『観察眼』は便利

Nick Robertson

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「でも、このままジッとしていることもできないよね。だから、予想した敵の作戦から導き出せる、別の要所に向かおう」
「だな。でも、それはどこにすれば……」

聞いたって分からないだろう。そこまで行き着いていたら、とっくに言ってくれているはずだ。なら、自分で考えるしかない。

(…なるべく近い場所がいい。それでいて、敵方にとって凄く意義がある場所!)

「おい、ローン邸宅ってどこにあるんだ?」
「隣の駅の方だね。あのギルド長が住んでるのは」
「じゃ、そこに行こう」
「なんで?あいつらが『あそこに行こう』ってお兄ちゃんに話した所は、全部避けたほうがいいと思うんだけど」

そう言いたい気持ちは分かる。相手がワザワザ情報を提供してくれると言うのは、それが嘘か、またはさほど重要でないことを意味するのだと、俺も思う。

(でも、それじゃ前に進めねぇ………!!)
車は、俺の気持ちを察したように動いてくれた。
線路と並行して続いている道路をさかのぼっていく。

「………お兄ちゃんは、なんて言われたの?そこで何をするんだって?」
「そのローンって人の、浮気調査だとさ」
「浮気調査??!組合に?!!それ、絶対違うよ。依頼用紙、ちゃんと確認した?」

あっ!
そう言えば、あの時、俺はカズヤと喧嘩をしていたのだった。

(全て仕組まれたことだったんだ!)
仲間の喧嘩中に手続きをするなんて、そんな非情なことしてたら相当目立つと思う。だからあの二人は、喧嘩している時には心配そうにこっちを見て、外に出てから架空の依頼を持ちかけたのだ。

「しまった………」
「でしょ?」
「じゃ、この線もダメだな……」
「チッ、しょうがねぇな。どこ行けばいいんだか、俺にもサッパリだ」

赤信号の前で、じっくり考える。
すると、運転手が慌てて服のポケットから何かを取り出した。

「……あっ、直ったのか。…よし、じゃ、そうする」
うわぁ、この人ガラケー持ってたんだ。
そう思っていると、運転手は『通話中』と表示されたそれを、俺の手に渡しながら、しっかりと頷いた。
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