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「でもさ、これが使える奴は、自分の身は安全で敵を攻撃できるってことでしょ?ズルくない?」
「ズルいざますよねぇ奧さん」
「あんたには聞いてない」
コソはあっさり突き返された。

「じゃあ誰に聞いたんだよ!!」
「えーとねぇ、ナズハ」
「えっ?……ズルい、かもね」
「でしょー?」
これはアレだな、とにかくコソ以外の人物だったら良かったっていう。

「不穏な感じね。こいつ、自爆したんじゃないんでしょ?」
「そう言えば敵はもう一人いたな。逃げたんだ」
「絶対に捕まえなきゃ、被害が凄いことになる」

こんな攻撃を、人が集まっている所でされたら。

「でも!敵の居場所が!」
「まだそんなことをグチグチ言ってんのー?!ちょーっと信じられないねぇ。とにかく白神山地に向かうの!!」
「……でも、僕、知らない土地に行くのって、不安だよ」
「大丈夫大丈夫。何とかなるって」

さっきから同じような会話を繰り返している気がする。
俺がそのことを指摘しようかどうか迷っていると、キョウカの肩がヒクついたのが分かった。

「ん?どうした?」
『この破壊された集落』
「あー、これな」

ハチャメチャに壊された家の壁。食器なんかの残骸も散乱している。その画像だ。

『これ、偽物」
「?!!」
『って情報が入った』
「どこからだよ」
『弘』
あいつはもう到着したってことか?早過ぎて呆れる。俺達はまだほとんど進んでないのに。でも、敵は見つけたけどね。

「…いや、それか、もしかして画像解析……?」
現地調査じゃなくても、写真を調べ上げたら分かることなのかもしれない。

『違う。この画像は拡大したら途端に画質が悪くなるから、解析は難しい』
「そんな仕組みになってたのか?!怪しさ満点じゃねぇか!」
『それは思ってた』

ということは、キョウカも勘づいていたんだな。なぜだか知らないけど、ここの世界の人間は自分が仕入れた情報を他言せずに秘密にしときたがる節がある。表では嘘ついてみたり。

「それで、弘はどうやって調べたんだ?」
『全ての村の様子を確認した』
「全て?!」
『防犯カメラがない所まで』

何でもできるんだな、あの人。

「じゃあ、ミスターエックスの姿も確認できたんじゃないか?」
『その知らせは入ってない』
「そっか……」

一筋縄でいくってことは、まぁ、ないわな。
それは分かってるんだけど、んー。
弘が見つけられないような奴らを俺達が果たしてどのくらい追い詰められるか、か。
………なんか、できそうな気がする。だって、弘は結局俺も捕まえることはできなかったんだから。
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