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メイドとご対面

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羽山シュウジの朝は、自分でセットしたにも関わらず部屋中に鳴り響く高音にイラつくところから始まる。
いつもなら、この音を聞きたくないがために母に声をかけてもらうのだが、今は父の海外出張について行っている為、仕方なく目覚ましを使っているが何度聞いてもこの音には慣れなかった。
慣れるどころか、ストレスが毎朝たまっているような気がする。

「覚えてろよ目覚まし時計。母さんが帰ってきたらぶっ壊してやる。」

そう時計に言い放ち、制服に着替える。

時間は、まだ日が出たばかりの6時。目蓋は重く、周りが歪んで見える。
両親が海外に行ってからというもの、朝はこの時間帯に起きて学校へ行き、帰ってからは家事や宿題を終わらせると夜中の12時になり、やることがすべて終われば眠りにつくという繰り返しをしていた。

一般のの高校生とは異なる生活で疲労がたまっているのに加え、今日は一週間で疲労がピークに達する金曜日だ。今にも倒れそうな体を、階段の手すりで支え踏ん張る。

「今日、休もうかなぁ。」

疲れから、無意識に何気ない独り言を口にする。

「ダメですよ。シュウジ様。今日は金曜日なんですから、頑張りましょう!そうだ、私が抱っこして学校まで送りましょうか?」

この時、相馬は気づかなかった。起きたばかりということと、疲れが考えることを脳が考えることを拒否していたため、家に女の子がいることに違和感を覚えなかった。
だが、耳はちゃんと機能していたためその女の子が言ったことは聞き取っていた。

そして、シュウジの口からでた一言はこうだ。
「ビッチ発言が聞こえるけど...まぁ、幻聴だよな...」

立ち止っていた足を一歩踏み出し、僕は台所へ再び歩き出す。

「確か昨日の夜のおかずがあったはz...ん?なんで、みそ汁とご飯、それにおかずが用意されてるんだ?」

台所のテーブルには2人分の朝食が用意されているだけじゃなく、それらのクオリティーが高いと一目見れば分かるほど、おいしそうな品々だった。

もしかしたら、帰る家間違えたか?そう思い、外に出て表札を確認するが間違いなく僕の家だった。
家の造り、部屋を確認するが見慣れた光景だけが見える。

「どうしてなんだ...。」

「いやいや、私の存在否定されてるんですか!?ここにいるんですけどぉ!」

「まさか、地球外生命体によって僕以外の人間を...」

「無視しないでくださいよー!こうなったら...えいっ!」

「ひぇーーっ!」

腕には、知らない女の子がしがみついていて、こちらを見てにやりと笑いかける。
「やっと気が付きましたねシュウジ様。」

「えっ?いつの間に!...どちら様?」

さっきまでぼやけていた視界は驚き様にはっきりとして今の状況を把握する。
がっちりと僕の腕を掴んでいた手を離し、僕の正面に立ち、その子はあいさつをする。

「どうも初めまして!今日からこの家のメイドとして働かせていただきます。江藤 メイです。
よろしくお願いします。相馬さんっ。」

メイドだと自己紹介するその子は、服装はメイド服を着ていた。
状況を把握しきれないまま、僕は返事する。

「羽山 シュウジです。よろしくお願いします。」
と。
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