ドラゴン使いを終えて

Nick Robertson

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この世界の建造物には形に特徴が無くて、全て四角、直方体だし、無駄にテラテラ光る、哀れな綺麗さを放つ壁で覆われている。

近づくと、その壁はいよいよ透明になって、外との区別がつきにくくなるが、これを美としているんだろう、ここは。

私はドウランがずっと前の方で勢いを止めないまま勇ましく落下するのを追っていた。
ドウランのすぐ前方には黄色い膜がちゃんと展開していて、すべての攻撃を弾いている。

バリバリっと大きな音をたてて膜が建物を破壊し、ドウランが侵入するのを手伝う。……この音、どうにかならないだろうか。なんだか嫌悪感がする。

そしてドウランは迷わず、もっと前進を続け、床を何枚も破った。
とうとうドウランがブレーキをかけろと指示したのだろう、ブラックが素早く止まって、それでもドウランの衝撃を和らげるのを忘れることはない。万能なのだ。意思のある魔力は。

「わ!ほんっとに来やがったよ、もう…なんで攻撃が通じないの?」
「あんたはもっと操作に集中しなさい!今は至近距離に敵がいるんだから、空間斬り使えるでしょ?」
「そっか。それだ!」

ドンピシャで敵陣に突っ込んだらしい。
相手がオモイオモイの武器を手にして私達を囲む。

空間斬りっていうのは…うん、大きな剣だ。空間も斬ってしまうのかも。……て、どーゆーことやねん!

でも当然タツの方が速い。
誰かが攻撃を開始した時にはもう既に全ての機械は故障済みだった。

「だ!………あれ?斬れてない?何でだ?」
「くそ!遅かったか!」
悔しがってる相手を見るのは、いい気分だ。

「…なるほど。空間斬りというのは、離れた相手を察知して直接斬ってしまうという道具なのかな?その言い回しからすると」

ドウランが感心するが、どの言い回しからその考えが出てきたのか分からない。なのに正しいようなことを言っちゃうのがドウランだ。そして実際正解なのだろう。いつものことだ、いつものことだから…。

「くそ!どうしてこんな機械人形まであいつらは作れるんだよ!!」
「き…機械人形?」
私はめまいがした。私達が機械?

「違うよ!あたしをあんなのと一緒にしないで!ちゃんと波動もあるんだし…」タツが言い返す。

「…は!今回の人形は、自分が機械だと知らないように設計されたのか?……はあ、お手上げだよ。コンピュータも壊されたんじゃあなあ。もう逃げ場も無いのに…、計画が成功する直前で…」
そう言いながら、一人、倒れ込んだ。

私には分かる。相当疲れている、この人は。

「ねえ、大丈夫?」心配そうにドウランが近寄るが、口元が緩んでるのは、自分で気づかないんだろうか。

「…この野郎!汚い手で俺に触れるな!!」倒れている男は精一杯に抵抗した。

「いやいや!僕の手、綺麗だって!数日前にも洗ったのに!!」ドウランが大声で異議を唱える。

ドウランがまた足を上げると、そばにいた女の人が立ちはだかった。
「…そうよ!近づかないで!」
みんな聞き耳を持たずに、その男をかばうようにしている。

その中でも一人遅れていて…空間斬りができる機械を持つ男も、うんしょ、うんしょと言いながら、見るからに重たそうな武器と格闘しているが、あの剣、先っぽが機械の管に絡められて丸くなってるから、故障したら使い物にならないっていうのは………気づいてないんだろうなー。
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