ドラゴン使いを終えて

Nick Robertson

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悪いことは重なり、善いことはすぐに無くなる。これはきっと意識の問題だ。
善い事態より悪い事態の方に気を取られやすいというだけの話。

…ボロボロのみんなを見た私の気持ちって、どんなだと思う?さあ?
心がブラックアウトして、平常心を装おうとする。と言うより、平常だと思い込もうとする。

「グランへの突入ルートに、強敵が居たんだっ!」
ようやく話せるようになったケント先生が体ごと崩れて握りこぶしを地面に叩きつけた。

隣国に入り、グランがある場所にたどり着くための、最も簡単なルートは、山と山の間を抜けることであるのだが…。

「…もう隣国に突入しに行ったんですか」
「く、訓練長が空間移動をしてくれたからな。だが…その先は、結界が張ってあって空間移動は封じられてしまったのだ!」

帰って来たのは三十人程度だった。
昨日訓練長が「訓練場の人を総動員させる」と言っていたのを考えれば、少な過ぎる……。

ケント先生は俯いて喋っている。左の肩口からは血が黒く固まっていた。
「…初めて見る山に怯えながら進んで行くと……。急に敵襲を食らって……、訓練長が最後の力で…俺達を…」
「え?!訓練長は?」

ケント先生は首を横に振る。

私はどうしたもんかな、と考えた。
このままでは自分も死ぬらしい。
嫌なことではないが…、できることなら、反抗してみたい。

都とは真逆の方向だが、列車は通っていたはずだ。都から直通の。

「あの、先生、列車は…」
「………昨日村が消えただろう?」
そうか、都から村々に繋がっている列車は、便利だが、どこか遠くがヤられてしまえば、使い物にならなくなってしまうのだ。
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