都市迷宮の魔法使い

塩塚 和人

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第1章 覚醒の炎

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鳴海悠斗は夕暮れの駅前で立ち止まった。
人々の喧騒の中、異様な空気が漂っていた。
「……なんだ、この気配は?」
突然、地面が震え、小さな亀裂が走った。
目の前に、淡い青色の光を帯びた扉が現れた。
まるで空間の裂け目のように、そこだけ異質だった。
悠斗は無意識に一歩、踏み出していた。

扉をくぐると、駅の地下はまるで別世界だった。
暗く湿った空気、壁には奇妙な紋様が刻まれている。
足元からうごめく影。小さなスライムが悠斗に気づき
「ぷにっ」と跳ねながら迫ってきた。
パニックになりかけたその時、何かが体を駆け抜けた。

「!? な、なんだ、この感覚……!」
手をかざすと、掌から赤い炎が生まれ、スライムを焼き尽くす。
火は手元で踊り、まるで自分の意思に従うように燃えた。
悠斗は息を呑み、信じられない光景を見つめた。
「……俺、魔法……使えるのか?」

その瞬間、背後から冷静な声が響いた。
「落ち着け、悠斗。まず周囲を確認する」
振り返ると、そこには白川透が立っていた。
長身で冷静な目。ベテラン探索者の雰囲気が漂う。
「ここはダンジョンの内部だ。油断するな」

悠斗は頷き、炎を消した。掌から暖かさだけが残る。
「わかった……やるしかないな」
周囲の空間に目を凝らすと、壁にひび割れた扉や通路が見えた。
スライムの残骸を踏みしめ、奥へと進む。

地下空間は迷路のようで、視界は不規則に遮られる。
突然、地面が光り、氷の柱が天井から降りてきた。
「うわっ!」悠斗は咄嗟に身をかわす。
「あれは……氷属性の魔物だな」白川が言う。
悠斗は手を握り、心を集中した。

「凍れ、大地を裂く氷の刃!」
掌から氷の刃が飛び出し、柱を砕く。
光と冷気が交錯し、空気が張り詰める。
「これが……魔法の力か」悠斗は確信した。
胸が高鳴り、恐怖よりも興奮が勝った。

通路の奥から低い唸り声が聞こえた。
巨大な影が姿を現す。黒い鱗と翼を持つ魔物。
「上位魔物……!」白川の声が緊張で震える。
悠斗は魔法を次々と繰り出す。炎、氷、そして雷。
魔物は光を避け、影を伸ばして応戦してきた。

戦闘の中で、悠斗は魔法の感覚を覚え始めた。
「手の中で力を操れる……すごい」
雷の閃光で敵の足を止め、炎で追撃する。
光と闇が交錯する戦場の中、悠斗の存在感が増す。
そして、最後に闇の鎖で魔物を縛り上げた。

魔物は轟音と共に消え、静寂が戻る。
悠斗は息を整え、周囲を見渡した。
白川が近づき、軽く頷いた。
「よくやった。これで正式に探索者として認める」
悠斗は少し照れながらも、拳を握った。
「俺、もっと強くなる……そして、この街を守る!」

出口に向かうと、地下空間はゆっくり消え始めた。
街の喧騒が戻り、現実の世界が目の前に広がる。
だが悠斗の胸には、新たな決意が宿っていた。
「魔法……俺の力……もっと知りたい」

仲間の紗月が笑顔で待っていた。
「悠斗、大丈夫?無理しすぎないでね」
「大丈夫……これから本番だ」悠斗は答える。
そして、二人は街の明かりを背に、次のダンジョンへと歩き出す。

地下鉄、廃ビル、摩天楼……無限に広がる迷宮。
現代に魔法が知られていない世界で、悠斗の力は光を放つ。
都市迷宮の魔法使いとして、彼の物語は今、始まった。
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