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13. Recreation!皆で仲良く鬼ごっこ!
しおりを挟む晴天の今日、レクリエーション当日である。今回私は逃げる側で、凪は鬼側だ。くじを引き終わったあと、凪にずるーいと言って、鼻で笑ってあしらわれたのを思い出す。
私は体操服の半袖の上に長袖のジャージを羽織り、長ズボンを身につけ、凪が以前作ったシュシュで長い髪を一つ結びにして気合十分だ。
凪は体操服の半袖に長ズボンを身につけている。
「逃げきれなくてもいいんですけど、あっさり捕まるのは癪に障りますよね。こうなったら、意地で逃げ切ります」
「まあ……やれるだけやる」
「凪も頑張ってください」
「白川もな」
注意事項や簡単なルール説明があった後、生徒会長の挨拶があり、そのままスタートする。
先に逃げる側が山へ入り、その5分後に鬼が投入される。
私は捕まらないようにしようという思いを胸に、山道を駆けていくのだった。
────────
時間が流れに流れ、鬼ごっこももうすぐ終わる。若干捕まりかけたりもしたが、運良く私は逃げきれて、今の今まで捕まっていない。
これなら逃げ切れるだろう。と思うも気を抜くことなく辺りに注意を向ける。
すると、後ろの方でガサガサと音がした。
バッと振り向き、距離をとる。
しかしそこから出てきたのは、桜城くんだった。確か桜城くんも逃げる側だったはずだ。
「お、雪月!捕まってなかったんだな!」
「ええ。桜城くんも捕まってなかったんですね、流石です」
「ありがとう!でも、結構逃げる側の人も少なくなってたからな……見つかるのも時間の問題だな」
「そうですね。でも、ここまで来たら逃げ切りたいですよね」
「ああ!」
そうして、私達は何故か一緒に行動することになった。
残り20秒
先程まで鬼に追いかけられていたが、何とか逃げ切って、今に至る。
細心の注意を払って、2人で辺りを見渡す。
残り10秒
心の中でカウントダウンを始める。
私達の他に人の気配はないが、用心していつでも走り出せる体勢でいる。
5、4、3、2、1……0
『只今をもって、鬼ごっこを終了します。生徒の皆さんは、グラウンドに集合してください』
山全体に響く程の音で放送がかかった。
「やりましたよ、桜城くん!私達、逃げきれました!」
「よっしゃ!やったな、雪月!」
「一時はどうなるかと思いましたけどね……何はともあれ、一件落着です!」
「そうだな!よし、学校に帰ろう!」
私達は、学校に戻るため山道を下りていく。
しかし、ポツッと頭の上に何かが落ちてきた気がして立ち止まる。
見上げると、空がどんよりとした灰色の雲に覆われていた。
そして、ポツ、ポツ、と雫が頬に降り注ぐ。
雨だ、雨が降っている。
「雨が振り始めましたね……」
「本当だな……濡れる前に急いで帰ろう!」
「待ってください、そんなに急いでは」
危険です、と言う前に桜城くんは走り出していた。
彼になにかあったらいけないと思い、私も桜城くんを追いかけた。
ついさっきまで小雨だったのに、今は本降りになっている。雨で山道が滑りやすくなっているため、走らず慎重に帰るべきなのだが、なかなか桜城くんに追いつけない。
「桜城くん、待ってください!」
私は大きな声で言った。
桜城くんは私の声に気付いて、私の方に駆け寄ってくる。
しかし、もうすぐ私の前に来るところで、桜城くんは足を滑らせた。
しかも、横に倒れた。
桜城くんの横には道はない。あるのは崖かと思うくらいの急斜面。
「桜城くん!!」
私は咄嗟に手を伸ばして桜城くんの腕を掴んだ。
しかし、水に濡れた落ち葉に足を取られて踏ん張れず、私と桜城くんは共に急斜面の下に転がり落ちたのだった。
落ちている途中で、誰かの声が聞こえた気がしたのだが、その声は誰のものか分からなかった。
もしかすると、死に際にあらわれる天使か悪魔の囁きだったのかもしれないと私は突飛な考えに至った。
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