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第6章 八百万の神々

03 移動

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桐生と紗那絵は県道を下り、国道に近い森が途切れた辺りで原付を乗り捨てて、国道を2人で歩いて移動していた。

季節は7月の終わりに近い真夏。

桐生はジーンズに無地のTシャツとスニーカー。紗那絵は少し黄ばんだブラウスとひざ丈のグレーのタイトスカートに茶色いパンプス。ちなみに紗那絵は、ブラウスとスカートの下には下着の類はまったく着用してなかった。

「紗那絵よぉ…お前なんで下着が無いの?」
「女ものの下着って高いの。だからそれ買うぐらいだったらコンビニでおにぎりでも買った方がマシだったのよ」
「それにしても…」
それまで体が衰弱して瘦せ衰えていた紗那絵がそれを着ていた時には特に気にならなかったが、紗那絵が全盛期の頃の体で同じ服を着ると、いろんな所がパッツンパッツンになり、大変な状態になっていた。
「とりあえず一回うちに寄って俺の服でも上に着るか着替えるかしないとちょっと面倒な事になりそうな気がするな」
「あらっ♡そんなに魅力的な体になっちゃってるのかしらぁ~♡」
桐生の目の前を歩きながら振り返り、少し前屈みになって胸元を引っ張って見せる紗那絵。
「そう言う事をしてると…あーめんどうな連中がこうやって近づいてくるって言いたかったんだが、少し遅かったな」
「んっ?」
紗那絵が桐生が見ている方向を向くと、緩い左カーブの先に道の駅か何かの照明が落とされた広い駐車場が見えてきて、車と単車がけっこうな台数停まっているのが見えた。そして、数人の男達がこちらを見て指を差して何か言ってる姿が見える。

「紗那絵は少しは戦えるのか?」
「一応私に憑いてる眷属神が蛇と鳥だから逃げる方が楽だけど、戦えない事は無いわ」
立ち止まり桐生が聞くと紗那絵も立ち止まり腕を組みながら答えた。
30人ぐらいの集団が自分達を獲物としてみなし、その中の数人が歩いて近づいてきているのを見ても、特に何も感じてなさそうな2人。

「それならちょうどいい。あいつらから足と服と色々もらうとしよう」
「あーカツアゲとかする気なんだぁ~いーけないんだぁ~♪」
「カツアゲって言うのは弱い奴をこっちから脅して金を巻き上げる行為だ。俺がこれからやるのは教育っていうの」
「へー桐生君ってあんな連中に何か教えてやれる様な事があるの?」
「あぁ、調子に乗ってると痛い目に遇うってのを死ぬ前に教えてやれるな」
「なるほどね~♪それは桐生君にも教えてあげられそうだね♪じゃぁ一応殺さない様に気を付ける感じ?」
「どうせ来年ぐらいから数十億単位で人が死ぬんだ。気にしなくてもいいだろ」
「まぁねぇ~来年から約束の地以外の場所の植物はどんどん消えて行くからね~」

桐生は話しながら体が段々と大きくなり、口が鰐のような形に延びて鋭い牙が現れた。着ていたTシャツは膨れ上がる体に負けて千切れ落ち全身に鱗状の肌が見えた。腕は肘から先が熊の手のように変わり、ジーンズの太ももの辺りから先も縫い目から千切れて真っ黒い毛に覆われた熊の様な足が露出した。

紗那絵は目の瞳孔が縦に細くなる様に動き、腕が黒い翼の様な形態に変わりブラウスの袖から脇にかけてが千切れてしまった。着ていたブラウスがかなり煽情的なポンチョ風の服になってしまい、横乳が隙間から見え放題になった。そして履いていたパンプスを足を振って脱いだら人の手の指よりも長いかぎ爪が現れ足が鳥のそれに近い形態に変化した。

歩いて近づいてきていた男達はたまに通り過ぎる車のヘッドライトの光で変形していく二人の姿を見て、立ち止まり何か言い争いを初めていた。
「なんかあいつら…変じゃね?」
「なんかでかくなってる様な気がする…」
「でもあの女…いい乳してるぞ。どうせ二人だけだ大した事なんて出来ねぇよ」
「そうか?…まぁそうだな」
男達が立ち止まり話をしている間に桐生と紗那絵の変体が終わった。

50mほどの距離から見ていた男達に桐生と紗那絵は一気に近づき眷属神の力を解放する。

桐生が腕を振るうと男の頭が簡単に千切れ飛んだ。
紗那絵が空から急降下して脚のかぎ爪で男の背中側から掴むと背骨の辺りと肋骨の辺りからボキボキと少し嫌な音が聞こえて掴まれた男が大量の血液を吐き出し地面に倒れた。

「桐生君さぁ、こんなの教育って言わないんじゃないかなぁ?」
紗那絵は桐生に聞きながら先の割れた長い舌を伸ばして男の背中の上から周囲を見渡している。
「気にするな。どうせこいつらは全員死んでネットワークに戻る。我らが八百万の神も喜んでくれる」
桐生は鰐の口で普通に言葉を発して返した。

集団の中の一人の男が車と単車の近くに屯っていた連中に大声で叫ぶ。
「こいつらヤベぇ!お前ら武器を持って来い!急げ!!」

駐車場の入り口近くで2人の男を倒した桐生はそのまま近くに居た男6人に襲い掛かり、大顎で頭を食い千切り咀嚼し、両腕を振り回して腕や足を引き千切り、死体をさっきまで動いていた男の数だけ増やした。

そして紗那絵はもう一度空に飛びあがり上空からサーモグラフィー映像の様に見える視界を使い、自分を見失っている男達に襲い掛かり、頭をかぎ爪で掴んで引き抜いた。
中には近づいてくる紗那絵に得物を使って攻撃をしてくる奴もいたが、紗那絵は口から透明な液体を飛ばして男の目を潰し、難なく首を引き抜き続けた。


10分ほどの蹂躙が終わった時、駐車場には動く者が2人だけになっていた。


「眷属神の力ってすごいね。こんなのチートだよ、チート」
紗那絵が、いつの間にかポンチョ風になっていたブラウスが無くなり露出している胸に付着していた血液を下を伸ばして舐め取り、腕と足の変体を解除した。
「紗那絵の眷属神の組み合わせはすごいな。夜の空では無敵じゃないか?」
「そうね。蛇の熱を見る能力と蛇の目と鳥の目のハイブリット器官があるからたぶん空に上がってしまえば落とされる事って無いと思うわ。私も人の事は言えない感じだけど…桐生君の体もちょっとすごいんじゃない?」
「熊と鰐の眷属神の力だからな。何でもありの肉弾戦では誰にも負けないだろうな」
桐生も顔と体を元に戻し、太ももから先がパーパーになってしまったジーンズを見て少し困ったような顔をしていた。
「とりあえず汚れてない服をもらて着替えて…ってなんで田舎の暴走族ってこんなに趣味が悪いのかしら」
死んでいる男からはぎ取った特攻服を開いて見ると漢字で『夜露死苦』とか『〇〇愚連隊』とか『この花一つに命を懸けて千の闇夜を駆け巡る~』なんて、普通なら恥ずかしくて着てられない様な文字が金色だったり赤色だたりの刺繍で書いてある。

「そう言ってやるな。ここらじゃそれが一番イケてるって感覚なんだ」
紗那絵が特攻服から桐生に目を向けるととても恥ずかしそうな苦い物でも飲み込んだ様な顔で特攻服を着ている死んだ男達を見下ろしていた。

「なるほどね…『自分が通って来た道だなぁ♡』なんて思ってるのかぁ~♪可愛いなぁ~♡あの時みたいにお姉さんのおっぱい少し吸う?」
ニヨニヨとした笑顔で桐生に近付き露出した乳房を持ち上げて『ホレホレ♡』みたいに見せつけてくる紗那絵とどうやってこいつを黙らせてやろうか、などと考えている桐生だが、少しばかり長居をし過ぎたようだった。

「…サイレンの音がしてるな」
「…そうみたいね。って、どこかでお年寄りが餅でものどに詰まらせたりしてたんならいいんだけど…」
「…近づいてきてるな」
「…そうね。たぶんここに来てるんでしょうね」
桐生と紗那絵は自分の近くに居る男から、とりあえず必要そうな服を剥ぎ取り、エンジンがかかったままだったシャコタンの紫ラメが目に優しくないレクサスの車に乗って走り出した。

「桐生君さぁ…君なんで運転できるの?って言うか免許持ってないって言ってなかった?」
国道を歩いて移動している間に色々話した中で、紗那絵が覚えていた、今少しだけ気になった事を聞いてみた。
「車の運転はG〇3から〇T-Sportまで色々遊びつくしたからどんな速い車でも運転できる。安心しろ」

遊びつくした…?

「それは…もしかして、ゲームの話?」
「そうとも言うな」
桐生はハンドルを握っても豹変するタイプでは無いみたいだが、道に沿って走る事は出来ないらしく、アウトインアウトのコース取りを国道を走りながらしていた。
ちなみに法定読度60kmの場所で桐生は160kmを超えた速度で車を走らせていたのだが、それまでの人の動体視力から眷属神の力を得て視力が異常に良くなっていた二人はその事にまったく気付いてなかった。

「…そこらで運転変わって。私まだ死にたくないわ」
「俺も紗那絵もそんなに簡単に死なねぇよ」
今日一番の、見る人によっては獰猛と言えそうな笑顔で桐生がチラッっと視線を紗那絵に向けるが、紗那絵が気にしているのはそこでは無い。

「死なないからいいって話じゃないの!ほら、そこのコンビニでいいから寄って!」
こんな街道レーサーみたいな走り方をしていたら道交法を守っていても近づいてくる連中がいるのでその事を理解させようと思っていたのだが、少しばかり遅かった。

国道沿いに見えてきた3件目のコンビニに桐生が車を止め、2人は急いで車から必要な物だけを持って走って逃げた。

その後、それぞれが脱がせて持ってきていた服に財布が入っていたので、車で10分ほどの距離にあったラブホテルに入り、30分ぐらい紗那絵の説教が行われた。

「だから早く変わりなさいって言ったのよ!なんであんたポリカーを追い越したの?!信じられない!」
「目の前を走る車が居たら抜くのは当然だろ?」
「これがゲーム脳って奴なのか?!まったく!!」

そして説教が終わった、というか、まったく理解する気が無い桐生に紗那絵が匙を投げて説教が終わり、2人が部屋の中に置いてある自動販売機に気付いた。
桐生に言われて紗那絵がそこで買った下着を着ると、やっとラブホテル本来の使用方法に部屋が使われ始めた♡

「オチンチンのサイズは熊並みって訳じゃないのね~まぁでもお尻を強く握られる痛みが心地よかったわ♡」
「紗那絵のソコもサイズは人並みだったからちょうどよかったんじゃないか」
桐生の性器を紗那絵の膣に入れるとギリギリ子宮口を突き上げる事が出来る程度だったので、紗那絵は奥突きを目いっぱい堪能させてもらった。子宮内をオチンチンで蹂躙されないちょっとした不満を感じたが、それは一切顔に出さずに桐生と一緒にシャワーを浴びてお互いの体を洗い合った。

「そう言えば桐生君の持ってる財布にはお金どれぐらい入ってた?」
バスローブを着て冷蔵庫からビールを取り出し桐生に投げつつ紗那絵が気いてきた。
「俺の方は7万とちょっと入ってた」
「そしたら…服を買ってきてもらおう」
ラブホテルには粗相をしてしまった客の為に、内線で言えば服や下着を買ってきてくれるサービスがある。

「でもお前の服ってそのスカート以外全部買ってきてもらうんだよな?」
「そうね。野獣みたいな男が私の魅力に我慢が出来なくてメチャクチャにして剥ぎ取ってしまった服の代わりを買ってきてもらう必要があるの♪」
紗那絵がそう言って内線を取り説明を始めた。




「俺がいつ『お前じゃないともうダメなんだ』とか言った?」
「ほんのちょっとリアリティーを追求しただけよ?」
「それに『お前は何も着ていない方が魅力的だ』とか言った事があったか?」
「まぁ…少しだけ盛っただけだからそこまで嫌そうな顔しなくても…」
「『お前に捨てられたらボク死んじゃう』とか俺は死んでも言わねえよ?」
桐生の追及は紗那絵がお詫びフェラを10分する間続いていた。

「どうせ顔も見られない様な一回しか来ないホテルでどう思われても構わないと思うんだけどなぁ…」
紗那絵の漏らした言葉は桐生には受け入れられなかった。
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