22 / 35
No.1
19 思った以上に時間がかかった。
しおりを挟む
「魔法管理組合とかいよいよファンタジー世界の本領が発揮されてきたなぁ」
「そのファンタジー世界ってのは俺達が今居るここの事を言ってるのか?」
「あぁ、俺とマリアが元居た場所には魔法とか不思議生物なんてのはまったく無くてね。そもそも会話ができる程度の知能を持つ生物が人以外に居ないし、飛天翔族とかニャットフリックス族みたいな見た目から違う人ってのも全くいなかったんだ。ハバキがたまに魔法とか使ってるけどそれは物語の中とかゲームの中にしか存在しない感じで、そんな場所の事をファンタジーな世界って一括りにして呼んでたって感じだ」
「魔法の無い世界かぁ…なんだか我々からすればそんな世界であんなとんでもない船を作ってる世界の方が不思議な感じがしますね」
「確かにそうだな。魔法が無い世界でどんな奴が居ればあんなごっつい船とか作れるんだってそっちの方が不思議な気がするぞ」
ラルクアとセルビスが俺とは全く違う感想を持ってるのがちょっと面白い。大黒丸を作るのに必要な巨大な天井クレーンなんかがそもそも想像できないみたいで、巨大な奴(人?)なんて事を最初に考えるのがかなり面白い。
「俺達とこっちの人の考える普通ってのは全く違う技術から成り立ってるからお互いに不思議に思えるんだろうな。ちなみに俺達の世界には最大でも俺の1.5倍を超える背の高さの奴はほとんど存在しないからな?大黒丸とかを作る為にそれを作る建物から専用のサイズに作られていてそこで大黒丸の…そうだな、載ってるコンテナ十数個分の区画を別の所で作ってそれを運んできて船の形にするんだ」
「作る方法がまったく想像できないが、こうして話を聞くとマサルとマリアの居た世界には恐ろしく巨大ないろんな物を運べる何かがある世界ってのが分かってきた気がする。だから大黒丸なんて大きさの船があるんだな?」
ハバキがなんとなくではあるが俺達の世界の物流の基本の部分を感じ取り始めてるのが分かる。
「それにしてもなぁ…」
「えぇ…」
セルビスとラルクアにはまだトラックとかトレーラーみたいな物流特化車両なんてのはまったく想像も出来ない感じだな。2人と比べたらハバキは領軍の隊長格に上り詰める程度の才覚があるのが分かる気がする。
「おっと!これはナカナカに魔法を使う連中が居そうな世界観じゃないか」
俺の目の前に鎧だけの門番が2体立っていてハルバードみたいなポールウェポンを片手で持ってる。
これが単なる置物でないのは近くを通る人に対して顔の無いヘルメット部分が視線で追ってる動きを見せているのからも分かる。
それと建物も若干とんがり成分多めな感じでモン・サン・ミッシェルの縮小版みたいな佇まい。
「テンションちょっと上がる♡」
「何を見てテンション上げてるのか知らんが入るぞ」
屋根部分を見上げながら目を光らせているマサルがハバキ達に引っ張られて魔法管理組合の建物の中に消えて行った。
「なんじゃ?ハバキ。何かまた美味い物でも食って戻ったのか?」
建物の中に入ると近くを歩いていた爺さんがハバキに近寄って何か目を閉じてブツブツつぶやき始めた。
「勝手に記憶を覗くな。まだそんなに新しい食べものを食って来てないから」
ハバキが何か魔法を使ったのかよく分からないが爺さんが小さく舌打ちしてハバキを睨んで歩いて奥の方に行ってしまった。
「そうだ、セルビス、あれをマサルに渡して付けさせておいてくれ。忘れてた」
「あぁ、俺も完全に忘れてた。マサル悪いな」
何を謝られたのかよく分からんがセルビスが何か文字の刻まれた石の様な物を皮ひもに固定したネックレスのようなものを俺に渡してきた。
「それを身に着けていれば記憶を勝手に読まれなくなるので、これから街に来る時は出来るだけ身に着けておいてください」
なんかラルクアがやばい事を言ってないか?
「なぁ、これってマリアの分はあるの?」
「昨日マリアさんには私から渡しておいたので今日も身に着けていたはずですよ。気づかなかったのですか?」
「だって昨日も今日もなんかじゃらじゃら付けてたからそんな大切なものを付けてるとか思っても無かったし…」
「マサルはもうちょっと気を付けて見てないと本当にマリアに愛想尽かされるんじゃねぇか?女の扱いを今度店に連れてって教えてやろうか?」
セルビスにそこまで言われるほどに俺はマリアを見てないのか?
「まぁほら、知らなければ気にする事も無いですからマサルさんがこのネックレスに気付かないのもしょうがないんじゃないでしょうか。我々がマリアさんがたまに使っている板状の情報表示機械が音を記録したり映像なんてものを記録できる事に気付けないで無防備で居たのと大して変わらないのですから」
そう言えばマリアが昨日タブレットPCで撮ってた映像を見て3人とも驚愕の顔をしていたな。今までは画像を見せる程度で動画を見せるような機会が無かったからね。ちなみにマリアが見せていたのはこの辺りで手に入る一般的な宝石類の映像だった。
しかし…知らなければ警戒も出来ない、か。ちょっと俺はこの世界を舐めてたかもしれないな。ハバキ達3人はたぶん俺とマリアの道徳的な認識をある程度理解してる感じでかなり配慮して振舞ってるけど、街ですれ違う奴らの中には勝手に記憶を覗いて来るような奴らも居るって事だ。
思い返せば相当危険な状態で歩き回っていた事に気付いて冷や汗が全身に流れる感覚を覚えた。
もうちょっと魔法に関してアンテナを広げておかないとどこで足をすくわれるか分からんな。
マサルは気合いを入れなおして魔法管理組合の室内に視線を向け始めた。
「爺さんいるか?」
ハバキがノックもせずにドアを開くと部屋の中には一人の老人が居た。壁際に置かれたこぢんまりとした1人用のテーブルとイスにおさまり何かの本を読んでいる。
「おぉ、ハバキじゃないか。お前がここを訪れるのも久しぶりじゃのぉ。元気にしておるのか?」
「えぇ。ご無沙汰してます。今時間は大丈夫ですか?」
「かまわんよ。それで後ろの者達はセルビスとラルクアと…?」
「最近街に移住してきたマサルです。例の船の持ち主と言えば判りますか?」
「ほう?そう言えばなんぞ巨大な船が街の港の近くに来たという話は聞いたが…その持ち主がそちらの吾人か?」
セルビスが老人に近付き手を取り、部屋の中央辺りに設置されたテーブルの辺りに誘導する。そしてラルクアが部屋から出て行った。
「まぁあれじゃ、またなんぞ無理難題を持ち込んで来たんじゃろう?落ち着いて話でも聞こうか」
老人が俺を見て手で座るように促してきた。
「マサル、こちらのお方は私の魔法の師匠で、1人目の妻の縁者だ」
「ラウリーじゃ」
「マサルです。よろしくお願いします」
「それでですね師匠、今回ここに来た理由ですが…」
ハバキが今朝方引っ張り出そうとして現状どうやっても取り出せない荷物を何とかして取り出したい旨を説明した。
「それで何か方法が無いものかと思いまして伺いに来たというわけです。どうでしょうか?」
「その荷はどの程度の魔素を持つ?その量次第では方法はあるが」
「そうですね…今朝方周囲の異物を除去して外に繋がる空間を確保したばかりなもので魔素の含有量はまだごく微量といった所です」
「ふむ…そうか。では…その棚の3段目の右奥にある玉石を持って来なさい」
ラウリーがラルクアが出て行ったドアの近くに設置されたいろんなものが収められている収納棚を指差す。
セルビスが近づき収納のガラス戸を開き、中から磨かれた握り拳大の石を取り出し、視線でラウリーに確認すると頷いた。
「これはキルリアン鉱石の結晶ですか?またずいぶんと貴重な物をお持ちですね」
「こいつをその運び出したいものの中に入れておけば数日で魔素は飽和状態まで満ちよう。その状態であれば瞬動の魔法にてある程度思う場所まで移動できるはずじゃが…問題が一点ある。ハバキの力では足りぬであろうが…」
ん?なんで爺さんは俺を見た?
「もう一人ぐらいこやつに近い魔力タンクがあればなんとかなりそうな気がするが…」
魔力タンク?
「実はマサルと共にこちらに漂着した者がいます。その方もマサルと同等の魔力量を持つので魔力の量だけならばなんとかなると思われますが…私には瞬動の魔法は使えませんよ?」
ハバキが言ってるのはマリアの事だと思うが、俺とマリアって魔力ってのがあるの?
「まぁそこらはワシが何とかする事が出来るが…対価を求める事になるがどうじゃ?」
おっと爺さんの目がなんか妙にエロい光を放ち始めた気がするぞ。
「おい、ジジイ。いい加減枯れてきてるくせに何言ってんだ。ヘレナさんに言いつけてやろうか?」
「そう言うなって。ワシもまだまだ頭の中だけは現役じゃ。少しぐらい色香漂うイイ女の記憶を使って楽しむぐらいいいじゃろうが。体の方はもうまったくうんともすんとも言わんのじゃから子供も出来んし…」
自分で言って勝手に憔悴してる爺さんが、なんだか哀れだ。
「なぁハバキ、ラウリーさんは何がしたいって言ってるんだ?いまいち二人だけで話が進んで内容が見えてこないのだが」
「…あぁ。あー…そうだな。この爺さんはな、自分の好みの女性と会話しながら勝手に色々情報を抜いてそれを使って脳内でやりたい放題して楽しむって感じの趣味を持っていてな」
それって人の記憶を勝手に読み取って脳内でその人をシミュレーション処理して楽しむとかって遊びか?
「ラウリー師匠。その魔法って俺にも使えないか?ついでにもう一個聞きたいのだが、俺が記憶している女の情報で動かすような事とか出来たりしない?」
「お前に師匠とか呼ばれる言われは無いが…ふむ。記憶の中の女性とイチャコラか…鮮度が問題になるが、まぁ全く出来ぬわけではないな。とりあえずその封印の石を外してその楽しみたい相手の事をはっきりしっかり思い出してみてくれ。その記憶の鮮度次第では教えてやらぬでもないぞ?」
ほうれい線がガッツリ入った顔で何言ってんだろうね、この爺さん。とはいえあっちに残してきた彼女達…サロマと美隼と脳内だけであれどイチャコラ楽しめるっていうのはなかなかに悪くない。
俺はここに来る前にセルビスに渡されて着けてきたネックレスを静かに外した。
「なぁマサル、欲望に囚われてヒヒジジイに記憶をもてあそばれるのを受け入れるのはお前の勝手だから構わんが、後で泣きついてきても知らんからな?」
ハバキが忠告じみた事を言ってくれているが、俺はここ最近マリアと同じベッドで寝ている関係でそろそろ限界がきてるんだ。ここらで真面目に発散しておかないと本当に危険なんだ。
「まぁエロに貴賤は無いともいうし、脳内で現役という言葉からも、ずいぶんと楽しめそうな気がするから、情報提供程度であれば構わん。俺の彼女達の記憶には生贄となり俺の新しい世界を切り開く礎になってもらおうじゃないか。で、ラウリー師匠、どうすればいいの?手取り足取り教えて欲しいなぁ♡」
「なぁハバキ、こやつなんかちょいっと気持ち悪いんじゃが、大丈夫か?妙にシナ作ってすり寄って来るがワシ男は相手できんぞ?」
少しの間俺を無視して爺さんとハバキがゲイ認定でもしてそうな話し合いをしていたが、俺には2人の彼女が居たんだけど…?
「まぁとりあえず魔法の習得にはそこそこ時間がかかるが、魔素を大量に蓄えておるおぬしであれば鍛錬も何度も出来るし習得はそれほどの苦行とはならぬかもしれぬな」
一応俺の持つ彼女達のあられもない姿の情報を提供したら、ゲイ認定をしていた爺さんとハバキが目を見開いて俺を見てきてあっという間に魔法を教えてもらう話が進み始めた。これって体位を色々楽しんでいる姿を思い浮かべたのが原因なのか?サロマと楽しんだヘリコプターっぽい体位を思い出していたら2人ともギョッとした顔をしてたが。
「まぁあれじゃ。マサルには師匠として色々教えることは構わん。対価としては十分じゃからその動かしたい物の準備が整ったらワシを現地まで運んでくれ」
とりあえずこれで車を外に出す算段は付いた。これで後は魔素とかいうしろものがコンテナに満ちるのを待つだけなので、大黒丸に迎える奴隷ちゃんと、領主から派遣してもらう予定の使用人達に使ってもらう部屋を何とかすれば、とりあえず積み上げられていた仕事は捌けたので、明日あたりには奴隷ちゃん達を迎えに行けそうだな。
それにしても、アレをする為のコレをしてこれをする為にあっちをして…やる事が多すぎないか?なんかスッキリサックリ物事が進むって事が最近あまりない気がする。
「そのファンタジー世界ってのは俺達が今居るここの事を言ってるのか?」
「あぁ、俺とマリアが元居た場所には魔法とか不思議生物なんてのはまったく無くてね。そもそも会話ができる程度の知能を持つ生物が人以外に居ないし、飛天翔族とかニャットフリックス族みたいな見た目から違う人ってのも全くいなかったんだ。ハバキがたまに魔法とか使ってるけどそれは物語の中とかゲームの中にしか存在しない感じで、そんな場所の事をファンタジーな世界って一括りにして呼んでたって感じだ」
「魔法の無い世界かぁ…なんだか我々からすればそんな世界であんなとんでもない船を作ってる世界の方が不思議な感じがしますね」
「確かにそうだな。魔法が無い世界でどんな奴が居ればあんなごっつい船とか作れるんだってそっちの方が不思議な気がするぞ」
ラルクアとセルビスが俺とは全く違う感想を持ってるのがちょっと面白い。大黒丸を作るのに必要な巨大な天井クレーンなんかがそもそも想像できないみたいで、巨大な奴(人?)なんて事を最初に考えるのがかなり面白い。
「俺達とこっちの人の考える普通ってのは全く違う技術から成り立ってるからお互いに不思議に思えるんだろうな。ちなみに俺達の世界には最大でも俺の1.5倍を超える背の高さの奴はほとんど存在しないからな?大黒丸とかを作る為にそれを作る建物から専用のサイズに作られていてそこで大黒丸の…そうだな、載ってるコンテナ十数個分の区画を別の所で作ってそれを運んできて船の形にするんだ」
「作る方法がまったく想像できないが、こうして話を聞くとマサルとマリアの居た世界には恐ろしく巨大ないろんな物を運べる何かがある世界ってのが分かってきた気がする。だから大黒丸なんて大きさの船があるんだな?」
ハバキがなんとなくではあるが俺達の世界の物流の基本の部分を感じ取り始めてるのが分かる。
「それにしてもなぁ…」
「えぇ…」
セルビスとラルクアにはまだトラックとかトレーラーみたいな物流特化車両なんてのはまったく想像も出来ない感じだな。2人と比べたらハバキは領軍の隊長格に上り詰める程度の才覚があるのが分かる気がする。
「おっと!これはナカナカに魔法を使う連中が居そうな世界観じゃないか」
俺の目の前に鎧だけの門番が2体立っていてハルバードみたいなポールウェポンを片手で持ってる。
これが単なる置物でないのは近くを通る人に対して顔の無いヘルメット部分が視線で追ってる動きを見せているのからも分かる。
それと建物も若干とんがり成分多めな感じでモン・サン・ミッシェルの縮小版みたいな佇まい。
「テンションちょっと上がる♡」
「何を見てテンション上げてるのか知らんが入るぞ」
屋根部分を見上げながら目を光らせているマサルがハバキ達に引っ張られて魔法管理組合の建物の中に消えて行った。
「なんじゃ?ハバキ。何かまた美味い物でも食って戻ったのか?」
建物の中に入ると近くを歩いていた爺さんがハバキに近寄って何か目を閉じてブツブツつぶやき始めた。
「勝手に記憶を覗くな。まだそんなに新しい食べものを食って来てないから」
ハバキが何か魔法を使ったのかよく分からないが爺さんが小さく舌打ちしてハバキを睨んで歩いて奥の方に行ってしまった。
「そうだ、セルビス、あれをマサルに渡して付けさせておいてくれ。忘れてた」
「あぁ、俺も完全に忘れてた。マサル悪いな」
何を謝られたのかよく分からんがセルビスが何か文字の刻まれた石の様な物を皮ひもに固定したネックレスのようなものを俺に渡してきた。
「それを身に着けていれば記憶を勝手に読まれなくなるので、これから街に来る時は出来るだけ身に着けておいてください」
なんかラルクアがやばい事を言ってないか?
「なぁ、これってマリアの分はあるの?」
「昨日マリアさんには私から渡しておいたので今日も身に着けていたはずですよ。気づかなかったのですか?」
「だって昨日も今日もなんかじゃらじゃら付けてたからそんな大切なものを付けてるとか思っても無かったし…」
「マサルはもうちょっと気を付けて見てないと本当にマリアに愛想尽かされるんじゃねぇか?女の扱いを今度店に連れてって教えてやろうか?」
セルビスにそこまで言われるほどに俺はマリアを見てないのか?
「まぁほら、知らなければ気にする事も無いですからマサルさんがこのネックレスに気付かないのもしょうがないんじゃないでしょうか。我々がマリアさんがたまに使っている板状の情報表示機械が音を記録したり映像なんてものを記録できる事に気付けないで無防備で居たのと大して変わらないのですから」
そう言えばマリアが昨日タブレットPCで撮ってた映像を見て3人とも驚愕の顔をしていたな。今までは画像を見せる程度で動画を見せるような機会が無かったからね。ちなみにマリアが見せていたのはこの辺りで手に入る一般的な宝石類の映像だった。
しかし…知らなければ警戒も出来ない、か。ちょっと俺はこの世界を舐めてたかもしれないな。ハバキ達3人はたぶん俺とマリアの道徳的な認識をある程度理解してる感じでかなり配慮して振舞ってるけど、街ですれ違う奴らの中には勝手に記憶を覗いて来るような奴らも居るって事だ。
思い返せば相当危険な状態で歩き回っていた事に気付いて冷や汗が全身に流れる感覚を覚えた。
もうちょっと魔法に関してアンテナを広げておかないとどこで足をすくわれるか分からんな。
マサルは気合いを入れなおして魔法管理組合の室内に視線を向け始めた。
「爺さんいるか?」
ハバキがノックもせずにドアを開くと部屋の中には一人の老人が居た。壁際に置かれたこぢんまりとした1人用のテーブルとイスにおさまり何かの本を読んでいる。
「おぉ、ハバキじゃないか。お前がここを訪れるのも久しぶりじゃのぉ。元気にしておるのか?」
「えぇ。ご無沙汰してます。今時間は大丈夫ですか?」
「かまわんよ。それで後ろの者達はセルビスとラルクアと…?」
「最近街に移住してきたマサルです。例の船の持ち主と言えば判りますか?」
「ほう?そう言えばなんぞ巨大な船が街の港の近くに来たという話は聞いたが…その持ち主がそちらの吾人か?」
セルビスが老人に近付き手を取り、部屋の中央辺りに設置されたテーブルの辺りに誘導する。そしてラルクアが部屋から出て行った。
「まぁあれじゃ、またなんぞ無理難題を持ち込んで来たんじゃろう?落ち着いて話でも聞こうか」
老人が俺を見て手で座るように促してきた。
「マサル、こちらのお方は私の魔法の師匠で、1人目の妻の縁者だ」
「ラウリーじゃ」
「マサルです。よろしくお願いします」
「それでですね師匠、今回ここに来た理由ですが…」
ハバキが今朝方引っ張り出そうとして現状どうやっても取り出せない荷物を何とかして取り出したい旨を説明した。
「それで何か方法が無いものかと思いまして伺いに来たというわけです。どうでしょうか?」
「その荷はどの程度の魔素を持つ?その量次第では方法はあるが」
「そうですね…今朝方周囲の異物を除去して外に繋がる空間を確保したばかりなもので魔素の含有量はまだごく微量といった所です」
「ふむ…そうか。では…その棚の3段目の右奥にある玉石を持って来なさい」
ラウリーがラルクアが出て行ったドアの近くに設置されたいろんなものが収められている収納棚を指差す。
セルビスが近づき収納のガラス戸を開き、中から磨かれた握り拳大の石を取り出し、視線でラウリーに確認すると頷いた。
「これはキルリアン鉱石の結晶ですか?またずいぶんと貴重な物をお持ちですね」
「こいつをその運び出したいものの中に入れておけば数日で魔素は飽和状態まで満ちよう。その状態であれば瞬動の魔法にてある程度思う場所まで移動できるはずじゃが…問題が一点ある。ハバキの力では足りぬであろうが…」
ん?なんで爺さんは俺を見た?
「もう一人ぐらいこやつに近い魔力タンクがあればなんとかなりそうな気がするが…」
魔力タンク?
「実はマサルと共にこちらに漂着した者がいます。その方もマサルと同等の魔力量を持つので魔力の量だけならばなんとかなると思われますが…私には瞬動の魔法は使えませんよ?」
ハバキが言ってるのはマリアの事だと思うが、俺とマリアって魔力ってのがあるの?
「まぁそこらはワシが何とかする事が出来るが…対価を求める事になるがどうじゃ?」
おっと爺さんの目がなんか妙にエロい光を放ち始めた気がするぞ。
「おい、ジジイ。いい加減枯れてきてるくせに何言ってんだ。ヘレナさんに言いつけてやろうか?」
「そう言うなって。ワシもまだまだ頭の中だけは現役じゃ。少しぐらい色香漂うイイ女の記憶を使って楽しむぐらいいいじゃろうが。体の方はもうまったくうんともすんとも言わんのじゃから子供も出来んし…」
自分で言って勝手に憔悴してる爺さんが、なんだか哀れだ。
「なぁハバキ、ラウリーさんは何がしたいって言ってるんだ?いまいち二人だけで話が進んで内容が見えてこないのだが」
「…あぁ。あー…そうだな。この爺さんはな、自分の好みの女性と会話しながら勝手に色々情報を抜いてそれを使って脳内でやりたい放題して楽しむって感じの趣味を持っていてな」
それって人の記憶を勝手に読み取って脳内でその人をシミュレーション処理して楽しむとかって遊びか?
「ラウリー師匠。その魔法って俺にも使えないか?ついでにもう一個聞きたいのだが、俺が記憶している女の情報で動かすような事とか出来たりしない?」
「お前に師匠とか呼ばれる言われは無いが…ふむ。記憶の中の女性とイチャコラか…鮮度が問題になるが、まぁ全く出来ぬわけではないな。とりあえずその封印の石を外してその楽しみたい相手の事をはっきりしっかり思い出してみてくれ。その記憶の鮮度次第では教えてやらぬでもないぞ?」
ほうれい線がガッツリ入った顔で何言ってんだろうね、この爺さん。とはいえあっちに残してきた彼女達…サロマと美隼と脳内だけであれどイチャコラ楽しめるっていうのはなかなかに悪くない。
俺はここに来る前にセルビスに渡されて着けてきたネックレスを静かに外した。
「なぁマサル、欲望に囚われてヒヒジジイに記憶をもてあそばれるのを受け入れるのはお前の勝手だから構わんが、後で泣きついてきても知らんからな?」
ハバキが忠告じみた事を言ってくれているが、俺はここ最近マリアと同じベッドで寝ている関係でそろそろ限界がきてるんだ。ここらで真面目に発散しておかないと本当に危険なんだ。
「まぁエロに貴賤は無いともいうし、脳内で現役という言葉からも、ずいぶんと楽しめそうな気がするから、情報提供程度であれば構わん。俺の彼女達の記憶には生贄となり俺の新しい世界を切り開く礎になってもらおうじゃないか。で、ラウリー師匠、どうすればいいの?手取り足取り教えて欲しいなぁ♡」
「なぁハバキ、こやつなんかちょいっと気持ち悪いんじゃが、大丈夫か?妙にシナ作ってすり寄って来るがワシ男は相手できんぞ?」
少しの間俺を無視して爺さんとハバキがゲイ認定でもしてそうな話し合いをしていたが、俺には2人の彼女が居たんだけど…?
「まぁとりあえず魔法の習得にはそこそこ時間がかかるが、魔素を大量に蓄えておるおぬしであれば鍛錬も何度も出来るし習得はそれほどの苦行とはならぬかもしれぬな」
一応俺の持つ彼女達のあられもない姿の情報を提供したら、ゲイ認定をしていた爺さんとハバキが目を見開いて俺を見てきてあっという間に魔法を教えてもらう話が進み始めた。これって体位を色々楽しんでいる姿を思い浮かべたのが原因なのか?サロマと楽しんだヘリコプターっぽい体位を思い出していたら2人ともギョッとした顔をしてたが。
「まぁあれじゃ。マサルには師匠として色々教えることは構わん。対価としては十分じゃからその動かしたい物の準備が整ったらワシを現地まで運んでくれ」
とりあえずこれで車を外に出す算段は付いた。これで後は魔素とかいうしろものがコンテナに満ちるのを待つだけなので、大黒丸に迎える奴隷ちゃんと、領主から派遣してもらう予定の使用人達に使ってもらう部屋を何とかすれば、とりあえず積み上げられていた仕事は捌けたので、明日あたりには奴隷ちゃん達を迎えに行けそうだな。
それにしても、アレをする為のコレをしてこれをする為にあっちをして…やる事が多すぎないか?なんかスッキリサックリ物事が進むって事が最近あまりない気がする。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる