ノアクラフト 〜異世界の工業高校でダンジョンを作ろう！！〜

プロローグ

プロローグ

 「残念ながら埜亜くんにはもう……」

　中学校3年生の秋、僕は突然の余命宣告を受けた。

病院の先生によれば、僕は高校生になれないらしい。

　思い返すと、僕の人生は不運の連続だった。

小学校の時、入学式には鳥フンをかけられ、運動会のリレーではゴール手前で盛大にコケた。

修学旅行ではサービスエリアに置き去りにされ、卒業式には40度を超える熱がでた。

それだけでは終わらない。

中学校の入学式ではクラスを間違えて初日から笑い者にされた。

そしてついに、高校生になること無く僕は死ぬ。

「あーあ、死んだらどうなるんだろ？？」

病室のベッドから窓の外に光る星を見上げながら1人呟いた。


人は死んだら星になる。

  
人は死んだら天国か地獄に行く。


人は死んだら異世界に転生する。


様々な説があるがどれが本当かどうかは死んで見ないとわからない。

人はいつの日か終わりを迎える。

それが僕は人よりも少し早いだけ。

冷めた考え方だと、誰かは言うかも知れない。

でも、人は逃れることが出来ない"死"というものが目の前まで迫って来ていると妙に冷静になれるものなのだと今、実感している。

しかし、この世に未練が全く無い訳じゃない。

もっと美味しいものを食べたかった。

来年出る、新作ゲームをやりたかった。

親孝行もしたかった。

そして何より……

「高校生になって、青春したかったな……」

知らない間に目頭に溜まっていた涙が一粒流れ落ちた。

その時だった。

夜空に一筋の流れ星が流れた。

「あ、流れ星だ……」

でも、何か様子がおかしい。

すぐに消えるはずの流れ星が中々消えない。

それどころか光は段々と大きくなっている。

まさか……

そのまさかだった。

流れ星はこの病室に向かって一直線に飛んで来たのだ。

「おい、おい、嘘だろ？！」

瞬発的に布団に潜る。

バァッコォォォン……ドーン

隕石が病院の外壁を突き抜け病室の中に墜落したのだ。

自分で自分の運のなさにビックリする。

まさか、余命宣告を受けたその日に隕石の襲来とは……

これ以上の不運なんてきっとないだろう。

そんな事を思いながら、恐る恐る、布団から頭だけを出して辺りを確認すると

「いったぁぁぁい」

どこからか女の子の声がした。

「誰！？」

しばらくして砂煙が風に流されると病室に墜落したはずの隕石の姿は無く。

その代わりに、そこにあったのは月明りに照らされた綺麗な白銀の長い髪とフリルが付いた白いワンピースがよく似合う女の子だった。

きっと、年は僕と同じくらいだろう。顔にはまだ幼さが残っていた。

「あの……大丈夫？？」

僕がそう聞くと質問に答える様子は無く、彼女は僕の方をじっと見つめてきた。

そして突然。

「君！高校生になってみない？？」

勢いよく僕に近づいて、
ニコッと笑いながら君はそう言った。

余りに突然のことに状況を把握出来ない僕は、ただただ、ぽかーんと口を開けて固まっていると、彼女はもっと僕に近づく。

もう、僕の顔と彼女の顔は、ほんのちょっと首を伸ばせば口と口が触れ合ってしまうくらいの距離だった。

不覚にもドキッとしてしまった僕に彼女はもう1度
彼女は問いかける。

「ね！高校生になってみようよ！」

勢いに押されて、状況が飲み込めないまま僕は頷いてしまった。

これが人生最大の不運だとは知らずに。

僕が頷くと彼女は子供見たいにぴょん、ぴょん跳ねながら

「やった！契約成立ね！じゃあ、いっくよー」

そう言うと彼女は小さな手で僕の手を握るとゆっくり目を閉じ、聞いたことが無い言葉を小さな声で唱え始めた。

なんかヤバい気がする……

今までの不運で培った感が本能にそう訴えていた。

しかし、気づいた時にはもう遅かった。

僕の体をアニメで見るような青く光る魔法陣が包みこみ、その光景を最後に僕は意識を失った。