私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

文字の大きさ
213 / 378

211話 人生初の彼氏でございます……!

しおりを挟む
「これで……どうなんだ?」
「どうなんだって、わかるだろ、アイリスちゃんとガーベラがお付き合いするんだよ」


 私は負けを認めてしまった。
 まさか負けるだなんて思ってなかった。でも、なんだかこれで良かったような気がする。


「……あ、あのガーベラさん!」
「うん?」
「わ、私たち、お付き合いするということでいいんですよね?」
「ああ、そうだよ」


 人生(魔物生?)初めての彼氏……!
 は、初めてと言っても私はなるべく付き合い始めた人とは最後まで一緒にいたいタイプだから、最初で最後かもしれないし。そういう理念を持ってるからこそ、戦って見極めようとしたわけだけど。


「やれやれ、僕をないがしろにしてまで勝ち取った恋人なんだから、大事にしなよ、君」
「あっ……! すいません、デートのお誘いの最中にないがしろにしてしまって!」
「あー……ごめんなさい」
「いや、いいよ謝らなくて。それになんだか君に譲った方が良かった気がするんだ。いや……まてよ」


 私の首から離れ、隣に立っていたガーベラさんに、森で出会った彼はすごく近づいた。
 というかどうやって間合いを詰めたのか全くわからない。ほぼ一瞬だったわね……やっぱり相当強いんでしょう。


「念のために聞くけど、君は槍使いだよね?」
「あ、ああ、うん……その通りだけど」
「ふーん……なるほどなるほど。あ、こっちの話だから気にしないでいいよ。それじゃ、そろそろ僕は帰ろうかな」


 ガーベラさんをじっくり見てからなにかわかったような感じのそぶりを見せ、すぐに彼はこのギルドの出入り口まで進んだ。ドアの取っ手に手をかけると同時にこちらを振り向く。


「マスター、僕もここへ度々来てもいいかな? 楽しくていい人たちでいっぱいだ」
「あ? ああ、別に構わないぜ。な、みんな」
「イケメンだから私は賛成だよー」
「俺も酒飲み仲間が増えるのはいいと思うぜ」
「ありがとう……そうだ、今度会った時は僕のことは『ナイト』と呼んでくれ! じゃあね」


 お酒飲み仲間が増えちゃった。
 そして、なるほど、ナイトって名前なのね。ナイトさん……ね、口ぶりからして偽名っぽいけど、まあ呼び名ができただけでもいいでしょう。
 森の中で出会ったあの人、だなんて呼びづらいからね。


「行っちゃいましたね」
「悪いことしたな……」
「……あの、ガーベラさん?」
「なに?」

 
 少し呼んだだけなのに、ガーベラさんと私は目を合わせてしまった。ドキドキします。こ、これが付き合ってるということなのでしょうか。


「私、初めてのお付き合いなので至らないところとかあるかもしれません」
「俺だってそうだよ」
「そ、そうなんですか。意外……えっと、ふつつかものですが、末永くよろしくお願いします」
「こ、こちらこそ」


 私の頬が熱くなっているのがわかる。どうしよう……今考えてみたら、私と彼の距離近すぎるし…。
 か、彼女ってどんなんだっけ。
 お父さんとお母さんを思い出せ……そうよ、確かこんなことしてたんじゃなかったっけ?


「あ、アイリス!?」
「お、お付き合いしてる人ってこ、ここ、こんなことするんじゃないんですか?」


 私はガーベラさんの腕にしがみつく……いえ、抱きつくかな? とにかくくっついてみた。
 男の人の匂いがする……ガーベラさんの場合、毎日よくお風呂に入ってるのがわかる、かすかな石鹸の匂いもするわね。
 だめ、ちょっといきなりこれはやりすぎたかも。でもお付き合いしている人ってこんなことするものでしょう?


「があああべらああああああ!」
「うらやましすぎるぅぅぅんひいいいいい!」
「あ、あはは」
「間違ってましたかね、私?」
「いや……どうだろう」
 

 間違っているかもしれないし、もう離れちゃおうか。
 でも女の子以外の抱き心地も案外悪くないものなのね。ゴツゴツしててたくましいというか……いや、たくましさで言えば私のゴーレムの時の方が上なんだろうけど。


「どうしよう……お、お仕事終わりで、みんなに顔を見せに来ただけでしたから……こんなこと全く予想してなかったのですが」
「こっちも告白をするだなんて思ってなかったんだけどなぁ」
「慌てた感じでしたものね。……念のためにもう一度聞きますけど、私のこと好きなんですよね?」
「もちろん」


 一切戸惑うことなく、もちろんという言葉ははっきりと言ってくれた。照れる。
 な、なんにせよ、この人は私のどこを好きになってくれたのかな?


「あの……わ、私を好きになってくれたきっかけとかは……?」
「それは会ううちに、いつのまにか……だと思う。逆に聞いてもいいかな」
「ど、どうぞ」
「告白を受けてくれたってことは……多少なりとも、俺のことを気にしていてくれたってことでいいのかな? それとも、告白してきた相手にあの条件は必ず出すつもりだったとか?」


 そうよ、私だって多分ガーベラさんのことが気になってたんだと思う。ガーベラさん以外の人が私に告白してきたとしたら……普通に断っていただろうし。
 それとも友人だから抵抗がなかったのかしらね。どっちかもわからないわ。


「どうでしょう、でもガーベラさん以外なら断ってだと思います」
「聞いたか、みんな」
「なんにせよ、オレたちには未来はなかったってわけだ」
「でも俺たちさ、気がついてたんじゃないの? あの二人がいい仲になりそうだって予感はしてたでしょ」
「うむ、なぜかはわからんけどなー」


 ガーベラさんはなんだか嬉しそうに頬を掻いた。
 ああ、この人、本当に私のことが……。そっか、そうなのね。照れる。
 周りもあんな冗談言ってるし、なおさらね。


「こ、これから私たちはどうすればいいでしょうか」
「つ、付き合うのだからデートの…予定とか組んだり…?」
「デートですか」

 
 私の暇な時間っていつだろう。
 あの二人が仕事に行く予定がなければ私はいつでも大丈夫なんだけど。
 つまり、明日でもオーケーということ。
 そしてついでに、ロモンちゃんとリンネちゃんにガーベラさんと付き合い始めたという報告もしなければならない。
 そういえばあの二人、私とガーベラさんの仲をちょくちょく何か言ってきてたわね。うわぁ、なんて言われるかな。


「おい、デートつけてみようぜ」
「あんたらね、そんなことしたら二人から嫌われるよ」
「……気になるんだもんっ!」
「いい歳こいたおっさんがその言い方は流石にキモい」
「つ、つけられたりしないように、どこかでゆっくりと相談しようか」
「そ、そうですね」


 とりあえず頭が飽和していて、適切な行動をとることができない。うーんと、とりあえず私はここにきて何分経った? そう、まだ30分程度しか経ってないじゃない。
 私の…か、彼氏となったガーベラさんにどうするか相談してみましょうか、もう少しここにいるか、今日は一旦帰るか。


「どうしましょうか、あの……今日は」
「まだ、居てもいいんじゃないかな。解散になったら、少し話をしよう」


 そういうことで話は決まった。まだ飲みたりないし(ジュースが)、その方がいいかもしれない。
 その場にいるみんな、私たちが付き合い始めたことを、なんか悔しがってる人もいたけれど(多分カップルが羨ましいのでしょう)、基本的にお祝いの言葉を述べてくれた。

 まだ夢なんじゃないかと思ってる。
 とりあえず、宴会は楽しまないと。
 
 

#####

次の投稿は2/20です!
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

処理中です...