上 下
71 / 88

11

しおりを挟む
「背景魔法・植物園」
どこかからそんな声が聞こえたと思ったら、木の幹が地面を割って出てきて、根っこもはみ出したままグングンせり上がってくる。

危ない!危機一髪でそれをかわす。
さっきの声の主を見つけた。
みんなとは少し離れたところにいた。
ということは、もっぱら遠距離攻撃を使うわけだ。

「背景魔法・魔力粉・吸収」
さあっと白や赤の花が咲いた。
大きい。俺よりも多分でかい。
その花から一斉に花粉が飛び出してくる。

ところで言葉は唱えたほうが強いようだ。
黙ってたほうがカッコイイがそうも言ってられない。

花粉が周りを取り囲む。
俺の所に近づいてくるので「ゼカ」と言うとたちまち暴風が吹き荒れ花粉が飛ばされる。
しかしいまひとつ効果が上がらない。

「ダメだよ」遠距離くんが勝手に解説を始める。
「あのね、それはね、魔力吸収の効果があるからね、ほとんど吸い取ってね、つまり意味ないの」

相手のチームは何ともないようだ。
オロオロしている俺達を一網打尽にしてやろうとしているみたいだ。

俺達は真ん中に寄ってきた。
花粉も広がってくる。
花粉で曇っているが、透視をして相手がみんなこちらに両手を向けたことを認めた。

「ラナヨサ」相手陣の声を聞いたとたん自分の体に異変が起きる。
腹を突き上げられたようになって吐いてしまう。
これではまずい。
俺が何かを言おうとした途端花粉に捕まった。

あ…あ…
力がどんどん無くなっていく。
「腕を組め!」
誰かが小さく叫んだ。
それだ。
みんなフラフラと腕を絡める。

「ツハクバ」誰かがそう呟いた。
次の瞬間にはあたりは白い光に包まれていた。
バーと広がっていく。


気がつけば試合会場は消えていた。
ぽっかりと大きな穴が開いて、その中にいたのだ。
相手にとっても不意打ちだったらしく、やはり双方とも倒れてしまう。

それにしても審判は巻き込まれなかっただろうか。
「植物園」という術をした時に審判は何も反応してなかったようだから、あの時には帰っていたのだろう。
普通なら「ギャー」と言うだけでは済まないはずだ。

しおりを挟む

処理中です...