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92話 お父様vs.毒蛇王 でございます!

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 赤い液体と数枚の鱗が私達の元まで飛んできた。
 サナトスファビドの血液だ。
 …………何かに使えるかも知れないし、鱗は取っておこう。


【ッ!! 見え____】


 次の言葉を言う前に、サナトスファビドはまた斬られる。
 …お父さんの姿が全く見えない。普段、リンネちゃんと訓練してる最中に生き物離れした速さを見ている私達だけれど、それでもお父さんが目で追えなかった。
 透明になってるんじゃないかって言うくらい。

 正直、加担する暇もないよ。


【シャラァッ このやろ____】


 サナトスファビドが斬られまくっている最中、闇雲に魔法を唱えだした。
 主に、強力な闇土魔法や闇水魔法が飛んでくるけれど、そのほとんどをお父さんは斬り落としてるみたいだった。
 見えないからはっきりとはわからないけれど。

 難なくお父さんは回避や反撃ができてるし、私は闇氷魔法で壁を作ったりして耐え忍ぶから魔法攻撃はほぼ無意味なものになってるね。

 お父さんによって闇土魔法が跳ね返されたのが顔に当たったのか、サナトスファビドが頭から態勢を崩した。
 折れた牙が1本、こちらまで飛んでくる。

 ………これは両親を殺された、ジエダちゃんに渡そう。


【ぐうっ】


 魔法が無意味だとわかったのか、サナトスファビドは魔法を打つのを辞め、応戦するように尻尾を振り回しだした。けれども当たらない。全くかすりもしない。
 私の補助魔法がフルでかかってるとはいえ、Sランクの素早さをここまで圧倒できることに驚き。

 素の速さがめちゃくちゃ高くないとこんなに差ができないと思う。
 
 しばらくして、お父さんが与えた斬撃の数が100を超えた頃に、サナトスファビドの目が怪しく光り始めた。
 完全にキれた様子だと見て取れるね。


【チョウシに…のるなクソガァァァァァァッ!!】


 そう言ったかと思ったら、サナトスファビドの身体を中心に発せられる毒々しい紫色の輪っか状の光線のような波。
 受けたら私もやばいと、雰囲気がそう言ってる。

 私は自分の足の裏を爆発させて空を飛び、それを回避した。どうやらお父さんも空中を蹴り上げて飛んで、それをかわしたみたいだ。

 私達が回避した波は氷の壁に当たると、それを真紫色に変色させた。変色した氷の壁は、まるで、腐食した肉のように朽ちてゆく。
 仮にミスリルの身体である私でもああなるとしたら…あの技はヤバイ。回避することができてよかった。

 お父さんが大勢を立て直すために、私達の元に戻ってくる。私はとりあえずお父さんにリペアムを唱えておく。


「今のは…ヤバかったな。あの様子を見る限りじゃ、もうしばらくは撃てないだろうけど」


 お父さんの言う通り、サナトスファビドは息を切らしたようにぐったりしていた。
 即死級の技だもの、ものすごくMPを使うに違いない。


「思ったより頑丈だけど…アイリスちゃん、殺さないようにするのは少し難しいな。技を10発くらい撃ちこんだら倒せてしまいそうだ


 涼しげな顔でお父さんはそう言った。
 強すぎだろうに、この人は。
 補助魔法がなくても普通に行けたんじゃない?
 仮に敵対したとして、今の状態のお父さんに勝てる気がしない。



【お父さん、ものすごくかっこいいよ! アイリスちゃんの作戦、がんばってね!】
「そうかロモン、ふふふ、お父さん頑張っちゃうぞー!」


 娘に応援されて、嬉しそうにするお父さん。
 こんな余裕があるなんて…。将来、リンネちゃんもここまで強くなるかしら? なれるといいね。

 
【テメェラァァァァァァァァッ! オレを、オレをなめるんじゃねェェェェェェェェッ!】


 その念話により、サナトスファビドに注目する。
  
 サナトスファビドは明らかに何かをしていた。
 蛇の頭の方に裂け目ができたと思ったら、それが身体全体に広がっていく。
 ……脱皮だ、脱皮をしてるらしい。

 脱皮をし終え、皮を脱ぎ捨てたサナトスファビドには、傷がどこにも無かった。
 脱皮をすると全回復する、そういう特技だ、これ。


【はぁ…はぁ…。次はオレのバンだろ?】


 そう言うとサナトスファビドはまた、先ほどの紫色の輪っかの波みたいなのを撃ってきた。
 お父さんは空を蹴って回避する。
 私は、さっきはちょっとスレッスレだったから、今度は瞬間的に幼体化し、さらにしゃがんで回避。

 だけれども、今度は、私達が飛ぶことを想定したのか、途中で上に向かい始めた。
 その輪を見た瞬間に上に逃げたお父さんに、それが当たりそうになる。

 しかしお父さんはさらに空を蹴り、空に飛んだ。


【くそっ…】


 空中に居るお父さんに向かって、サナトスファビドはものすごい量の闇土魔法を発射しはじめるの。
 無論、お父さんは簡単にそれらを切り落としたり、回避したりし、一瞬でサナトスファビドの目の前までやってきた。


「そろそろ、終わりだな」


 そう言うとお父さんはサナトスファビドに向かって剣を振った。
 ガキン、という、刃物と刃物がぶつかったような音が響く。


「残念だったなぁ…騎士団長サマァ」


 いつの間にか…いや、多分、魔法を放っていた最中にサナトスファビドはギフトへと変化していおり、あの私を腐らせることが出来る2刀の短刀で、お父さんの剣を防いでいた。


「ここからは、オレの________」


 それを言い切る前に、お父さんはまた消える。
 今度はギフトの真後ろから出現し、背中を刺していた。


「ガハッ…!」


 サナトスファビドだったときより防御が低くなってるのか、この一撃で血反吐を吐くギフト。
 この姿ならお父さんについてけると思ったみたいだけど、今のお父さんにはやっぱり叶わないみたい。


「どうした? その程度か、魔王の幹部が」
「さっきから…調子に…ノリすきだッ!」

 
 ギフトは短刀を振り回す。無論、お父さんはそれを難なく回避し、反撃をした。
 そのカウンターは、なんと、ギフトに防がれてしまう。


「ハハッ…これでやっと攻撃が入る…! 一撃でもはいりゃあ、オレの勝ち____」


 それを言い終わる前に、お父さんは攻撃を仕掛け始める。ものすごく素早い連続の斬撃だよ。
 普通の人が見たら技にしか見えないかもだけど、何も使ってない、お父さん。


「お…ちょま…くぅ…」


 ギフトは数撃は対処できてるみたい。
 だけど、受けてる攻撃の方が多い。


「この…やろ…」


 短刀を振るうも、お父さんにかすりもしない。


「……くそ」


 魔法を放ってみるも、全て破られる。


「…」


 身体に無数の切り傷が何個も何十個も増えてゆく。
 ついに、ギフトは斬られながらも大声で叫び始めた。


「クソガァァァァァァッ! オレは魔王様に忠誠を誓う、幹部が一人、毒蛇王ギフトォォォォッ! こんなところで負けてたまるかヨォォォォォォォッ」


 そんな叫びとともに、ギフトの体のあの、黒い紋様が蛇のように唸り、身体中に増えてゆく。
 目は赤く光り、ところどころ黒紫色の魔流の気にも似た靄がかかっている。

 これはヤバイ雰囲気。
 
 そんは雰囲気を醸し出すギフトに、お父さんは攻撃を続けた。


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