我儘女に転生したよ

B.Branch

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お菓子を作りましょう

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基本的に料理は本館で作られる。
料理長も本館の厨房にいるので、別館である陽光館では簡単な調理しか行われない。
別館の食事も本館の厨房で作られて、別館の厨房で整えられ供される。

だが、基本的な材料、調味料、調理器具等は常備されているし、設備も本館とそれ程差はない。

「ベルタ、ジャガイモはあるかしら?」

私が尋ねると、ベルタは厨房に残っていた調理見習いの少年に目を向ける。

「あ、えっと、持ってきます」

少年が慌てて奥の貯蔵庫に走っていく。

「ど、どうぞ」

籠に入った山盛りのジャガイモが差し出される。

「ありがとう」

ニッコリ笑ってお礼を言うと、厨房にいた二人の侍女と調理見習いの少年二人が固まる。
もう、この反応はデフォルトだ。

「包丁はどこかしら?」

「え?!いや、その、、」

少年があからさまにビクリと震える。

いや、刺さないよ?
そりゃ、ヒステリック女に刃物が厳禁なのは分かるけど、そんなに怯えられるとちょっと傷付くよ。

「奥様、調理はそこのクルトとダミアンに任されてはいかがでしょうか?奥様には指示をしていただければ」

、、、それは料理をしたと言えるのだろうか?
だか、みんなの心の平安を守るためには仕方ないのかもしれない。

って、私は殺人鬼か!!
ハァ、仕方ないね。

「じゃあ、お願いしてよろしいかしら?」

「は、はい」

少年二人が直立不動になる。

では、殺人鬼、改め鬼軍曹アマーリエ、指示いたします!!
という冗談は置いておいて、少年達が緊張し過ぎで、包丁を持たせていいのか不安になる。

「ジャガイモを細かく切ってもらえるかしら。あの、慎重にゆっくりでいいから怪我をしないようにね」

少年達は言われた通りに、ゆっくりとジャガイモを刻んでいく。
どんどん細かくなっていくが、なかなかジャガイモが光らない。

「もっと細かくして」

少年達が伺うように見てくるので、指示を出す。

ひたすら刻んでもらって、やっとジャガイモが光った。
もう、すり下ろした方が早かったくらいの状態になった。

よし、次は、、、
周りを見回すと、布巾と桶に汲まれた水が光っている。
なるほど、布で包んで水に浸けてデンプンを絞り出せってことだね。

「きれいな布はあるかしら?」

「あ、はい、肉を包む用の布があります」

「そう、じゃあ、それにジャガイモを包んで水の中で揉んでもらえるかしら」

少年が揉んでいると、段々と水が濁っていく。

「次は、どういたしましょうか?」

「しばらくそのまま置いておくわ」

少年が水の入った器を離した途端光ったということは、そういうことだろう。

さて、次は生地作りですね!

、、、うん、片栗粉が出来ないと始まらないんだった。
しかも、バームクーヘンってかなりハードルが高い。

あの見た目・・・で分かるが、丸い層状に焼かないといけない。
丸くなくてもいいのかもしれないが、どうせならそっくりに再現したい。

んー、どうしたらいいのかな?

!!そうだ、私にはお金がある!
感じが悪いが、もう一度言おう。
私にはお金がある!

という訳で、TVで見た、あのバームクーヘン用オーブンを再現して作ります。
ついでに、お菓子用の調理器具とかも作りましょう。

「ベルタ、特注でオーブンを作りたいのだけれど、どうすればいいかしら」

「、、、ベッカー商会のものをお呼びいたします」

私の無茶振りにベルタがすぐに答えてくれる。

ベッカー商会はモルゲンロート王国の王都最大の商会だ。
百貨店のように生産者や問屋から様々なものを買い付け、手広く商いを行っている。

さて、今日はバームクーヘンは作れそうにない。
今、作れそうなものって何かな?

よし、そう繋がりでアレにしよう!
ヴィアベルも喜んでくれるはず!

お菓子の材料と調味料を書き出した紙を広げる。
光っているものは~

「小麦粉と卵、砂糖、牛乳、バター、生クリームを用意してもらえるかしら」

「は、はい!」

クルトとダミアンによって、即座に目の前に並べられる。

「じゃあ、、、」

と、手を伸ばそうとすると、またベルタの待ったがかかった。

「奥様、、、」

いいでしょ!?
刃物は使わないから、(周りへの)危険はないよ!

ベルタとしばし見つめ合う。

「クルト、バターを溶かして、生クリームを泡立てて。ダミアン、卵をといて生クリーム以外を全て混ぜ合わせて、フライパンで薄く何枚も焼いてもらえるかしら」

ベルタさんの静かな視線に負けました。
少し前まであんなに怯えていたのに、、、
慣れてくれたと喜ぶべきなのでしょう。

クルトとダミアンは、流石に見習いとは言え調理師だ。
指示通りに出来上がっていく。

よし、後は生地を冷まして、生クリームを挟んで重ねていく。

はい!ミルクレープの出来上がり~

「このまま、冷蔵室で少し冷やしておいて」

「はい、、、」

クルトとダミアン、そして、隅で見ていた侍女二人の視線が出来上がったミルクレープに釘付けだ。

「私とヴィアベルの分以外の残りは、皆で分けて食べてね」

「良いのですか!?」

隣から興奮した声が飛んでくる。

ベルタ、、、甘いもの好きなんですね。

いつも、あまり感情を出さないようにしているのに、今は目がキラキラしている。

「ええ、皆、食べた感想を教えてね」

「はい!」

全員の力強い返事が返ってくる。

この感じだと、ヴィアベルの喜びの笑顔も見られそうだ。
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