ドラゴン使いを終えて

Nick Robertson

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「サキのドラゴン使い人生の歯車を狂わした私が言える資格は無いんだけど、未来のドラゴンに想いを馳せるより、今ここに居るドラゴンと一緒に過ごした方が楽しそうじゃない?」

「そう……だね」風を気持ちよく?茲に浴びている。
サラサラと髪がなびく。空気を孕んでふっくらと膨れ上がる。

「だからさ」ドウランが続けた。「少しの間一緒にいようよ」

サキはレッドにベタリと体をくっつけたまま頷く。
こうして、サキは私達と行動を共にすることになった。





「サキ!イエローの魔力の一部を波動に混ぜ込んじゃうんだ!!」
「うん!」
バッと稲妻が走る。

それを軽くキヌが受け流した。

「やっぱ素質あるみたいだねえ。こんな訓練やったことないんでしょ?」
「空気中の魔力を掻き集めて、なら……」
「ああ、魔術の使い方は習ったんだね。でも、ドラゴンを使うなんて、魔力の量が違いすぎるよね。…知ってた?リリーは最初の頃はよく暴走しっぱなしで…」

私はそっぽを向く。
サキが本当に上手いのは確かだ。やり方を教わっただけでここまで成長できるものなのか。

「そう言えば、リリーは自分でドラゴンを作り出したこともあったね。あれ、もうすぐサキにもできそうだよ」
「波動を練り込んだら他の人にも見えるドラゴンができるよね」

サキも嬉々として特訓に取り組んでいる。
そもそもこれはサキがやりたいと言い出したので始めたことだ。
いわく、「ドラゴン使いならではのことをもっとしたい」らしい。欲望をそのまま直球に打ち込んだ感じだ。良いと思う。

「ほい、じゃ、今度はブルーとレッドの魔力を混ぜてみて。そこに波動を流し込んだら火と水が一気に出るから。でももっと上手くなると…」
「こう?」
ザバーッと熱湯が噴出する。

ドウランは半ば呆れ顔でそれを見た。
「君の成長スピードは本当に侮れないや。じゃ、もっとやってみよう!ホワイトもブラックもブラウンもみんなみんな出ておいで!」
「あれ、忘れ去られてんのかと思ってた」ブラウンがゴソゴソ出てくる。
「君なんかは特に陰が薄いからね!でも大丈夫!今からサキが君の魔力も使ってくれるよ!」
「言い方だよな。陰が薄いなんて言うな」
「本当のことなのに」

ドウランがヒラヒラと手を動かした。
ブラウンは渋々サキのもとに行く。うーん、私、もうちょっといろんなドラゴンと触れ合ってるべきだったな。

「サキ、ごちゃっと混ぜちゃって」
「え、そんなことしたら大変なことになるよ?土と水は混ざらないと思うし」
「いやぁ、いっぺんにいろんな魔力を扱えるための訓練だから」
「なるほど」

通常、魔力を波動と混ぜる時は右手を前に突き出す。
一点に絞って自分の体から波動を捻出し、魔力と絡めるためだ。

でも、サキはそんなことさえもしない。彼女の顔の前で、勝手に岩石が出てきたり、火や電気が競い合うように飛んで行ったり……。

今の私ならできるが、現役のドラゴン使いだった頃、こんな風に魔力を扱えた試しがなかった。この小さな女の子は、どこまで化けるのだろう。

「あ、分かったぁ!」
サキがにこりと笑う。
「ほら!ちっちゃいアカちゃん!」

赤ちゃん???どういうことだ。

と傍から聞いていると思えたかもしれないが、感知が使える私はどういう意味が即座に理解できた。
サキの手の中にレッドが収まっている。

「ほほぅ。これ、俺の一部か」
「そう。レッドと同じような魔力に調節してたら、もう一匹できちゃった」

サキが笑う。何が何でもやり過ぎている。怖くなるレベルだ。
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