『観察眼』は便利

Nick Robertson

文字の大きさ
上 下
71 / 132

71

しおりを挟む
「ふー、スッキリした」
「そうだな。今までできなかったから」

三人ともションベンを出し切った。
変だったのは、最後にそれを終えたのは運転手であったということだ。

「どんだけ溜まってたんだよ。……まさか、一秒間に放出できる量が少ないのか?」
「うるせぇなぁ。俺はぼうこうが他人より大きいんだよ。きっとな」
「はは。そういうもんか」

よし、じゃ、気象台の所へ戻りますかぁ、と見せかけて。

「っふんぬっ!!!!!」
後ろに全力でダッシュする。

「あ!お兄ちゃん待ってぇ!!」
少年が気づいたがもう遅い。既にこの距離は20メートルに届……ん、あれ?

どんどん差が縮まって行く。
少年と運転手があり得ないくらいの速さで追いかけて来ているからだ。
は、速いって!こんな練習までしてんのか?!

俺はとっさの判断で登山道を外れ、草むらに飛び出す。
そこを突っ切っていけば、さすがに……

「はいお兄ちゃん、タッチー」
背中を軽く叩かれた。

「ひぃっ」
「僕達から逃げ出そうなんて土台無理な話だよ。位置もチェックできるんだし」
「ところで、何がしたかったんだ?なぁ。ただ俺らを欺こうとしただけってのは、許され…」
「すんません!マジすんません!」

俺は急いで土下座した。
膝に石ころがわずかに食い込む。痛くはない。

「いや、そこまでされなくても……」
(今だっ!)

俺は、そのままタックルするように飛び出して少年の横をすり抜け、走り去ろうと………。

「さっきから何やってるの?ねぇ、お兄ちゃん?大丈夫??」
ガッシリ腕を掴まれている。
絶対俺の方が体重重いのに、ビクともしないなんてっ!!

「お兄ちゃん。もしかして、独りになりたいの?ダメだよ、それは」
男の子は残念そうにトドメを刺した。
しおりを挟む

処理中です...