【完結】花は一人で咲いているか

瀬川香夜子

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 緊張しながら料金を払って、二人は日が十分に昇ったころにホテルを出た。
 駅の通りにある喫茶チェーン店でモーニングメニューを頼んで空腹を紛らわせ、そのまま撫子の家まで送ってくれるという四条に甘えて家に向かう。
 その道中で、ふと反対側の通りに小さな花屋を見つけた撫子は、自宅の花瓶を割ってしまったことを思い出した。
(あのまま家を飛び出ちゃったけど、きっと眞梨や雅海さんが片付けてくれたんだよね……)
 玄関に置かれていた花瓶には、定期的に雅海が花を入れ替えて飾っていた。昨日だって、冬を思わせる白い花が数輪、透明なガラスの花瓶にささっていた。が、撫子が落として花瓶も花もだめにしてしまった。
 遠目に見える花屋の軒先の花々に、家にあった花を重ねる。割れたガラス片に囲まれて無残に落ちた花を片付ける二人の様子が目に浮かんで、胸を鷲掴みされたように苦しくなった。
 家を出るときは確認する余裕なんてなかったが、今、家に帰ると華やかに彩ってくれていた花はなくなっていて、淋しく思うのだろう。
 立ち止まり、撫子は咄嗟に四条の手を掴んで引き留めた。振り返った彼に、おずおずと切り出す。
「あのさ。俺、家の花瓶割ってだめにしちゃってさ。それでみんなに迷惑かけたから、お詫びに花を買って帰りたいんだけど……」
 いいかな。そう上目遣いに四条の表情を窺うと、すぐに頷いてくれた。
 二人で向かった花屋は、こぢんまりとした小さな店舗だった。中には若い女性が一人、エプロン姿で書き物をしていた。
「いらっしゃいませ! お花をお探しですか?」
 撫子たちの来店に気づくと、彼女は顔を上げて大きく笑った。興味深そうに店内を見渡す四条の隣で、撫子はこくりと頷く。
「お花と、あと花瓶を探してるんですが……」
「花瓶でしたらこちらにありますよ」
 言いながら、彼女は自身の立つレジ台の隣の棚を案内した。
(わあ……色んな形のがある)
 真っ直ぐに伸びた細長いものや、丸い形のもの。色だって、透明なものから青、赤、黄色などさまざまだ。
 感嘆と息を零し、撫子は目移りするようにきょろきょろと視線を行ったりきたりさせた。
 内心でどれがいいかとうんうん唸って、雅海がいつも用意していたのはシンプルなものが多かったな、と思い至る。
 そうして、透明なガラスの細長い円柱のものを選んだ。割ってしまった花瓶に形が似ているし、白い絵の具が垂れたように模様の入ったシンプルで可愛らしいものだ。
 撫子がそれを手に取ると、女性はすかさず「お預かりしておきますね」と手を差し出してくれる。
 割れ物だからずっと手に持っているのも不安だ。撫子はほっとしつつお願いした。
 次にお花を……と店内に敷き詰められた花々を見るが、たくさん種類がありすぎて困ってしまった。
 迷ってまじまじと見つめていると、隣で不意に四条が呟いた。
「そういえば、お前の名前と同じ花もあったよな」
「うん。お母さんは俺を見て、その花を思い出してつけたんだって言ってた」
 何年か前に、調べたことがある。「撫子」の花とはどんな花なのか。母は、自分の産んだ赤ん坊を見て、その花を連想したと言っていた。だから、「撫子」の花を見れば、母が自分に感じた想いが分かるんじゃないかと思ったのだ。
「……撫子の花びらって先端がトゲトゲしてるんだよね。色も結構濃い赤や紫で……きつい色だなあって思ったのを覚えている」
 撫子の中で赤ん坊というと、丸くてふわふわしていて温かい。思い浮かぶ優しい言葉を集めたような、そんな存在だった。だから調べてみて、余計に母のことが分からなくなった。母は、こんなに目に焼き付くような花を、赤ん坊に重ねたのかと。
 そのあと、撫子の花色は多く、白や黄など淡いものもあることを知ったが、どうしても最初にみた撫子の花の印象が忘れられず、結局母はそのとき記憶に新しかったちょうどいい言葉を息子につけたのだと思った。
 その頃は、母は自分を捨てるぐらいに興味も愛情もないと思っていたから。
(でも、本当は幸せになって欲しいと思うぐらいには好きでいてくれたんだよね……)
 母は本当に覚えていた花の名前をつけただけなのだろうか。
 そんな疑問が撫子の中で頭をもたげたとき。
 ――ねえ、お母さん。
 夢の中での最後の記憶が、ふと耳の奥に蘇った。
 母に抱きしめられて名前を呼ばれたとき、幼い撫子の頭にあったのはあの男の言葉だった。
 ――撫子くんだっけ。女の子みたいな可愛い名前だね。
 粘ついた男の声と触れられた乾いた指の感触が頭を支配する。あのときの撫子は、母の様子が変だと気づくことは出来なかった。
 振り返って母と向き合い、撫子はそっと呼びかけた。
「ねえ、お母さん。どうして俺のこと、撫子って名前にしたの?」
 名前には、それをつけてくれた人からの愛情が見て取れる。きっとあの時の撫子は、短い人生の中で母からの愛情を一番渇望していたことだろう。幼い頭では理解できない未知の恐怖から逃げるように、母の愛情を求めた。
 泣きそうに弱々しく。けれど必死に見上げる子どもを見下ろして、母はそっと眼を細めた。自分の無力さを嘆くように。縋る子どもを痛ましく思うように。
 頬にかかった撫子の横髪をすくって耳にかけ、円やかな頬を母の手が包む。
「産まれたばっかりの撫子を見たときにね、前にお客さんからもらった花束の花を思い出したの」
 だからその花の名前をつけようと思ったのだと、母は囁くように語り出した。
「そのまんまつけちゃうと人の名前っぽくなくてね……漢字で草とか入っちゃって可愛くないし。お花って、他にもたくさん呼び方があるの。撫子は、そこからとったんだよ」
 短くて柔らかい子どもの髪を手櫛で整え、母はまるで六歳の撫子の向こうに赤ん坊だったころを重ねるように微笑んだ。うっそりと頬を染め、そこに浮かぶのは確かに愛情や幸福と言った温かなもので――。
「……そうだ。そのまんまつけたわけじゃないんだ」
 十七歳になってやっと思い出せた、母との記憶。夢の中の自分がそうしたように、撫子は体を反転させて店内をぐるりと見渡した。
 頭の中で、母の言葉を反芻させる。
(人の名前っぽくなくて……草の漢字が入る。別名で撫子)
 ぐるぐると同じ言葉を繰り返し、まじまじと店内を探しても、撫子には花の知識がなくて分からない。もしかしたら、いま出回っている花ではないのかもしれない。
 母の面影でも探すように必死に眼を巡らせる撫子を、四条は心配そうに見つめ、
「なにか探してるのか?」
 と訊ねた。
 こくりと頷き、さっきから頭の中で繰り返し続けている言葉を伝えた。
「名前っぽくなくて、草が入って、別名で撫子……」
 考えるように顎に手を当てて四条も唸った。そうして二人で頭を悩ませていると、不意にレジ台から会話を聞いていた店員がそっと名乗り出た。
「あのー。もしかしたら、この花じゃないですか?」
 そう言って彼女が示したのは、さほど広くない店内の中ほどにひっそりと置かれていた花だった。
「かすみ草……?」
 一緒にあった値札の名前を思わず読み上げると、彼女は嬉しそうに笑って頷いた。
「かすみ草は色んな花束と組み合わされることが多くて、人気の花なんです。名前に草の文字もありますし、この子はナデシコ科の植物で、花糸撫子とも言うんですよ?」
 彼女が嬉々として語る説明を、撫子は半ば茫然と聞き届け、腰を曲げて身を乗り出すようにその花を見つめた。
 細い枝先に小さな白い花がとたくさん咲いている。丸みのある花をふわふわとつける姿は、可愛らしい。白い花に緑がかった枝の色合いのせいもあって、無邪気な子どものような愛らしさが浮かんだ。
 この花だ。反射的に撫子はそう思った。
 やっと眼にかかることの出来た衝撃で、見惚れたように言葉を無くしている撫子の横で四条も同じように腰を屈めて花を見た。
「おお。小さい花がいっぱいある……たしかに小さくて可愛いし、赤ん坊見たいって言うのも分かる」
「そうなんです! 海外では、その可愛らしさからbaby`s breath……赤ちゃんの吐息とも言うんですよ」
 彼女は本当に花が好きらしい。ニコニコとした様子で色んな話をしてくれた。
 四条と女性店員の会話を横で聞きながら、撫子はじわりじわりと胸にこみ上げてくる熱い想いを感じていた。
 小さくて、ふわふわしていて可愛い。けれど、触れると折れてしまいそうで心配になるような繊細さ。
 そっと手に包んでなにからでも守ってあげたいと思う、そんな愛おしさ。
「赤ちゃんの吐息……」
 母は、赤ん坊だった撫子を見て、こんな気持ちになったのだろうか。
 今さらながらに母の感情を追体験して、撫子は泣きそうになった。
 本当に自分は母から愛されていたのだと、やっと実感して受け入れることができた。
「それにしてもかすみ草から名前をとるなんて……きっとお母さんはすっごく可愛くてしょうがなかったんでしょうねえ」
 うっとりするように、女性はしみじみとした口調で言う。撫子はこみ上げる感情をどうにか抑えて、震えた喉で頷いてから呟いた。
「あの、これ包んでもらえますか?」
 女性の丸い瞳が一度瞬いて、すぐに花が咲くような笑みを浮かべた。
「はい。かしこまりました」


 受け取った花瓶は鞄に詰め込み、かすみ草で作られたブーケを胸に抱いて店を出た。
 店員が花を包んでくれている間、撫子が涙を零さないようにひっそりと目許を拭うと、隣に寄り添う四条は静かに手を繋いで一緒にいてくれた。
「ねえ、四条くん。これからはさ、昨日みたいに撫子って呼んでくれる?」
 そっと囁くと、彼は驚いたように撫子を見た。しかし、すぐにこくりと頷いてくれた。
(名前が嫌いなんて思ってて、ゴメンね。お母さん)
 愛のない照明に思えていた名は、本当は一番に母の愛がこもっているものだった。
 不思議だ。気持ち一つで、こんなに自分の名前が誇らしく思える。
 完成したブーケを受け取り、撫子たちが外に出てから、再びどちらからともなく手をつなぎ合わせた。
 週末の朝は、いつも見かけるサラリーマンや学生の姿がない分、随分と静かだ。
 撫子は触れた手の温かさを感じるように視線を落とし、ふとかすみ草の花束を見た。
「かすみ草は他のお花と組み合わせることも多いですけど、この子だけでも可愛くて綺麗なブーケになるんですよ」
 そう教えてくれた店員の声を思い出し、撫子はブーケを支える手にわずかに力を込めた。
「……ほんとにかわいい」
 囁き声は、白い花々だけに届くほど小さかった。口をついたとき、やはり思い出されるのは母の面影だ。
 ――ねえ、撫子。お母さん可愛い?
 毎日のお決まりのやり取りだった「可愛い」の言葉。撫子は良い子だと思われたくて、いつだって可愛いと返していた。けど、本当にそう思ってもいたのだ。
 ――ねえ、撫子。撫子はお母さんのこと……。
 母が出て行くあの日だけ、いつもと違った。彼女は、本当はなんて訊きたかったのだろう。
 お母さん。撫子は心の中で母に呼びかけた。
 もしかして。もしかしてだけど、俺に愛してるって訊きたかった?
 本当は、可愛いじゃなくて愛してるって訊きたかったんじゃないの?
 そう思うのは、きっと撫子がそうだからだ。可愛いじゃなくて、本当は母に愛してると伝えたかった。
 でも、正面から言うのは怖かったのだ。拒絶されることが怖くて、母から求められている言葉を、その代用にした。絶対に受け入れてもらえる言葉で、愛を伝えていた。
 可愛いは、撫子の中では愛の言葉だった。
(……でも、それじゃだめだったんだよね)
 数え切れないほど可愛いって伝えたけれど、母に撫子の愛は伝わっていなくて。母からの愛情も、撫子はこんなことがあるまで気づかなかったのだから。
 あの頃、撫子も母も怖がりだった。十七歳になった今、母が怖がっていたのがよく分かった。
 一歩。せめて一歩でも踏み出していれば、なにか変わっただろうか。
 大きくなっても、母と撫子が二人で生活している未来もあったのだろうか。
 物思いに耽る撫子だったが、隣を歩く四条が立ち止まったので、必然的に足が止まった。半歩だけ先を行った撫子が彼を振り返った。
 四条は、難しい顔でじっと撫子を見ていた。嬉しさや苦い気持ちを混ぜたような、複雑な感情が浮かんでいる。
「四条くん……?」
 呼びかけると、彼の視線が迷うように外を向き、けれどすぐに撫子に戻ってきて真っ直ぐに射抜いた。
「昨日も言ったけど、俺はお前の母親に怒ってる」
「……うん」
「勝手に放り出しておいて、幸せになって欲しかったってなんだよって自分勝手で怒りが湧く。けど、お前にとって母親からの愛情ってのは絶対必要なんだろうなってのは分かってるから……悔しいけど、受け入れる。本当は俺が全部上書きして、俺だけの愛情で満足して欲しいとも思うけど、お前はそれじゃ前を向けないだろうから我慢する」
 率直ではっきりとした物言いをする彼にしては珍しく――いや、出会ったころのようなグチグチと回りくどく話をこねくり回す姿は久しぶりだというほうが近いか。
 一呼吸で言ってのけそうな彼の低い声が。その言葉が、いつだって撫子の心を晴れた空の下に連れ出すように温めてくれる。
「だけどな、今お前のこと一番に想ってるのは、」
「四条くん、好きだよ」
 胸がいっぱいになって、つい彼の言葉に被せるように感情が溢れてしまった。四条は、眼を見開いて驚いたように固まった。
 握った手の指をすり寄せる。撫子はもう一度微笑んで「大好きだよ」と告げた。
 すると、固まったように動かなくなった四条の頬がじわじわと赤くなって熱を持っていく。
 いつも平然とした顔でなにごともキッパリ言い切る男が、自分の愛の言葉で照れて赤くなっているのだと思うと、おかしくって笑ってしまった。同時に、どうしようもなく嬉しく思えた。
 今度は気持ちを隠したりしない。素直に、正直に全部伝えよう。愛してるなら、愛してると。
 なにより四条は、ありのままの撫子の言葉を受け取ってくれる人なのだから。
「俺が前を向けるのはね、四条くんがいてくれるからだよ。お母さんのことを受け入れられたのも、香月のみんなと向き合えたのも、全部四条くんが俺を好きになってくれたから」
 四条が愛してくれるから。四条を愛しているから、撫子は真っ直ぐに立っていられるのだ。
 ありがとう、と感謝の言葉とともに頬にキスをすると、今度こそ四条は耳まで赤くなって狼狽えるように口を戦慄かせた。
 クスクス笑った撫子に、彼は悔しがるように目尻をつり上げ、路地のほうに撫子を引っ張った。
 朝日から外れて、建物の陰に入る。
すると、肩に腕を回されて、そのまま抱きすくめられてキスをされた。どこか早急で荒々しさを感じる仕草は、一秒だって待てない。そう言っているようで、そこまで自分を求められていることに、体の中心がじんわりと温かくなった。
 背の高い彼が覆い被さるように顔を寄せて、一瞬だけ強ばった体も、すぐに力が抜けていった。
「お前、俺のこと揶揄ってるだろ……恋愛経験ないからって」
 苦い顔で眼をつり上げて言われたが、頬が赤いままだと迫力は半減――どころか可愛らしいとさえ思えてしまう。
「そんなことないよ。それに俺だって恋愛経験ないもん」
 ゆるゆると首を振って言うと、彼は噛みつくように撫子の唇を塞いだ。
「あったら相手を殴ってる」
 触れ合う直前、四条は想像でもしたのか憎しみまじりの低く声で言った。
 吐息ごと奪われて撫子は息苦しさを覚えた。と同時に、彼の独占欲の混じった言葉に、体中に幸福が溢れていくのを感じた。
「俺だってお前のことが好きだ」
 一瞬離れた隙に、彼はさっきのお返しとでも言うように撫子に愛の言葉を告げた。
「俺のことも、名前で呼べよ」
 ――今度は二人でパスルをしよう、撫子。
 と優しく甘い声が耳元で囁く。
「うん。約束ね。丞くん」
 嬉しくて涙まじりに頷くと、もう一度短いキスが降ってくる。ゆっくりと瞳が開いて視線が交わると、二人は微笑むように顔を見合わせた。
 愛し合う二人の間では、かすみ草の小さな花が、微かな笑い声に合わせて揺れていた。

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