我儘女に転生したよ

B.Branch

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旦那様が来た

「奥様、宜しいでしょうか?」

天蓋の外から掛けられた声に、微睡みから覚醒する。

「ええ、、」

「奥様、お加減はいかがでしょうか?お食事をご用意いたしますが」

「そうね、その前に湯を使いたいわ」

「畏まりました。失礼いたします」

ベルタが退室し、しばらくすると再び寝室の扉が開いた。
湯を張りに来てくれたのだろう。
湯は魔法で張る。

そう、この世界にはなんと魔法がある。
バスタブは寝室の横の小部屋にあるので、そこに魔法で湯を張ってくれる。
超便利。

因みに、アマーリエには魔法の才能がある。
でも、アマーリエは魔法を使うことが怖いらしく、魔法の腕を磨いたことがない。
勿体無い!!あり得ないでしょ!!

アマーリエには結構な魔力があるのだ。
その証拠に癇癪を起こすと、部屋がグチャグチャになる。
練習していないので、制御できない。
感情のままに解き放たれる。
迷惑人間アマーリエとは、私のことだ。

なので、バスタブに自分でお湯ぐらい張れるはずだ。
だが、やったことがない。
いつもの荒れ具合から考えるに、自分の出したお湯で溺れるか、火傷でもする未来しかない気がする。
宝の持ち腐れですね。

よし、元気になったら、今更だか練習しよう。
楽しみ~!!

「奥様、ご用意が整いました」

「ありがとう」

ベルタの手を借りてベッドを降りる。
そのまま、何人かの侍女たちに囲まれ、お風呂に入れられる。

田中由梨的には恥ずかしいが、アマーリエ的には日常。
今は、体力がなさ過ぎて足下が危ういので、正直助かります。
ハァ、いい湯だ。
お風呂のある世界には生まれてよかったと、心から思います。

部屋着に着替えていると、居間の方の扉がたたかれる音がした。

「見てまいります」

ベルタが寝室を出て行く。

扉の外で小声で言葉が交わされている。

「奥様、旦那様がお出でになります」

寝室に戻ってきたベルタは簡潔に告げた。

「え、、、」

そっか、来るか、、、。
険悪さと興味なさ具合を考えると、見舞いにも来ないっていう展開が予想されたんですけど、来ちゃいますね。

夫婦仲は当然冷え切っています。
ギャーギャー煩いだけの押し付けられた妻など、そりゃ関わりたくないでしょう。
子供が産まれてからは、こちらから本館に会いに行かないと、別館にいらっしゃることもありません。

因みに旦那様と第一夫人は本館に住み、第二夫人である私は、別館である陽光館に住んでいます。
それもアマーリエは不満だったようですが、私は面倒がなくていいと思います。

などと考えてる間に、侍女たちは着々と私の用意を整えてくれています。

髪を乾かし結いあげ、お化粧が施される。
アマーリエはキツ過ぎる性格に反して、顔は童顔で可愛らしい。

デフォルトでつり上がっていた目は、本当は少し目尻が下がっている。
磁器のような白く透明な肌に碧に銀の混じった瞳、プラチナブロンドのサラサラした髪、お人形さんのようだ。

「ベルタ、折角お風呂に入ってすっきりしたことだし、お化粧は軽くでいいわ。旦那様も私の顔など気にしないでしょう」

「、、、畏まりました」

用意が整い寝室を出ると、居間のソファーにクリストハルト様が座っていた。

「お待たせいたしました」

「、、、いや、元気そうだな」

私が近付くと、クリストハルト様は立ち上がって私に目を向けた。
数秒私の顔を訝しげに見た後、そのまま扉の方に向かう。

「では、私はこれから登城する」

「はい、いってらっしゃいませ」

パタン、と部屋の扉が閉じられる。

部屋に微妙な空気が流れる。
誰も何も言わず、身動きさえしない。

気を使われてる?
いや、違うな、私の癇癪を恐れてるんだ。
今までなら、こんなことがあった後は大荒れだった。
みんなに当たり散らし、喚き散らす。
アマーリエ、疲れる人生だったね。

「朝食を用意してもらえるかしら?」

私が声を掛けると、皆金縛りが解けたように動き出した。

「は、はい、すぐにご用意いたします」

みんな、そそくさと部屋を出て行く。

「奥様、、、」

「なあに?」

一人だけ残っていたベルタが声を掛けてくる。

「いえ、、、お食事は居間にご用意して宜しいでしょうか?」

「ええ、お願い」

「畏まりました。それでは失礼いたします」

ベルタもお辞儀をして部屋を後にする。

ふう、病み上がりには疲れるイベントだったな。
早く元気になりたい。

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