私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

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198話 標的発見と挑発でございます!

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「あっ……」
「ヤバっ…見つかった……!」


 中性的な顔の人物が、私たちに見つかったことに驚いている。目は赤く、髪の毛は短くて黒い。
 そんな服装に加えて黒いローブを羽織っているため、この薄暗い森の中で視覚情報からはまず見つからないでしょう。
 その上、一応大探知をつけているにもかかわらず、彼のことは表示されていない。


「と、捕らえろっ!!」
「私は団長に連絡を!」
「……大人しく捕まるわけないだろ。じゃあな!」


 彼は人差し指と中指を立て、遠くの木にそれを向けた。
 同時に指の間から白い糸が発射される。……なるほど、たしかに蜘蛛ね、間違いない。
 まだ半魔半人っぽい箇所は見つけてないけど、そんな特技使われたら断定するしかないじゃない。
 その白糸が放った場所に絡まると、彼はターザンのように木から木へと移ってしまう。


「そりゃ逃げるよな! くそっ…あんな逃げ方どうすれば…!」
「ぼくに任せて。……アイリスちゃん」
「はい」


 私はリンネちゃんに最大限までフェルオール、全補助魔法を重ねがけした。一瞬でみんなの目の前からリンネちゃんも消える。
 

「早く追いましょう」
「う、うん。……団長がもうやってきたのかと思ったわ」
「娘なんだもの、団長と同じようなスピードが出せてもおかしくないわ。とにかく追いましょう」


 大探知でリンネちゃんを見る限りでは、どうやら100メートル先で足止めに成功したみたいだった。
 その程度の距離だから、私たちもすぐに追いつく。


「チッ、剣士かと思ったら最上級魔法使って来やがって……!」


 なるほど、周りの木が凍りついてる。 
 きっとリンネちゃんのことだから先回りできてしまって、次に飛び移りそうな木の全てを魔法で凍らせておいたってことね。そうして滑らせて落とせた、と。


「はぁ…すごいな……」
「剣じゃなくて魔法もここまで……! 剣と魔法の両立ってことなら、既に団長以上ね」
「5人で取り囲みましょう」


 それぞれ散らばって、彼の行く手を阻むように囲んだ。
 ケル君はロモンちゃんと一緒。
 牙を剥きたてて威嚇してる。


「さあ、観念しな!」
「……バカなの? このボクに君達程度でどうにかできるとでも? あの騎士団長を呼ばれたら厄介だから逃げたけど、もうこうなったらお前たち全員殺して突破する」
「へっ、やれるもんならやってみ………」
「あーっと、その前にいくつか尋ねたいことがあるんですけど、よろしいですか?」


 相手は確実にSランク。リンネちゃんにかなり余裕を持って追いつかれたってことは、素早さはサナトスファビドほどじゃないはずだけど、強いことには変わりはない。
 ならば時間稼ぎをしなければ。


「は? 答えると思ってんの?」
「そうよ、さっさと捕まえちゃいましょ」
「やっと発見できたからって焦ってはダメです。実力者の可能性が大きいので。……そうですね、質問としてはまず、貴方は騎士団に糸で奇襲をしたり、村一つを壊滅させましたよね?」
「ははっ? 何聞いてんの? あー、情報与えられてない感じ? じゃあ、違うよ」


 きょとんとした顔をした後、何言ってんのこいつ、とでも言いたげな表情を私に向けてきた。

 おそらく、彼は私たちや騎士団のどれかの部隊の動向をずっと見てきたはず。
 すぐ別の場所へ移動しなかったその理由はわからないけれど、私たちがなんでここに寄越されたかももう理解してると思う。 
 だから、「周りが自分が犯人である」という認識は全員持っていて当然だと考察していたはずなの彼は。
 情報を持っているなら、騎士団と自分しかこの森の中にいないって普通は考えるからね。
 さらに昨日のイケメンは、私たちの前にいる彼とは会いたいけど遭遇していないと言っていたし、なおさらに。
 
 となれば、彼にとってこの質問は虚をつかれたものになる。
 ここで表情一つ変えずに「違います」とでも言われれば私も戸惑ったけど「じゃあ」とか言われたらもう確信しちゃっていいわよね。
 彼は知らないだろうけれど、昨日、他の人物とも出会っちゃってるわけだから、これを聞かないと犯人だという確信が持てなかったの。
 他に潜伏してるかもしれないからね。
 ……さらに私のことを舐めさせることで、心に少し余裕を与えたはず。


「そうですか」
「騎士たちみーんな知ってることじゃないの? ……はっ、助っ人もこの程度か。知ってるよ、お前は回復役なんだろ? あの回復力には目を疑ったけど……あれかー、魔法の才能はあっても、一般教養はからっきしってことか」
「……ええ、まあ。そう考えていただければ結構です。それよりもう一つ質問しましょう。魔王って知ってますか?」
「そんなことも知らないの? 怖くてかっこいい魔物の王だよ。やっぱり人間って低脳だね。まんまとボクの罠で八つ裂きになってくれるし! 白髪、頭はバカなんだな!」


 ……魔王の幹部、そして蜘蛛であるということまではわかった。
 ちなみに私、魔物のデータはおじいさんが持っていた魔物図鑑の中なら全て把握している。 
 つまり弱点までわかるってことね。
 知識は大事。そして自分の手札を隠して相手を騙すのも大事。 
 味方の二人は私の行いに疑問を抱いてるみたいだけど、ロモンちゃん、リンネちゃん、ケル君は何も言わないで見守っていてくれてるわね。
 だから誰も私の邪魔をしたりしない。
 

「魔物の王がかっこいい……。周りの反応とは違いますね。貴方、もしや関係者ですか?」
「……流石にお前みたいな無知でも、魔王軍幹部は知ってるだろ? ボクはその一人だ! ははははは、驚いた?」


 なんにせよ、魔王軍幹部は自分が幹部であることを誇りに思うような傾向にあるから、答えを言ってくれることはわかってたけど。
 なるほど、私たちが彼を魔王軍幹部とわかってて追ってるってのは知らなかったか。
 建物の中でかわされた会話とかはわからないか、あるいは遠くの会話は聞こえないか……。

 どちらにせよ、こちら側を監視してたとして、視覚だけでしか情報を得ていないっていう可能性が出てきた。


「まあ、そんなことは知ってました」
「え、知ってたの?」
「それで、村を丸ごと潰し、騎士たちに致命傷を負わせたことで、魔王の復活に必要な絶望はどこまで得られましたか?」
「……なんでそのことを……絶望のこと……」
「そうですね、強いていうならばギフトとグラブア……とだけ」


 相変わらず味方二人はきょとんとしているが、彼にはあの二人の名前を出すのは十分効果はあったみたい。
 私を凄まじく睨んでくる。


「どういうことだ。なんで同僚の名前が出てくる」
「おや、まさかこのお二人が既に復活なされていたことをご存知ない?」
「なっ……ボクだけだと思ってたらその二人も…!」


 これはグラブアの反応を見て思ったこと。魔王の幹部同士はどうやら仲間の復活を知らないみたいなの。
 

「……二人はどうしてる?」
「……そんなことより聞いてくださいよ、なんで騎士たちや私が貴方を魔王軍幹部だと把握してると思います?」
「質問に質問で返すな! そんなの、半魔半人ってだけで予想つくだろ!」
「……残念ながら、蜘蛛の半魔半人は、あなた方が倒されてからの長年の時間の間に何人かでてきるんですよね。つまりそれだけじゃ、村を壊滅させた蜘蛛の半魔半人が魔王軍幹部であるという結論には至らないわけです。普通はね」


 唾を飲む音が聞こえたような気がする。彼の中で私の認識が変わったはずだ。
 ふふふ、私ってば普通の喧嘩だけじゃなく口の方も達者だったみたいなのよねっ。前世では。
 即興で言葉で攻めた立てる作戦を考えた割には、今の所うまくいってる。


「……じゃあその結論に至ったのは……」
「サナトスファビドのギフト、大きなカニのグラブア、その二人という前例があったから、私が国の方に助言したんです。二人と関わってますからね、私は。その上、魔物の知識などは豊富なものでして」


 大きなカニ、と、正確に名前を言わないのは私を虐めた腹いせ。そんなことは別にいいとして、彼の表情があからさまに変わってきた。


「じゃあ……二人は?」
「全て私が討伐に関わってますね。でも五体満足でここに居る。……ま、あとはわかるでしょう? 私が呼ばれた本当の理由をね」


 さて、挑発とお父さんが来るまでの時間稼ぎはこれでおしまい。



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