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第2章 麗しき副社長
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「ただいま戻りました」
事務所のドアを開けると、向かいの窓から、強烈な西日が差しこんでいた。
3時間ほど前とは、まったく違う場所のように思える。
まるで穴に落ちて不思議の国を訪れたアリスの気分。
さっきの雑誌がテーブルの上に置きっぱなしになっている。
ページをめくり、芹澤さんの写真を眺める。
ついさっきまで、サニーヒルズビレッジでこの人と会っていたなんて。
どう考えても、現実とは思えない。
事務所の人は、酒井さんを除いて、みんな出払っていた。
電話で話す彼の声だけが、事務所中に響きわたっている。
「はい、来週の週末には必ず払います。なんとか目途が立ちそうなんですよ」
はい?
これって、もしかして借金の催促の電話?
酒井さんが電話を切ったあと、少し間をおいてから呼びかけた。
「酒井さん……」
「ああ、帰ってきてたのか」
酒井さんは椅子に座ったまま、大きく伸びをした。
わたしはストレートに尋ねた。
「そんなに苦しいんですか。事務所の経営」
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