そいつから、お前のことを聞かせてもらったぜ。戦利品とか商品じゃなく、仲間だって思ってると」

「…間違ってなかったかな」

「いや…俺も、同じことを考えてた」

「そっか。…良かった」

 角笛の中で微笑むランジア。俺も、笑った。

「はいそこ、イチャイチャしない! で、そろそろ出発?」

「ああ。後は馬車の上で話せばいい」

 俺たち3人が馬車の荷台に上ると、御者が手綱を振るった。

「よし、じゃあ行くよ!」

 馬車が動き出す。
 揺れる荷台の上で、俺はイチロに声をかけた。

「この角笛に、ランジアを隠せば良いんだよな?」

「知るか。だが、吹きもしねえ楽器をぶら下げてる奴を、他の奴らが見ててどう思うだろうな」

「…練習するさ」

「ね、ちゃんと返ってきたでしょ?」

 ガーデナの言葉に、俺は小さく頷いた。
 馬車が街を出て、広い道路を進む。夕日が、地平線に近づいていく。

「にしても、何でこんな遅い時間に出発するんだ? もうすぐ、日が暮れちまう」

「日没には間に合う。…日没と同時に、突入する」

「何で…」

「おじさんの信条さ。こっそり潜って、こっそり帰ってくる」

「見送りなんざ、戦利品を横取りしに来るだけだ。誰も働かねえ時に働く、それがおれのやり方よ」

 イチロは、じっと前方を見据えて呟いた。

「でも…待ち合わせのところ、結構人がいた気がするが…」

「今回は特別だ。お前の二の轍を踏まねえようにな」

「…」

 つまりは、盗賊対策か。それにしても、この3人でどうやって盗賊に対処するのだろうか。俺は重い物は持てるが、喧嘩なんてそうそうしない。ガーデナは身軽でも戦う感じじゃないし、イチロも腕っ節は強そうだが、これまでの言動からしてまず戦いなんてしないだろう。

「ま、今は言わねえぜ。ガーデナにも言ってねえ」

「それって、信用してないって」

「さあな」

 吐き捨てたきり、彼は何も言わなくなってしまった。



 馬車を降り、雑木林を抜け、荒野の裂け目に辿り着くと同時に、宣言通り日が暮れた。明らかに無防備な俺たちだったが、確かに盗賊には襲われなかった。まだ手ぶらなのが分かっているのだろう。
 大きな松明に火を灯しながら、イチロは言った。

「もう、ランジアを出していいぞ」

「! 分かった」

 袋を開けると、角笛の中からランジアが飛び出してきた。

「ふぅーっ! やっと出られたよ」

「ほら、持て。お前が先頭だ」

 松明を渡され、背中を叩かれた俺は、おずおずとダンジョンの入り口に向かった。前回の光景が、頭の中に蘇る。粘菌スライムに呑まれる、エルマ。それを助けようと、半狂乱のまま妹の後を追ったエルザ。そして、出口近くでゴブリンに捕まり…必死に掴んだ手を、俺は…

「…っ、キャトリーナ…」

「ほら、行け!」

 乱暴に背中を押され、遂にダンジョンの中へ。3人の命を奪い、俺たちの出鼻を容赦なく叩き折った、ドラノイドのダンジョンへの、復讐が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...