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「どうだ?おさまったか?」
「うん……、まぁ」
ゆっくり息をしていると、ようやく胸のつかえが取れてきた。
息苦しくなっていた時、後ろから抱きかかえられて、この部屋まで運ばれて来たのだ。
「いやぁ、よくやった方だよ。ボスの近くにあれだけの時間居座り続けられた人ってのは聞いたことねぇや。あんた達には耐性があんのかな」
腕組みをしているこの細身の男が、私を避難させてくれたらしい。なーんか、男ばっかだな。印象としては。
「…『あんた達』?私以外にもあそこへ行った人がいるの?」
「いーや、そんなことはないと思うぜ。だけどさ、魔界にいる俺らの方が魔力を多く持ってるっつーのに、あんたよりよっぽど我慢できねぇんだから、これは民族全体の体質を疑っちまうだろ」
そして一息置いた後、「魔人と人間の違いさね」と呟きながら、そいつは一歩下がった。
「人間の方が魔人より強いってこと?」
「んー、そうなるのか?…よく分っかんねーや」
その男は首筋のあたりを掻いて首をかしげた。
魔人の方が人間より魔力が多くて凶暴だ、と習った覚えはうっすらある。それと、魔力が多過ぎるような場所に行くと、気分が悪くなるというのも、そう言えば勉強したっけ。
さっきみたいに吐き気を催したりすることを、「魔力に当てられた」と言うんだった。そうそう、やっと思い出せた。
「じゃ、ここは魔界なんだね」
「当ったりめーよ。そんなことも知らなかったのか?」
そいつはギョッとして顔をしかめた。
…さっきの男とは反対で、分かりやすい奴だな。顔に心が出やすいタイプだ。
「それで、あの人がボスなんだ」
「ああ。そうさ」
あっさり肯定されてしまう。つまり私は、魔界にきて一足飛びに、ボスと面会してしまったわけだ。調子が狂うのも納得だなぁ。
「……魔人は、あの部屋に入ったらすぐに撃沈しちゃうのね?」
「その通りだ。だから人間が優れてんのかなぁって思ったんだけどなぁ…」
ふむふむ、と頷きかけて、私はおかしなことに気がついた。
「あれ?それじゃ、あなたはどうやって私をここまで連れてこれたの?」
「ん?どういうことだ?」
「へっ?」
「もしかして、辛くて気がつかなかったのか?お前は自動的にここまで飛ばされたんだぜ?」
「ふいぃ?!」
「俺は、お前を介抱するように言いつけられただけだ」
彼の話によると、あそこで体が耐えきれなくなってくると、自然にこの部屋へ動かされるらしい。
「便利な機能ね」
「部下をむやみに殺す必要はないからな。ボスがそういう設定を施したんだ」
「ふぅん」
私が思っていたよりも、まだずっと偉い奴だったらしい。
感心していると、パタン、と音がして、戸が開いた。
「あのぅ、ここに人間がいるって、聞いたんだけどぅ」
ドスのきいた低い声で、そう言いながら入ってきたのは、一人のおじさんである。
顔色は悪く、ところどころに白い粒が散らばっている。
その人は、私と目を合わせると、ニタッと笑った。
それから、嬉しそうに、「ボスが呼んでいるよぅ。急いで会合室に向かうことだねぇ」と言い残して、ヌッと引っ込んで行った。
「うん……、まぁ」
ゆっくり息をしていると、ようやく胸のつかえが取れてきた。
息苦しくなっていた時、後ろから抱きかかえられて、この部屋まで運ばれて来たのだ。
「いやぁ、よくやった方だよ。ボスの近くにあれだけの時間居座り続けられた人ってのは聞いたことねぇや。あんた達には耐性があんのかな」
腕組みをしているこの細身の男が、私を避難させてくれたらしい。なーんか、男ばっかだな。印象としては。
「…『あんた達』?私以外にもあそこへ行った人がいるの?」
「いーや、そんなことはないと思うぜ。だけどさ、魔界にいる俺らの方が魔力を多く持ってるっつーのに、あんたよりよっぽど我慢できねぇんだから、これは民族全体の体質を疑っちまうだろ」
そして一息置いた後、「魔人と人間の違いさね」と呟きながら、そいつは一歩下がった。
「人間の方が魔人より強いってこと?」
「んー、そうなるのか?…よく分っかんねーや」
その男は首筋のあたりを掻いて首をかしげた。
魔人の方が人間より魔力が多くて凶暴だ、と習った覚えはうっすらある。それと、魔力が多過ぎるような場所に行くと、気分が悪くなるというのも、そう言えば勉強したっけ。
さっきみたいに吐き気を催したりすることを、「魔力に当てられた」と言うんだった。そうそう、やっと思い出せた。
「じゃ、ここは魔界なんだね」
「当ったりめーよ。そんなことも知らなかったのか?」
そいつはギョッとして顔をしかめた。
…さっきの男とは反対で、分かりやすい奴だな。顔に心が出やすいタイプだ。
「それで、あの人がボスなんだ」
「ああ。そうさ」
あっさり肯定されてしまう。つまり私は、魔界にきて一足飛びに、ボスと面会してしまったわけだ。調子が狂うのも納得だなぁ。
「……魔人は、あの部屋に入ったらすぐに撃沈しちゃうのね?」
「その通りだ。だから人間が優れてんのかなぁって思ったんだけどなぁ…」
ふむふむ、と頷きかけて、私はおかしなことに気がついた。
「あれ?それじゃ、あなたはどうやって私をここまで連れてこれたの?」
「ん?どういうことだ?」
「へっ?」
「もしかして、辛くて気がつかなかったのか?お前は自動的にここまで飛ばされたんだぜ?」
「ふいぃ?!」
「俺は、お前を介抱するように言いつけられただけだ」
彼の話によると、あそこで体が耐えきれなくなってくると、自然にこの部屋へ動かされるらしい。
「便利な機能ね」
「部下をむやみに殺す必要はないからな。ボスがそういう設定を施したんだ」
「ふぅん」
私が思っていたよりも、まだずっと偉い奴だったらしい。
感心していると、パタン、と音がして、戸が開いた。
「あのぅ、ここに人間がいるって、聞いたんだけどぅ」
ドスのきいた低い声で、そう言いながら入ってきたのは、一人のおじさんである。
顔色は悪く、ところどころに白い粒が散らばっている。
その人は、私と目を合わせると、ニタッと笑った。
それから、嬉しそうに、「ボスが呼んでいるよぅ。急いで会合室に向かうことだねぇ」と言い残して、ヌッと引っ込んで行った。
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