漠然としたトコロ

Nick Robertson

文字の大きさ
上 下
12 / 19

しおりを挟む
霧の濃い日だった。
私は毛皮の帽子を目深に被って、小さな林の中を歩いていた。

遊歩道として近所にあるのだが、朝早い時間、それも、独りで居るのに最適な場所である。

隣の池は真っ白に霞んでいて、もちろん生き物の姿は分からなかった。

進んできて、半ば程で引き返すことにする。
その時その時の気持ちによるとは言え、この遊歩道を突っ切ってしまうのは非常に稀である。大抵、その前に「帰ろうか」となってしまうからだ。今もそうなのだが、どうしてそんなことを思うのかは知らない。

褐色のコンクリートブロックが敷き詰められた地面を、かつかつと戻る。
しばしば、ブロックの間に生えて居る草を踏む。柔らかく凹むので、その時はすぐに分かる。

木々を抜けて、自宅に向かう。帰ってコーヒーでも飲もうと思った。
しおりを挟む

処理中です...