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その時だった。
ピロロン
キョウカのコンピューターから音がした。

「…ん?音楽設定してる?」
そう聞いても、彼女は応えなかった。

「……、メール?」
キョウカがメールのアドレスを持っていたというのだろうか。誰がそんなものくれるんだよ、と言いたくもなるが、今実際何か届いてるしなぁ。人って分からないものだ。メル友がいたのかな。

「それ、俺は見ないほうがいいか?」
キョウカはフルフルと頭を振りながら操作する。

カチッとクリック音がして、そのメールが開いた。
送信者や宛先や件名といった記入はない。
内容は一文で終わっていた。

『キョウカ君、他の人に伝えてくれ。第二のミスターエックスが出現したと』

「……弘…」
消息不明の旧友からいきなり連絡を受け取った気分だ。

『あなたがみんなに告知して』
「分かった分かった」

彼女からパソコンを受け取る。少しぬくもっていた。ずっと稼働させていたからなのか、それともキョウカが握っていたからなのか。

「…おーい、みんな」
一応呼びかけてみた。
すると、すぐに全員が会話をやめてこっちを向く。
おぉう、優秀過ぎだろ。てっきり誰も俺に気づかないかと思ってたのに。

「…なんだよ、早く話せよ」
「あ、ああ、すまん。あのな、こういうメッセージが届いたんだけど」

みんな顔を寄せて画面を見る。

「………ボスかよ」
「そうだろうな。……それで、これはアレか?協力を求めてるのか?」
「多分。あいつらの有力な部下が四人も消えたんだから」

当たりくじを引き抜いたってことだな。

「でも、『助けてくれ』と言えないくらいのプライドは持っている、ってことか?」
「うーん、でも、出没したくらいではボスもなんとも思ってないだろうな」

バッとコンピューターがキョウカの手に戻った。そして、高速でカチャカチャといじられた後、また俺に渡される。

「?これって………」

集落がボロボロに荒らされた写真だった。

「まさか、これ、ミスターエックスが………?」
「なるほど……」

とうとう弘の足元に火が迫ってきたわけだ。
もし都心部にやって来たら、大打撃を受けるだろう。その前に倒しておきたいのだが、そこへ派遣する人間が足りない、と。

「……ん、火と言えば」
「どした?」
「火事、起こってないのか?煙の匂いはしないけど」

またパソコンが没収される。
『ここではほとんどの家庭で自動に消える電気コンロが使用されてる』
「そうか。電気式で、しかも温度が一定以上になれば消えるやつね」
『97.8%の普及率』
なるほど、どうりで火災にならないわけだ。もっと早くに言ってくれればいいのに。

「じゃ、私も無罪放免ってわけね」自分の状況を聞いたらしいセナが胸を張る。

それに対して、コウキが「過疎化が進んでる土地とかでは平均して40%を下回るって問題になってなかった?」と言うと、カズオも頷いた。
残念、やっぱり殺人容疑は色濃く残っているよ。
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