『観察眼』は便利

Nick Robertson

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そう言って笑いつつも、心の中では唸っていた。
(こんな所に、まさか中枢施設があるとは思わないだろうな。よくできてらぁ)

「これ以上は近づけないからね。ここで静かに待つことしかできないよ」
「なんでだよ。行こうぜ。あの中に」
「ダメ。見張りがいるもん」
「どこに」
「そこらじゅう」

少年は宙を指差す。

(わっかんねぇよ。……でも、そーんな時のためにあるのが、この『観察眼』だぜ!)

術を使って、改めて見渡すと、いるわ、いるわ。
物凄い数の人がこちらを見ていた。

「………お兄ちゃん、『観察眼』、使ってるの?」
「ああ。…確かにここはヤベェ」

全く気づかれないくらいの隠蔽術に長けた人間が、これほどまでに集まっているとは。
あと数歩進めば、首が飛ぶような気がする。
(…もっと、奥を見れないもんかなー)

幸いここで立ち止まっている限りは見逃してくれるようなので、この位置からゆっくりと『観察眼』を進めていく。

「っ!!!」
地下へ続く階段には、幾重にも何か古びた札が重なっていた。カメラももちろん完備している。
さらに奥へ進むと、ぶ厚そうな扉が見えた。
なにやら細かい金細工をしているらしいのだが、埃をかぶっているのか、薄黒くて綺麗とは言い難い。
俺は唾を飲み込んで、その中に意識を向けた。

(……………)
ここまでくると、慣れていないからか疲れがたまってきて、思わず『観察眼』を解きかけたが、エネルギーの源泉を見るために我慢しする。

(おや?あれかな……?)
部屋は円状に広がっていた。
となると、一番怪しいのは部屋の中央だ。なんだか、放射状、同心円状にエネルギーが広がってる気がするから。

案の定、そこには何かあった。
地面からわずかに突起が出てきている。
調べてみるか。
『エネルギーの溜まった岩
効果 絶えず大量のエネルギーを放出し続ける』

(間違いないな)
俺は自分の実力を大いに褒めた。近づいたら体がおかしくなるっていう危険物を余裕で目視してやったぞ!
しかし、これではただの遊びで終わってしまうような気がする。どうせなら、もっと深掘りしてみたいものである。
『観察眼』は、動かないように固定されたものを調べるのが得意で、だから、岩ってのは相性がピッタリなわけだ。

(よーし!これをたどっていくことができれば………!!)
岩に沿うように、ソロソロと土を潜っていく。
岩は地面の下ではかなり大きいようだ。突き出てた部分は、氷山の一角って感じだったらしい。
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