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第6章 創立記念パーティーにて

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 彼女はちらっと一瞥をくれると「橋本さん」とわたしの名を呼んだ。

 わ、来た。

「は、はい」

「あなたに責任を取ってもらおうと思って」
「えっ、責任……ですか?」

 向井さんは表情を変えずに、いつもの冷静な声で話を続けた。

「最近、榊原、がたがたなのよ。セリフをすっ飛ばしたり、相手役にあやうく『郁美』って言いそうになったり」

「えっ、そ、そんなことがあったんですか」

 向井さんは頷き、「まったく、榊原がここまでポンコツだと思ってなかった」とため息まじり。

「それで……わたしは、いったいどう責任を取れば」

 きっと……別れなさいって言われるんだろうけど。
 そう言われたら、なんて答えればいい?
 わたしは助けを求めるように宗介さんを見た。

 でも、彼は特に慌てた様子もなく、テーブルに腰をかけて腕を組んで、向井さんの次の言葉を待っている。
 唇にかすかに笑みさえ浮かべて。

 もう、なんでそんなに余裕の表情してるの、この非常時に。
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