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311話 お父さんvs.ナイトさんでございます!
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「よろしく頼むね」
「お手柔らかにお願いします」
お父さんとナイトさんが部屋の中央で握手した。お父さんのうやうやしさを見るに、ナイトさんのことを知ってはいるけどあまり話したことはないのかもしれない。この国最強の剣士とSSランク極至種の剣士による戦い……お金払ってもこんなのみられないわね。ちょっとワクワクする。
「おー、もう一戦余裕なくらい回復しちまった。すげぇなー」
「ありがとう、アイリス」
ガーベラさんとランスロットさんも完治させたし、これで心置きなく観戦できそう。そうだ、いつもお父さんと一緒に仕事してるランスロットさんに、この試合がどうなるか予想してみてもらおうかしら。
「ランスロットさん、この戦い、どうなると思います?」
「ああ、グライドは俺の魂のライバルだ。負けるはずがない……と、言いたいところだがぶっちゃけあのナイトって人が勝つだろうな。ありゃ無理だ」
「そこまでわかるんですか?」
「わかるよ。ジーゼフさんと同じような雰囲気だされちゃな……俺とグライド二人掛かりでも敵うかどうか」
自分の強さに自信たっぷりそうだったこの人にそこまで言わせるんだものね、ナイトさんの実力知らないけど、やっぱり相当なものなのね。私より格上な時点で当然かしら。
お父さんとナイトさんは定位置についた。王様が合図をしたら始まってしまう。ふと、同じ剣士としてどう感じてるから気になってリンネちゃんの方を見た。あの子はすごく目を輝かせながら食い入るように二人を見ている。この戦いから学び取れることは多そうね。
「じゃ……始めてね!」
王様が手を振りながらそう言った。その瞬間、お父さんとナイトさんは私たちの目の前から消え去ったの。別に透明になったわけではない。単に速すぎて目で追えないだけ。
剣を打ち合わせる音があちこちから聞こえてきて、なおかつ鍔迫り合いによる風圧もこちらまで届いているけれど、姿は見えない。たまーに見えたとしてもそれは全部残像。
「グライドと全く同じ速さが出せるのかよ……それ以外で上回ってくると思ってたんだが……」
「……お二人とも、見えます? 戦ってる二人の姿」
「いや、全然見えね」
「俺にも見えないよ。残像がちらほらとだけ。もう何が何だか」
ガーベラさんとランスロットさんも私と同じ意見なのね。これじゃあどっちが優勢かもわからないわ。
ちなみにリンネちゃんは流石に追えているみたい。眼球が目まぐるしく動いてる。瞬きすらしていない。ロモンちゃんとケルくんは私達と同様に全くわからないみたいだけど。あとでどんな感じだったかリンネちゃんに訊かないとね。
……ドンっと唐突に大きな音、そして火花が上がった。おそらく今使われたのは爆発魔法のエクスプロージョン。お父さんはリンネちゃんと違ってそこまで魔法を使えるわけじゃないからきっとナイトさんが放ったのでしょう。
それ以降はずっとどこかで爆発が続いている。もしかしたら斬撃に爆発を載せているのかも知れない。命名するとしたら爆裂斬……みたいな? あちこちで爆発するものだから屋内なのにすごく風が舞う。到底、剣術の戦いをしているとは思えない。
「ん、そろそろ終わるよ」
「まだ二分も経ってませんよ……?」
ガーベラさんが終わると言った。持ち前の勘でこの先を見たのでしょう。そしてその通りとなった。あれほど目まぐるしく動いていた二人はピタリと止まり、お父さんが全身傷だらけで地面に片膝をつき、ナイトさんは片腕を抑えて深呼吸をしていた。
そんな二人に王様が声をかける。
「終わったの? ナイトさんの勝ち?」
「……恥ずかしながら、私の敗北です」
「ははは、ここまで楽しかったのは非常に久方ぶりだよ」
「そっか。いやぁ……もう何が何だか、すごい戦いだったよ」
私は二人に駆け寄って回復を施した。お父さんは確かに傷だらけだったけど、深いものは一箇所しかなかった。多分これが決着の決め手となったのでしょう。ナイトさんもよくみると細かい傷はたくさんあった。ただ、まともなダメージは抑えてる片腕の傷のみのよう。
「すまないね、アイリス」
「ありがとう、アイリスちゃん」
「……あの、全然お二人の戦い見えなかったのですが……」
「ははは、そりゃそうだろうね。グライドくんはともかく、僕の動きはまず普通の生き物に見えるものじゃない」
「……その通りだ。私にもほとんど見えなかった」
「ほとんど……ね。でも僕の攻撃に反応し、僕に傷を負わせるくらいには見えていた。こんな人間は初めてだよ。本当はあり得ない。もはや人間離れしてるといっても過言じゃないね。勝ったのは僕だけど、すごいのはこっちの方だよ」
「いえいえ……」
つまり、リンネちゃんやお父さんよりもナイトさんの方が早く動けるということかしら? それが本当ならナイトさんの動きは光速に近いと言える。でもなんか違う気がするのよね。
リンネちゃんもお父さんも、二人とも魔力を身体中に循環させて衝撃に耐えられるだけ肉体を強化しながら速く動いてる。実はあの二人の高速移動は半ば、魔法を使いながら動いているのに近い。慣れていたとしても多少なりとも疲れの色はどこかに見えるもの。でもナイトさんはその疲れが見えない。となると、ナイトさんの光速移動は全く別のものだと考えるべきなのかな。
「あの、もしかしてナイトさんのはお父さんとはまた別の移動方法ですか?」
「流石に頭のいいアイリスちゃんは分かっちゃうか。その通りだよ。グライドくんのは身体能力と魔力の掛け合わせによるもの。僕のは魔法に近い特技だよ。自分以外の全ての動きをゆっくりにするんだ。止まって見えるほどにね」
「そ、そんなことが……!」
「だからね、周りが止まって見える中でグライドくんだけ普通に動いてるんだもの、内心びびったよ。噂には聞いてたけどこれほどとはね。だから思わず純粋な剣術以外も使っちゃった」
今の話を王様もきちんと聞いていたのか、お父さんとナイトさんをみて目を輝かせている。新しいお洋服を買ってもらった女の子みたいな顔。とても興奮してるみたい。
「すごいよ! すごいよ! 流石はSSランク極至種だね! むしろグライドもよくここまで食い下がれたよ。僕はとーっても嬉しい!」
「では、手筈通り僕はこの作戦に参加しますね」
「よろしくね! ナイトさん!」
「……え? 王様、少しお待ちください」
「なに、どしたの?」
お父さんが冷や汗をかいてる。ああ、もしかしてナイトさんが魔物だなんて知らなかったのかしら。私たちも最初は気がつかなかったし、当然よね。
「……えっと、ナイトさんは……」
「あれ、前々から知り合いだったみたいなのに、グライドくん、知らなかったの? ナイトさんは半魔半人だよ! ねっ!」
「はい。僕はボーンナイトブレイブ。アンデット系のSSランク極至種。……ジーゼフは教えてなかったんだね」
「えっと……」
グライドさんはおじいさんの方をみて、ナイトさんはおじいさんを手招きした。おじいさんは微笑みながら前に出てくる。それにつられてお母さんまで慌てた様子で出てきた。
「すまんな、グライドくん。彼とグライドくんはノアとの結婚式で知り合ったきりじゃったし、別にそこまで言う必要ないと思っておったのじゃよ。ほっほっほ」
「……お父さん、私も知らなかったんだけど。でもアイリスちゃんは知ってるみたいよ……?」
「アイリスちゃんと双子ちゃんには僕から正体を明かしたからね。……なに、ノアちゃんとグライドくんを除け者にしたわけじゃないよ。アイリスちゃんは僕と同類だから、双子ちゃんはアイリスちゃんと一緒に居たから、王様には僕がこれに参戦する以上必要だったから教えただけさ。本来はこんな易々と正体を明かしたりしないんだ」
「と、言うわけじゃよ。二人とも悪く思わんでくれ」
「昔から極稀にうちに来てたこの方が、あの伝説の存在だなんて思わなかったわ……」
もちろんそう言うわけだから、この場にいるほとんどの人が今、ナイトさんの正体について知ったわけね。ランスロットさんも、ペリドットさんも、タイガーアイさんも、それ以外の人たちもみんな酷く驚いている様子。そりゃそうよね、ずっと、一般に普及するくらい伝説の極至種として語り継がれた存在だもの。言うなれば歴史上の偉人が目の前にいるようなものね。
私も極至種なんだけど、みんなの日常に溶け込みすぎてナイトさんほどの扱いは最近受けないわね、そういえば。それだけでちやほやされてた数ヶ月前が懐かしい。私的には今の方が断然暮らし易いからいいけど。
「よし、これで僕の確認したいものは一通り確認できたかな! ロモンちゃんとリンネちゃんの実力も確認したいけど、それはこのお城で訓練してもらってる間に見ればいいかな」
「私はみなくてよろしいのですか?」
試合を締めた王様に私は思わずそう訊いた。王様は少し考え込んでから私に諭すように話し始めた。
「本当はこのあとペリドットちゃんあたりと戦ってみて欲しかったけど、昨日の今日だし……ね。それにSランク極至種っていう格の大きさでどれぐらい強いかなんて予想つくから、わざわざ無理させる必要ないかなって」
「そうですか……」
「あ、リンネちゃんと言えば」
「どうしたのナイトさん」
「一つ、個人的に確認したいことが。お時間よろしいですか?」
「ん、もうお開きにするから好きにしていいよ! みんなもね、楽にしちゃってね!」
というわけで、王様による実力試験は終わった。結果的にガーベラさんもナイトさんも王様の中では十分合格みたいね。私もガーベラさんの今の実力を見れてよかったわ。できればみんなに私の実力も見て欲しかったけど……あんまりそれを主張すると、また死にたがってるとかバトルジャンキーとか言われるかも知れないし大人しく引き下がっておきましょう。
リンネちゃんに用事がある様子だったナイトさんは、実際に彼女の前までやってきた。自分の愛娘にSSランク極至種が用事だなんて何事だと言わんばかりにお父さんが先回りしてリンネちゃんの側についてる。
「……グライドくん、噂に聞いてた通り、ほんと昔のノアちゃんに対するジーゼフを見ているかのような溺愛っぷりだね」
「当然ですとも」
「まあいいや。リンネちゃん、一つ聞きたいことあるんだけど、いいかな?」
リンネちゃんは心ここに在らずと言った様子で頷いた。どうやらまださっきの試合の余韻が冷めきってないらしい。まぁ、まともに観戦できていたのはリンネちゃんだけだったものね。
「グライドくんにも半分以上見えてなかった僕の特技による動き……完全に捉えてたよね?」
「……やっぱりか」
「グライドくんも気がついてたんだ。そりゃそうか。ねぇ、リンネちゃん。使えるでしょ、僕と同じ特技」
私は耳を疑った。
そしてリンネちゃんは……キョトンとした顔で首を傾げた。
#####
次の投稿は11/11です!
まるでケルくんの日ですね。
「お手柔らかにお願いします」
お父さんとナイトさんが部屋の中央で握手した。お父さんのうやうやしさを見るに、ナイトさんのことを知ってはいるけどあまり話したことはないのかもしれない。この国最強の剣士とSSランク極至種の剣士による戦い……お金払ってもこんなのみられないわね。ちょっとワクワクする。
「おー、もう一戦余裕なくらい回復しちまった。すげぇなー」
「ありがとう、アイリス」
ガーベラさんとランスロットさんも完治させたし、これで心置きなく観戦できそう。そうだ、いつもお父さんと一緒に仕事してるランスロットさんに、この試合がどうなるか予想してみてもらおうかしら。
「ランスロットさん、この戦い、どうなると思います?」
「ああ、グライドは俺の魂のライバルだ。負けるはずがない……と、言いたいところだがぶっちゃけあのナイトって人が勝つだろうな。ありゃ無理だ」
「そこまでわかるんですか?」
「わかるよ。ジーゼフさんと同じような雰囲気だされちゃな……俺とグライド二人掛かりでも敵うかどうか」
自分の強さに自信たっぷりそうだったこの人にそこまで言わせるんだものね、ナイトさんの実力知らないけど、やっぱり相当なものなのね。私より格上な時点で当然かしら。
お父さんとナイトさんは定位置についた。王様が合図をしたら始まってしまう。ふと、同じ剣士としてどう感じてるから気になってリンネちゃんの方を見た。あの子はすごく目を輝かせながら食い入るように二人を見ている。この戦いから学び取れることは多そうね。
「じゃ……始めてね!」
王様が手を振りながらそう言った。その瞬間、お父さんとナイトさんは私たちの目の前から消え去ったの。別に透明になったわけではない。単に速すぎて目で追えないだけ。
剣を打ち合わせる音があちこちから聞こえてきて、なおかつ鍔迫り合いによる風圧もこちらまで届いているけれど、姿は見えない。たまーに見えたとしてもそれは全部残像。
「グライドと全く同じ速さが出せるのかよ……それ以外で上回ってくると思ってたんだが……」
「……お二人とも、見えます? 戦ってる二人の姿」
「いや、全然見えね」
「俺にも見えないよ。残像がちらほらとだけ。もう何が何だか」
ガーベラさんとランスロットさんも私と同じ意見なのね。これじゃあどっちが優勢かもわからないわ。
ちなみにリンネちゃんは流石に追えているみたい。眼球が目まぐるしく動いてる。瞬きすらしていない。ロモンちゃんとケルくんは私達と同様に全くわからないみたいだけど。あとでどんな感じだったかリンネちゃんに訊かないとね。
……ドンっと唐突に大きな音、そして火花が上がった。おそらく今使われたのは爆発魔法のエクスプロージョン。お父さんはリンネちゃんと違ってそこまで魔法を使えるわけじゃないからきっとナイトさんが放ったのでしょう。
それ以降はずっとどこかで爆発が続いている。もしかしたら斬撃に爆発を載せているのかも知れない。命名するとしたら爆裂斬……みたいな? あちこちで爆発するものだから屋内なのにすごく風が舞う。到底、剣術の戦いをしているとは思えない。
「ん、そろそろ終わるよ」
「まだ二分も経ってませんよ……?」
ガーベラさんが終わると言った。持ち前の勘でこの先を見たのでしょう。そしてその通りとなった。あれほど目まぐるしく動いていた二人はピタリと止まり、お父さんが全身傷だらけで地面に片膝をつき、ナイトさんは片腕を抑えて深呼吸をしていた。
そんな二人に王様が声をかける。
「終わったの? ナイトさんの勝ち?」
「……恥ずかしながら、私の敗北です」
「ははは、ここまで楽しかったのは非常に久方ぶりだよ」
「そっか。いやぁ……もう何が何だか、すごい戦いだったよ」
私は二人に駆け寄って回復を施した。お父さんは確かに傷だらけだったけど、深いものは一箇所しかなかった。多分これが決着の決め手となったのでしょう。ナイトさんもよくみると細かい傷はたくさんあった。ただ、まともなダメージは抑えてる片腕の傷のみのよう。
「すまないね、アイリス」
「ありがとう、アイリスちゃん」
「……あの、全然お二人の戦い見えなかったのですが……」
「ははは、そりゃそうだろうね。グライドくんはともかく、僕の動きはまず普通の生き物に見えるものじゃない」
「……その通りだ。私にもほとんど見えなかった」
「ほとんど……ね。でも僕の攻撃に反応し、僕に傷を負わせるくらいには見えていた。こんな人間は初めてだよ。本当はあり得ない。もはや人間離れしてるといっても過言じゃないね。勝ったのは僕だけど、すごいのはこっちの方だよ」
「いえいえ……」
つまり、リンネちゃんやお父さんよりもナイトさんの方が早く動けるということかしら? それが本当ならナイトさんの動きは光速に近いと言える。でもなんか違う気がするのよね。
リンネちゃんもお父さんも、二人とも魔力を身体中に循環させて衝撃に耐えられるだけ肉体を強化しながら速く動いてる。実はあの二人の高速移動は半ば、魔法を使いながら動いているのに近い。慣れていたとしても多少なりとも疲れの色はどこかに見えるもの。でもナイトさんはその疲れが見えない。となると、ナイトさんの光速移動は全く別のものだと考えるべきなのかな。
「あの、もしかしてナイトさんのはお父さんとはまた別の移動方法ですか?」
「流石に頭のいいアイリスちゃんは分かっちゃうか。その通りだよ。グライドくんのは身体能力と魔力の掛け合わせによるもの。僕のは魔法に近い特技だよ。自分以外の全ての動きをゆっくりにするんだ。止まって見えるほどにね」
「そ、そんなことが……!」
「だからね、周りが止まって見える中でグライドくんだけ普通に動いてるんだもの、内心びびったよ。噂には聞いてたけどこれほどとはね。だから思わず純粋な剣術以外も使っちゃった」
今の話を王様もきちんと聞いていたのか、お父さんとナイトさんをみて目を輝かせている。新しいお洋服を買ってもらった女の子みたいな顔。とても興奮してるみたい。
「すごいよ! すごいよ! 流石はSSランク極至種だね! むしろグライドもよくここまで食い下がれたよ。僕はとーっても嬉しい!」
「では、手筈通り僕はこの作戦に参加しますね」
「よろしくね! ナイトさん!」
「……え? 王様、少しお待ちください」
「なに、どしたの?」
お父さんが冷や汗をかいてる。ああ、もしかしてナイトさんが魔物だなんて知らなかったのかしら。私たちも最初は気がつかなかったし、当然よね。
「……えっと、ナイトさんは……」
「あれ、前々から知り合いだったみたいなのに、グライドくん、知らなかったの? ナイトさんは半魔半人だよ! ねっ!」
「はい。僕はボーンナイトブレイブ。アンデット系のSSランク極至種。……ジーゼフは教えてなかったんだね」
「えっと……」
グライドさんはおじいさんの方をみて、ナイトさんはおじいさんを手招きした。おじいさんは微笑みながら前に出てくる。それにつられてお母さんまで慌てた様子で出てきた。
「すまんな、グライドくん。彼とグライドくんはノアとの結婚式で知り合ったきりじゃったし、別にそこまで言う必要ないと思っておったのじゃよ。ほっほっほ」
「……お父さん、私も知らなかったんだけど。でもアイリスちゃんは知ってるみたいよ……?」
「アイリスちゃんと双子ちゃんには僕から正体を明かしたからね。……なに、ノアちゃんとグライドくんを除け者にしたわけじゃないよ。アイリスちゃんは僕と同類だから、双子ちゃんはアイリスちゃんと一緒に居たから、王様には僕がこれに参戦する以上必要だったから教えただけさ。本来はこんな易々と正体を明かしたりしないんだ」
「と、言うわけじゃよ。二人とも悪く思わんでくれ」
「昔から極稀にうちに来てたこの方が、あの伝説の存在だなんて思わなかったわ……」
もちろんそう言うわけだから、この場にいるほとんどの人が今、ナイトさんの正体について知ったわけね。ランスロットさんも、ペリドットさんも、タイガーアイさんも、それ以外の人たちもみんな酷く驚いている様子。そりゃそうよね、ずっと、一般に普及するくらい伝説の極至種として語り継がれた存在だもの。言うなれば歴史上の偉人が目の前にいるようなものね。
私も極至種なんだけど、みんなの日常に溶け込みすぎてナイトさんほどの扱いは最近受けないわね、そういえば。それだけでちやほやされてた数ヶ月前が懐かしい。私的には今の方が断然暮らし易いからいいけど。
「よし、これで僕の確認したいものは一通り確認できたかな! ロモンちゃんとリンネちゃんの実力も確認したいけど、それはこのお城で訓練してもらってる間に見ればいいかな」
「私はみなくてよろしいのですか?」
試合を締めた王様に私は思わずそう訊いた。王様は少し考え込んでから私に諭すように話し始めた。
「本当はこのあとペリドットちゃんあたりと戦ってみて欲しかったけど、昨日の今日だし……ね。それにSランク極至種っていう格の大きさでどれぐらい強いかなんて予想つくから、わざわざ無理させる必要ないかなって」
「そうですか……」
「あ、リンネちゃんと言えば」
「どうしたのナイトさん」
「一つ、個人的に確認したいことが。お時間よろしいですか?」
「ん、もうお開きにするから好きにしていいよ! みんなもね、楽にしちゃってね!」
というわけで、王様による実力試験は終わった。結果的にガーベラさんもナイトさんも王様の中では十分合格みたいね。私もガーベラさんの今の実力を見れてよかったわ。できればみんなに私の実力も見て欲しかったけど……あんまりそれを主張すると、また死にたがってるとかバトルジャンキーとか言われるかも知れないし大人しく引き下がっておきましょう。
リンネちゃんに用事がある様子だったナイトさんは、実際に彼女の前までやってきた。自分の愛娘にSSランク極至種が用事だなんて何事だと言わんばかりにお父さんが先回りしてリンネちゃんの側についてる。
「……グライドくん、噂に聞いてた通り、ほんと昔のノアちゃんに対するジーゼフを見ているかのような溺愛っぷりだね」
「当然ですとも」
「まあいいや。リンネちゃん、一つ聞きたいことあるんだけど、いいかな?」
リンネちゃんは心ここに在らずと言った様子で頷いた。どうやらまださっきの試合の余韻が冷めきってないらしい。まぁ、まともに観戦できていたのはリンネちゃんだけだったものね。
「グライドくんにも半分以上見えてなかった僕の特技による動き……完全に捉えてたよね?」
「……やっぱりか」
「グライドくんも気がついてたんだ。そりゃそうか。ねぇ、リンネちゃん。使えるでしょ、僕と同じ特技」
私は耳を疑った。
そしてリンネちゃんは……キョトンとした顔で首を傾げた。
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