『観察眼』は便利

Nick Robertson

文字の大きさ
上 下
11 / 132

11

しおりを挟む
ともかく、やっと俺が話をできるようになったらしいので、今までのことを説明した。
その最中に思ったのだが、回復薬を奪われると思っていたのはただの被害妄想だったみたいだ。

道を歩く人はチラッとこっちを見ることもあるが、基本、自分達の進むべき方向を見据えていた。……勘違いで大騒ぎとか、恥ずかしくて耳が真っ赤になるなぁ。それに、全く知らない人を蹴っちゃったし。

「………じゃ、それはお前が自分で作ったものなのか?!自作の回復薬だって?!!」
「そういうことだ」
「ハハ!雑草で回復薬作りぃ?それってただのオママゴトじゃない!たっかい金を払って機械まで買ったのにね!」
「……………」

こいつは、こう、なんで意地が悪いんだ?!

「それで、どのくらい効くんだよ。知ってんだろ?」俺が不機嫌そうな顔をしたので、慌てて男が話題を切り替えた。
「あ、あぁ。知ってる」

返事をしつつも、俺はこれを今話すべきか一瞬迷った。でも、まっ、効能はおいおい公表しなきゃいけないんだから、ここで打ち明けても構わないだろう。………一応、原材料がシャチクサだってことは黙ってある。

「750ほど回復するらしい。回復薬が馴染みやすいとか馴染みにくいとかっていう個人差はあるだろうけど」
「ごめん。750が分かんない」
「あ、数値化できないのか」

少し優越感が湧いてくるじゃないか!実力を数値化できるのは『観察眼』使用者の特権なんだからな!

「つまり、4分の3ってことだ」
「4分の3????!!!」
すっごい叫ばれた。思わずのけぞったけど………、えっ、やっぱこれ良質なヤツ?

「信じられない………。じゃ、ほぼ全部じゃん……。75%って………」
(おぉ?!やっぱ俺って回復薬作りの名人になれそうなのか?)
女の人の驚きようをみて、俺は期待を膨らませる。

「ねぇ。…ってことは、リョウタには全員の体内エネルギー量が1000に見えてるってことか?」
ナギに聞かれた。
「そう。でも、体内エネルギー量がみんな同じってことはないだろうから、多分、マックスを1000ってしてるんだと思う」
「あぁ、減り具合なんかを割合で示してるわけか」
「恐らくね」
「…………なら、あれだ、回復薬ってのは元々の体内エネルギー量が多い人ほど効果を表しやすいんだな」
「あっ」

そういうことになるのか。すぐにここまで頭を回せるなんて、感動の嵐だ。

「回復薬っつーのは、中にエネルギーが凝縮してるんじゃなくて、体内エネルギーが生産されるのを促進する働きがあるってだけらしいからな。体内エネルギー量が多い人間は、それだけエネルギーを作り出す効率が良いのかもな」
横から男の人が口出しする。
「ほー。面白いこと言うね。だから回復薬の効果は体内エネルギー量の上限に比例するんだね」
「?、?、?」

いや、彼らはそんなに難しい話をしているわけではなさそうだ。なんとなくなら、俺にも分かる。落ち着け、落ち着いて頭を整理するんだ。……ほーらほらほら、だんだん意味が分かってきただろう?
…うん、なーんとなくだ。それでよろしい!
しおりを挟む

処理中です...