『観察眼』は便利

Nick Robertson

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安易に食事もできないので、俺達はずっと立ち続けるしかない。
絶えず周りに警戒はしているが、疲弊は溜まる一方だから、集中力も削られていっている。あとどのくらい保つか。

「ふ、腹が……」
「うずくまるなっ!」

片手でお腹のあたりを触りながら座りかけた人に副将が怒鳴る。
すると、その人は、頭をブンブン振って起き上がった。

「みんな、今は耐えるしかないだろうが。我慢強い人間しか、この場にはいないはずだ。迂闊に変な行動をとるんじゃないぞ」

副将が静かに、けれどよく通る声で呟く。

「………」
数人が頷き、残りの人はジッと目をつぶったり、自分に何かを言っていたり、無表情のままだったり、様々な反応をしていた。

その時だった。確かに部屋の扉が開いて、かすかに風が入ってきたのだ。

ザザザッ
すぐさま全員が構え、そこを睨みつける。

すると、ゆっくり歩いて来たのは………

「ん?」

俺が目をしばたかせたのと、一斉射撃が炸裂したのが、ほぼぴったりのタイミングだった。

(違う!あれはっ!)
攻撃した物から煙が出てくるのを凝視する。

「…………毒ガスだっ!」
俺が叫ぶと、素早く何人かが風系の技で煙を向こうに吹き飛ばした。

「…くっ、敵の罠か。………これで、少なくとも一人には、既に侵入を許していることは明らかになった、と」
ザクが悔しそうに呟く。
 
まさか味方がこんなことをするとは思えないから、そうなのだろう。やっぱり、ここは安全ではない。油断すれば、すぐだ。
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