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第6話 そしてクローズドサークル
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「先ほど、麓の村がデューオ軍に占拠されたとの連絡が入った。」
レイは眉間にシワを寄せながら、そう言った。デューオとはこの世界の魔王的な立ち位置の者である。俺は状況理解のために質問を始める。
「そのデューオとかいう奴が、この付近の侵略を始めたってことですか?」
「そうだ。おそらくカドニア王国侵攻への拠点にしようとしているのであろう。」
麓の村からそう遠くない距離に、カドニア王国と呼ばれる商業が盛んな国があるらしく、デューオはそこを狙っているのではということらしい。大きなため息をつきながらこの館の主が話す。
「麓から来るはずだった警察もこれでは動けまい。通信魔具への応答もなくなった。」
「ここには特級魔具もあるし、実力者も揃っているんですよね?麓の村を奪還しに行った方がいいんじゃないですか?」
俺が純粋に思ったことを口にすると、全員が呆れたような顔をする。
「相手は魔物の軍勢で、こっちはたかだか数人の人間だぞ?」
シンが相変わらず冷たく言う。その後レイから説明があり、どんなに優秀な実力者であろうと相手の数が多ければ限界があるとのこと。異世界とはいえ、ここにいるのは全員人間だ。体力の限界もあるし、攻撃を受ければダメージを負う。ゲームや漫画の世界で描かれるような英雄は存在しない。尚更自分が召喚された意味がわからなくなる。
「面倒だが、魔具を守るため探知防止の結界を張る。奴らが油断しているタイミングで魔具を全て別邸に転移させる。そして、それらが完了するまでは外出禁止とさせてもらう。」
エーベルハルトは淡々と話す。戦っても勝てないから、状況が落ち着くまで隠れてやり過ごすという意味であろう。その発言に全員が動揺していたが、特に反感していたのがヨハンであった。
「ちょ、ちょっとまって下さいよ。落ち着くまでって、一体何日間かくれんぼするつもりですか?」
「少なくとも今日から3日は動けないであろうな。先ほど占拠されたばかりだからな。拠点人員の入れ替わりが行われるであろう3日後に、隙をみて一気に動く。」
「マジですか?今のうちにさっさと逃げちゃいましょうよ。待っている意味がわからないですよ。」
俺もヨハンの意見に同意であった。エーベルハルトが反論する前に、カールが話す。
「別地への転送魔具の起動に時間が必要なんですよね?どこまで練度の高い物であっても、この館にある魔具の総移動には約3日の魔力補充時間が必要だ。それに、転送系の魔具は魔力漏れも多い。漏れた魔力を感知されれば、この場所も簡単にバレるでしょうね。」
エーベルハルトは何も言わずに目を瞑っている。この館の貴重な魔具を一つとしてデューオに渡さないためには、転送魔具をフル充電して一気に転送するしか無いようだ。小出しにして転送をすれば、その動きが感知されてこの場所がバレるとのこと。ちなみに、結界の外に出れば”人間感知”の魔具に捕捉され、この場所がバレる可能性が高まるようである。つまり、俺たちは転送魔具のフル充電が完了するまで外に出ることも、外と連絡を取ることもできない。所謂、クローズドサークルとなってしまった。麓の村が占拠されたと言うことは、エド殺しの犯人もそれに巻き込まれたのでは無いだろか。いや、今はデューオ軍から逃れることに集中せねばならない。
「とりあえず、さっさと魔力・人間探知防止の結界を張って今日は休みましょうか?もう遅い時間ですからね。」
カールはそう言い、エーベルハルトと共に魔具倉庫へと向かう。それぞれが部屋に戻ろうとしたその時、ヨハンがうつむきながら小声で何かを言った。
「カ・・・にいる・・・に伝書を飛ばせば・・・日で届いて・・・で助けが・・・」
ヨハンはどうやら外の仲間に助けを求めようとしているようであった。それは先ほど話題に挙がった魔力探知に引っかかってしまうのではと思いヨハンに声をかけようとしたその時、シンがヨハンの胸ぐらを掴み言う。
「面倒ごとは起こすなよ?」
「う、うるさい!俺には仕事があるんだ!こんなところで無駄な時間を過ごしてはいられないんだよ!」
ヨハンは必死に抵抗しなんとか振り払い、自室に駆け込む。シンは小さく舌打ちをし、怯えるベティーナを連れて広間Aへと移動する。全員が広間Bを出たのを見届けた後に、俺も部屋に戻った。
部屋に戻ると、マキナはテーブルからソファーの方に移動していた。
「まだいたのか。勝手に広間には出てこないでくれよ?ただでさえ混乱した状況なのに、また不法侵入者が現れたとなれば、殺されかねないからね。」
特にシンは問答無用で斬りかかってくるだろう。マキナは特に返事もせずにウトウトしている。
翌日、朝食のために俺たちは広間Aに集まった。ベティーナとシンが朝食を作っている。エーベルハルトはソファーで本を呼んでいる。麓の村に強大な敵が迫ってきているとは思えないほど平和な空間である。カールは大きなあくびをし、何かに気づく。
「あれ、ヨハン君はまだ寝ているのかな?あまり遅いと朝食が冷めてしまうね。タクト君、彼を呼んできてくれるかい?」
俺は、広間Bにあるヨハンの部屋の前まで行き、声をかける。
「ヨハンさーん、おはようございます。タクトです、起こしにきました。・・・おーい。集団行動って大事ですよー!」
彼からの返事は無い。ダメ元でドアノブに手をかけてみると、鍵はかかっていないようであった。
「入りますよ!ただ起こすだけですからね!失礼します。」
ドアを開けると、そこには血まみれでベッドに横たわるヨハンの”身体”と、床に転がるヨハンの”頭”があった。
殺人は続いていた。
レイは眉間にシワを寄せながら、そう言った。デューオとはこの世界の魔王的な立ち位置の者である。俺は状況理解のために質問を始める。
「そのデューオとかいう奴が、この付近の侵略を始めたってことですか?」
「そうだ。おそらくカドニア王国侵攻への拠点にしようとしているのであろう。」
麓の村からそう遠くない距離に、カドニア王国と呼ばれる商業が盛んな国があるらしく、デューオはそこを狙っているのではということらしい。大きなため息をつきながらこの館の主が話す。
「麓から来るはずだった警察もこれでは動けまい。通信魔具への応答もなくなった。」
「ここには特級魔具もあるし、実力者も揃っているんですよね?麓の村を奪還しに行った方がいいんじゃないですか?」
俺が純粋に思ったことを口にすると、全員が呆れたような顔をする。
「相手は魔物の軍勢で、こっちはたかだか数人の人間だぞ?」
シンが相変わらず冷たく言う。その後レイから説明があり、どんなに優秀な実力者であろうと相手の数が多ければ限界があるとのこと。異世界とはいえ、ここにいるのは全員人間だ。体力の限界もあるし、攻撃を受ければダメージを負う。ゲームや漫画の世界で描かれるような英雄は存在しない。尚更自分が召喚された意味がわからなくなる。
「面倒だが、魔具を守るため探知防止の結界を張る。奴らが油断しているタイミングで魔具を全て別邸に転移させる。そして、それらが完了するまでは外出禁止とさせてもらう。」
エーベルハルトは淡々と話す。戦っても勝てないから、状況が落ち着くまで隠れてやり過ごすという意味であろう。その発言に全員が動揺していたが、特に反感していたのがヨハンであった。
「ちょ、ちょっとまって下さいよ。落ち着くまでって、一体何日間かくれんぼするつもりですか?」
「少なくとも今日から3日は動けないであろうな。先ほど占拠されたばかりだからな。拠点人員の入れ替わりが行われるであろう3日後に、隙をみて一気に動く。」
「マジですか?今のうちにさっさと逃げちゃいましょうよ。待っている意味がわからないですよ。」
俺もヨハンの意見に同意であった。エーベルハルトが反論する前に、カールが話す。
「別地への転送魔具の起動に時間が必要なんですよね?どこまで練度の高い物であっても、この館にある魔具の総移動には約3日の魔力補充時間が必要だ。それに、転送系の魔具は魔力漏れも多い。漏れた魔力を感知されれば、この場所も簡単にバレるでしょうね。」
エーベルハルトは何も言わずに目を瞑っている。この館の貴重な魔具を一つとしてデューオに渡さないためには、転送魔具をフル充電して一気に転送するしか無いようだ。小出しにして転送をすれば、その動きが感知されてこの場所がバレるとのこと。ちなみに、結界の外に出れば”人間感知”の魔具に捕捉され、この場所がバレる可能性が高まるようである。つまり、俺たちは転送魔具のフル充電が完了するまで外に出ることも、外と連絡を取ることもできない。所謂、クローズドサークルとなってしまった。麓の村が占拠されたと言うことは、エド殺しの犯人もそれに巻き込まれたのでは無いだろか。いや、今はデューオ軍から逃れることに集中せねばならない。
「とりあえず、さっさと魔力・人間探知防止の結界を張って今日は休みましょうか?もう遅い時間ですからね。」
カールはそう言い、エーベルハルトと共に魔具倉庫へと向かう。それぞれが部屋に戻ろうとしたその時、ヨハンがうつむきながら小声で何かを言った。
「カ・・・にいる・・・に伝書を飛ばせば・・・日で届いて・・・で助けが・・・」
ヨハンはどうやら外の仲間に助けを求めようとしているようであった。それは先ほど話題に挙がった魔力探知に引っかかってしまうのではと思いヨハンに声をかけようとしたその時、シンがヨハンの胸ぐらを掴み言う。
「面倒ごとは起こすなよ?」
「う、うるさい!俺には仕事があるんだ!こんなところで無駄な時間を過ごしてはいられないんだよ!」
ヨハンは必死に抵抗しなんとか振り払い、自室に駆け込む。シンは小さく舌打ちをし、怯えるベティーナを連れて広間Aへと移動する。全員が広間Bを出たのを見届けた後に、俺も部屋に戻った。
部屋に戻ると、マキナはテーブルからソファーの方に移動していた。
「まだいたのか。勝手に広間には出てこないでくれよ?ただでさえ混乱した状況なのに、また不法侵入者が現れたとなれば、殺されかねないからね。」
特にシンは問答無用で斬りかかってくるだろう。マキナは特に返事もせずにウトウトしている。
翌日、朝食のために俺たちは広間Aに集まった。ベティーナとシンが朝食を作っている。エーベルハルトはソファーで本を呼んでいる。麓の村に強大な敵が迫ってきているとは思えないほど平和な空間である。カールは大きなあくびをし、何かに気づく。
「あれ、ヨハン君はまだ寝ているのかな?あまり遅いと朝食が冷めてしまうね。タクト君、彼を呼んできてくれるかい?」
俺は、広間Bにあるヨハンの部屋の前まで行き、声をかける。
「ヨハンさーん、おはようございます。タクトです、起こしにきました。・・・おーい。集団行動って大事ですよー!」
彼からの返事は無い。ダメ元でドアノブに手をかけてみると、鍵はかかっていないようであった。
「入りますよ!ただ起こすだけですからね!失礼します。」
ドアを開けると、そこには血まみれでベッドに横たわるヨハンの”身体”と、床に転がるヨハンの”頭”があった。
殺人は続いていた。
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