『観察眼』は便利

Nick Robertson

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「でもさ、どうやってこの球を穴に通すんだ?結構深い位置にあったけど」
「それはね、このおじさんに頼んだら良いよ。この人、『土術』全般が扱えるから」
「え!マジなの?!」
「………そうだ」

そいつぁ知らなかったぞ。みんな自分のことは秘密にしたがるんだからなぁ。シャイな奴ばっかだ。

「じゃ、早速やってみてくれ。この地面の下に……って、おい、車停めろよ」
「まだだ。もうすぐエネルギーの岩に着くんだから、そこまで辛抱しろよ。セッカチめ」
「……………」

 様々な方向に候補となる道があるのだから、エネルギーの岩に近づいて感知道具を作動させるのは当然のことだった。あはは、俺ってセッカチだったか!

「よし、ここで降りるぞ」

エンジンを切って扉を開ける。
三人とも降りると、俺は早速『観察眼』で道を調べた。

「んー……」
「どう?分かる?」
「いや、分かるんだけど、気が散って仕方ないな…」
「どうして?」
「さっきからあいつらがジロジロ見てやがるんだよ。こっちをな」

『隠蔽術』をマスターして、この場所の護衛をまさ明かされたであろう人間たちが、不思議そうにこちらを窺っているのだ。
しかし、持ち場を離れてはいけないという規律があるらしく、寄ってくることはない。それに、攻撃して良い範囲が定められているのか、ここで何やらしていても、まだ殺される雰囲気も漂って来ない。だから別に気にしなけりゃ良いのだけれども。

「…で、どうだ。分かったのか?どこにその穴があるか」
「おう。えーっとな、ここの真下に一つあるぜ」
「少しでもズレたら道に入らねぇんだから、正確に頼むぜ」
「ここの真下だよ!疑ってんのか?」
「いや、そんなことはないが」

運転手は俺の指した一点をしばらくじっと見つめて、頭を掻いた。
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