婚約破棄された男爵令嬢、ボロ雑巾を拾ったと思ったら、大魔法使いでした!~番だと言われて溺愛されたんですが!?~

水中 沈

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12 お揃いのブレスレット

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「絶対あれインチキだったわ」

露店の真実性の無い花占いごときに腹を立てながら、街を歩く。

楽しかった花祭りも、もう少しで終わりを迎える頃だろう。

「そろそろ帰ろうか。ネル?ネルー?」

珍しくネルが何かを眺めている。

遂に自我が芽生えたのね!

これで、”番”の話も帳消しにしてくれないかなぁなんて思いつつ、ネルの視線の先を追う。

「ブレスレット?」

ネルの視線の先には可愛いお花のブレスレットが並べられていた。
小さな香り袋が付いているらしく、ほんのりと花の香りがする。

「リリィの匂いがする」

結構、気持ち悪い事言うわね。とドン引きしながらブレスレットを眺める。

確かに、甘い百合の香りがした。

「お揃いで買う?」

油断した隙に心の声がまろび出る

っち。・・・っともなんとも思ってないんだから。

「良いの!?」

ネルが嬉しそうに微笑む。

ネルが笑ってくれた。幸せだ。なんて気持ちは花輪と共に水に投げ入れた。そう思う事にしよう。
平常心だ。平常心。

「い、いいわよ。上等じゃない。お揃い」

無理して強がって見せたが、本当は私も嬉しかった。

ネルとお揃い。なんだか素敵な気分・・・でもないよ!ほんと、本当なんだから!

「どれにする?」

またいつもの様に悩むんだろうな・・・私が。と思っていたが、ネルはすっと流れるような動作でブレスレットを手に取った。

「これがいい」

白い百合の花に小さな赤い花が散りばめられたブレスレット。香り袋の匂いは勿論百合の香りだ。

百合の香りのブレスレットは他にもあった。どうしてそれにしたの?・・いや、聞いたところで碌な答えは返ってこないだろう。

代わりに
「私のはどれが良いと思う?」と尋ねる。

同じシャンプーを使っているのだから、ネルも私も同じ香りだ。
しかし、同じ百合の香り袋のブレスレットを買うのは少々味気ない。

なら、ネルに選んで貰えばいい。先ほど芽生えた自我も成長するかもしれないし。

「じゃあ・・これ」

しばらく悩んだネルが手に取ったのは、ヒマワリとオレンジブロッサムの花。そしてジャスミンの香りがするブレスレットだった。

「『あなただけを見つめる』に『永遠の愛』それに、『あなたは私のもの』ね。重い!重すぎるわ!」

何も考えずに選んだにしては、漬物石もびっくりの重さである。
あまりの重さにひっくり返りそうだ。

「別のにしない?」

思わず尋ねる。しかし、ネルは一度こうだと決めたらテコでも動かない性格らしく、「これがいい」と譲らない。

「仕方ないわね」

結局最後は私が折れるのだ。私って、なんて不幸な美少女なんでしょう。美少女だったことなんて一度も無いけれど。

買ったブレスレットを身に着ける。

「えへへ~お揃い」なんて馬鹿みたいにはしゃいだりしない。しないもん!

きらりと太陽の光に照らす。

「やっぱり百合が一番好きだけど、ジャスミンの香りも悪くないわね」

でも、一番はネルが選んでくれた事が嬉しい。
自我の成長の話であって、恋愛的な意味では無く!だけれど。

お揃いのブレスレットを買ってようやく私たちは帰路についた。

コトコト揺れる馬車の中、二人寄り添いながらうたた寝をする。

絡んだ指から、ジャスミンと百合の香りがした。

なんだか、今日はとても疲れたわ。
良い夢が見れそうだと暮れる夕日を眺めながら思った。
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