私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

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331話 最初の魔王軍幹部でございます!

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「一気に行くよ、アイリスちゃん、ケル!」
【【リスシャイラム!】】
「ベス、私たちも。五重で行くわよ」
【イイネ! リスファイラムフィフス!】
「クロや。ワシらで半分は削るつもりでいくぞ」
【半分? いや、全滅させてやろう。クリスタル・リスドゴドラム!】
「あら~~、魔物使いだけにイイ格好はさせられないわ~~。連続魔法陣……二十連リスビュウラム!」
「んだよ、魔法ばっかじゃねぇか! 肉体使え肉体! おらっ、サミダレェ!」
「……天命の矢!」


 それぞれの得意技を撃って、撃って、撃ちまくる。何千体も出現していた魔王強化された魔物達が次々と消滅していく。開幕から包囲されておされ気味だったこの状況。剣士三人による内側から出現する魔物の殲滅と合わさって目に見えてわかるほど一気に打開されていっている。


「すげぇ……これがルビィ王に選ばれた奴らの力……!」
「格が違うっ!」
「この国は全世界に友好的と言っておきながら、実際は個人で軍一つに匹敵する実力者の保有数世界一だって噂は、本当だったようだな」
「ひ、必要だったのかね、アタイ達」


 私たちが一斉攻撃を始めてから5分くらいで勇者軍の内外どちらからも魔物が出現しなくなった。おそらく魔王軍が用意したものは全滅したのでしょう。正確に何体倒したかはわからないけど、一つか二つの地域にいる魔物まるごと滅するくらいはしたと思う。


「しかし可哀想じゃのう。無理やり強化させられ、操られ、そして倒される。魔物使いとして操られた魔物達には同情しかせんわい……」
「ま、これは戦争だからね。ある意味仕方ないさ」
「おお、ナイト達も戻ってきたか。無事なようじゃな。流石じゃの」


 剣士三人がいつのまにか私たちの元に出現した。味方を傷つけないように合間を走り回って魔物だけ撃破する。そんな面倒なことをやってのけたのに三人とも疲れたような顔を一切せずケロリとしている様子。出撃する前にナイトさんが言っていたように、本当なら誰か一人でも十分な対処を三人でやったからかもしれない。


「となると、いよいよ突撃か。魔王の住処ってどうなってんだろうな」
「どうやって入ったらいいのかしら~? ケルくん、わからない?」
【こう……なんかぱかっと地面が開くんだゾ。ぱかっと。内側からしか開けないようにできてるみたいだったから、地面に穴開けた方が多分早いんだゾ】
「ぱかっと、って……あんな感じ?」


 リンネちゃんが指差した方向、焼かれた貝が殻を開くかのように地面が迫り上がっていた。なるほど、あれがぱかっと、ね。でもなんで自分から入り口を開けたのかしら? 罠ってことよね? ……こちらとしては手間が省けたから良いのだけど。


【あれは確実になんかくるゾ】
「この感じは……アイツか。みんな、今から息を吸っちゃダメだ!!」
「い、息を!?」


 ナイトさんが大声で慌ててみんなに呼びかけた瞬間、魔王の拠点の入り口から紫色をした霧のようなものがかなり早いスピードで上がってきた。あれは明らかに猛毒。普通の人間が吸い込んだら確実に死んでしまうほどの……!


「ぐ、ぐあああああ!!」
「ごべぇああ!」


 前方から呻き声が上がり始める。どっちみちゴーレムである私には毒は効かないんだから、早く前の方に行って毒にかかった人たちを回復して回らないと。


【ヒャハハハハハハハ! いい絶望の音色だぜ! お次は毒の雨と行こうじゃねぇか! ポイズンレイン!】
「この口調は!?」


 わざわざ煽るように私たち全体に対して発せられた次に起こす行動を示した念話。その念話の主が魔法を発したと同時に霧の一部が空へ昇って紫色の雲を作った。そこから紫色の雨が降り注いでくる。
 念話に真っ先に反応したのはお父さん。お父さん同様、私もこの相手に覚えがある。サナトスファビド……私達が一番初めに戦った魔王軍幹部。あの魔物で間違いない。
 気がつけば辺りに毒が充満しきってしまっている。ペリドットさんが雲を風魔法で吹き飛ばそうとするもなぜか効いていない。


「ど、どうして効かないのかしら~……うっ!? うぐっ……かはっ……はぁ……はぁ……き、きついわ~~」
「ペリドットさん!?」
「こ、こりゃ効くぜ……ぐおっ……はは、毒に対する耐性はオレもペリドットも持ってるはずなんだがな……」
「ランスロットさんまで……」
「やられた。魔王軍幹部のサナトスファビドはとにかく相手を毒状態にすることに特化している! 透明な毒、何者の干渉も受けない毒! 本気を出した奴はありとあらゆる毒を使う。僕もだいぶ苦しめられたんだ……」


 僕もだいぶ苦しめられた? ナイトさんの言ってることがよくわかんないけど、サナトスファビドに関してあの勇者が残してくれた魔王軍幹部についての記述と同等の知識があるみたい。いや、ナイトさんは歴史ある魔物だし過去にどこかで対峙したのかしらね?
 まあ、今はいいわそんな細かいこと。おそらくほぼ全員が既に猛毒にかかっており、勇者軍幹部の面々も少なからずダメージを受けている。特にひどいのが……。


「ああ、あぅ……あああああああああっ! う……あ……あっ」
【ぐ……おお……い、今まで一度も……ぐっ……毒を食らったことがないのが……仇に……なったゾ。お、オイラとロモン……がふっ……お、オイラは……超越種だからいくらか……マシだけど……ろ、ロモン……!】
「あ、あああ、あああああああ!」


 そう、ロモンちゃんとケルくんは今まで一度も毒状態になったことがなく、戦闘経験も浅い。だからこう言った状態異常に対する耐性が低い。なおかつロモンちゃんの場合は種族による耐性強化なんてものもないから完全にこの毒のダメージを直に受けてしまっている。まるであの日のリンネちゃんを彷彿させるような身悶え方。悲惨としか言いようがない。
 ……痛いのはわかるけど、ロモンちゃんだけを痛みがなくなるくらい集中治療している余裕はない。私は今ここにいる味方全員を死なないように連続でおじいさん、お母さんと一緒に連続で回復し続けている。毒が降り続けているため手を止める隙なんてない。他にできることといえば状況把握くらい……!


【あひゃひゃひゃひゃ! なんていい絶叫なんだ! ここからでも少女の悲鳴が聞こえるぜ! だが……死人がいねぇのか。わかるぜ、わかる。あのゴーレムが居やがるんだろ!? あのメス人形の仕業だよナァ!?】


 穴から巨大な蛇が姿を現した。毒の発祥源、サナトスファビド本人。おそらくは私が回復しまくってるのを邪魔するために出てきた。
 しかしサナトスファビドってこんなに強かったかしら? いや、そもそもが対群向けに特化した能力だったのかもしれない。整った状況下で本領発揮してるってことね。
 となると、私達はまんまと一杯食わされたのかも。雑魚の大群で一旦油断させてから強力な毒で一網打尽。相手が一つの大きな組織だってことを思い知らされるわ。


「私とアイリスちゃんで封印したのに蘇りやがって……! ワタシが行く! 娘二人とも苦しめた奴を! オレは、俺は絶対に……はぁ……はぁ……絶対に許さん! 殺す! あいつをころ……はぁ……殺す!」


 お父さんが血を吐きながら見たこともない鬼の形相でサナトスファビドがいる方み向かって吠えている。あの頃と違って戦う前からお父さんも毒を食らってしまっている。自慢の俊敏さが鈍っている可能性が大きい。
 そんなお父さんを見て、ナイトさんが彼の肩を優しく叩いた。


「落ち着きなよグライドくん。君は吐血までしてるじゃないか。ここは毒が効かない僕でいく」
「……ううん、ぼくに行かせて! ナイトさんは回復に協力してあげてよ。普通の人間のぼくより、極至種のナイトさんの回復魔法の方がみんなに効きそうだし」


 なんと、名乗りをあげたのはリンネちゃんだった。毒の霧の中で普通に呼吸し、雨を浴びてもまったく動じていない。まるで完全に毒が効いていない様子。これは一体?


「そうだ、聞いた話だとたしか君はサナトスファビドの最大の技から生還して見せたんだったね。アイリスちゃんの頑張りで。まさか……あれ以下の毒に耐性ができたのかい」
「そうゆうこと! ……それじゃあ、行ってくるね。それまで痛いの耐えて、頑張ってロモン」


 まさかあの必ず死ぬと言われている毒から生き返ったことによって毒の耐性がついていたとは……。剣術と魔法以外の特技のことはあんまり話す機会がなかったから気がつかなかったわ。思えばたしかに、あれからリンネちゃんは日常でも一回もお腹を下したりはしなかった。
 リンネちゃんは苦しんでいるロモンちゃんを抱き上げるとほっぺたに一回キスをした。そしてその次の瞬間、私たちの目の前から消え去り、サナトスファビドの目の前に現れる。


【オオっ!? オレ様に挑戦者か! この毒を耐えながらよくここまでやってきたじゃねーか! 褒めてやるぜ、ヒャハハハ! だが、どんな強い奴だろうとオレ様がヒト噛みすれば死に……って、オマエ見覚えあるぞ! 現代でオレ様の毒牙にかけてやったメス人間の中で顔も、家族から採取できた絶望も一級品だったガキじゃねーか! 魔王様曰く、オレの集めた絶望はかなり復活の役に_____】
「戦ってる最中に口数が多いのは良くないと思うよ? ……もう斬っちゃったもん」
【ヒャハハハァ! 笑わせる! 去年の時点でオレ様に対してなにもできなかったガ、キ、がぁ……あ……れ、れ?】
「それだけの時間があれば、十分強くなってるって。じゃあね」


 リンネちゃんがサナトスファビドに向かって背を向けたその瞬間、白い光と黒い光が何重にも交差する。一瞬の間に、何百回……何千回切り刻んだのか。脱皮で回復する暇もなく、尻尾の先端から消滅するかのように微塵切りになっていくサナトスファビド。私たちの元に彼女が戻ってくる頃には跡形もなくなってしまっていた。そして、毒の霧も雨も、見えない毒とやらも全て消え去る。


「ただいま。これでもう毒になり続けることはないよね? もう一度回復させちゃったらそれで終わりでしょ?」
【そ、その通りです……】
「ははは、まさかここまでとはね……」
「すごいぞー! リンネ!」
「えへへへへ」


 まさかリンネちゃんの本気の本気がここまでとは。S級相当に強くなってから殺す気で全力を出すのはおそらく初めて。
 さっきのは明らかに一匹に対してはオーバーすぎる攻撃だっから、Sランク超越種の魔物を三匹以上相手しても相性次第なら一人で勝てるはず。それほどの力を持っている。……凄まじいわね。

 私たちもすぐに全員治療し終え、それぞれ戦闘に復帰できる状態になった。毒には苦しめられたけど大群を殲滅してからサナトスファビドが倒されるまでは実はそう時間自体はかかっていない。
 結果だけを見れば少しダメージを負った程度で、魔王へ突入する入り口を開けてもらえたってことになる。
 私達は進軍した。




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