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218話 双種蜥蜴のダンジョンのボスですか!

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「流石に疲れました……」
「うん、Bランクの魔物が6連戦はきついよね」


 私一人と、ロマンちゃん、リンネちゃん、ケルくんの三人で変わりばんこに戦っていたとはいえ、それでもやっぱりくるものがある。

 このダンジョンにおいて通常に現れた最初のBランクの魔物、ハイリザードマンからずっとBランクしか出てない。流石に3戦もする頃にはケルくんも見慣れたのか、ロモンちゃんの補助・攻撃魔法両種による補助を受けながらリンネちゃんと一緒に戦ってた。


「どうする? 今日はもう帰る?」
【次でラストにするのが、オイラ、ベストだと思うんだゾ!】
「じゃあそうしましょうか」


 私たちはそのまま進む。
 ここまでで出現したのは、最初のハイリザードマン、最上級魔法の名前がついたリザード4匹、図体のデカさと体力が自慢の無属性……リザードギガントが相手だった。
 しかし今回はまた、違ったものが現れる。


「あれ……リザードマンだよね?」
「手にしてるのなにかな? あ、杖だねあれ」
「ローブみたいなのも羽織ってるね」
「……身体の色は赤色ですか。おそらく、火属性のリザードマンでしょう……」


 杖を持っててローブを羽織ってる(ように見える身体の作りをしている)のはウィザーリザードマン。
 見た目からの情報が正しいのだとすると、リスファイラムウィザーリザードマンとかいうものすごく長い名前になる。
 リザード系の魔物の属性持ちとはまるで違って、リザードマン系は知能が異常に発達してるから魔法の扱いに長けてるし普通に厄介。


「どうする?」
「安全に行くなら私でしょう」
「わかった、お願いね」


 私はゴーレムの姿に戻り、ウィザーリザードマンと対峙した。私に気がつくなり杖を向け、魔法陣を浮かべてくる。私も同時に両手から最上級魔法の水の魔法陣を発した。 
 杖を向けてきたからまっすぐ火炎放射をしてくるかと思いきや、火の玉に分裂させてのように降らせてくる。
 普通の魔法耐性が低いゴーレムならかなりマズイけれど、魔法耐性抜群の私なら逆に一気にぶつけてこなかったのは悪手。蚊に刺された程度にも感じない。
 ロモンちゃん達の方にも魔法は行くかもしれないけれど、いつも活躍してくれてるあの盾があるから大丈夫。


【今度はこちらの番ですよ!】


 向こうが放つより前に少し遅く唱えたために発現が遅かったけど、無事に最上級魔法は発せられた。
 一方の魔法陣分で作られた水の渦巻きはウィザーリザードマンを捉えつつダメージを与え、もう一方は槍のような形状となり身動きが取れない状態のヤツを余すことなく突き刺した。
 探知から反応が消え、倒したことがわかる。 


【ふう、私としたことが先に魔法を発動させてしまうとは】
「まあまあ、あんまり意味なかったし良かったじゃない!」
【そうですけどね】


 ここで帰ろうと、人に戻ってから剥がしておいた転移魔法陣を床に貼り直した。ロモンちゃんもリンネちゃんも帰る準備をし始める。しかしケルくんがその場で固まったまま動こうとしない。


「どうしました、ケルくん」
【んー、臭い的にちょっと違和感が……そうだゾ】
「ん?」
【次はボスステージっぽいゾ】
「なんでわかるんです?」
【ちょっと先からトカゲの濃い臭いがするゾ。2匹以上いるのは確か。……あと、その臭いがこもってる感じがするんだゾ。割とひらけてるこのダンジョンにしては】
「だからこの先は行き止まりだと?」


 ケル君は頷いた。
 自分の持ち前の鼻の良さと、考察によってそう結論づけたみたいね。


「どうする?」
「どうするったってお姉ちゃん、ボス直前ならなおさら帰って対策練ったりしないと」
「なら、様子見してからでも遅くないですね。ボスが私たちに気がつくギリギリまで進んで、双眼鏡でどんな魔物かだけでも確認しましょう」


 私の案が通った。
 私達三人と一匹は大隠密をしながらゆっくりと進む。やがて、ケル君の言ってた通りこのダンジョンの奥壁が見えてきた。
 前にダンジョンに潜った時と同じように広い空間となっており、その真ん中に魔物が居座っている。
 岩陰に隠れつつ、リンネちゃんが双眼鏡で覗いた。
 私達は探知でランクを確認する。


「ふむふむ……鎧を着て盾と剣を持ってる、多分リザードマンだね。馬みたいにもう一匹の魔物にまたがってる」
「反応はAランクの魔物が二体分です」
【うわぁ……厄介なんだゾ】
「じゃあアイリスちゃん、ぼくが特徴言うから、魔物の種類を推測してね」
「はい」


 リンネちゃんはその二匹の魔物の特徴をここから見える範囲で細かく言ってくれた。

 そうして、馬役になっているリザードがおそらくグランリザード……リザードギガントのAランク版というのははっきりした。
 どうやら亜種か超越種な上、ダンジョンの力が加わっていてだいぶ皮膚の色とかは違うみたいだけど、大きさ的にそう特定できた。

 もう一方、騎士役のリザードマン。最初はその鎧を着てるなどだけの見た目からナイトリザードマン・マクウェスっていうこれまた長い名前のやつかと思ったけど、どうやら鎧に十字架が刻まれていることからリザードマンパラディンっていうことがわかった。
 リザードマンは本当に種類が多いから、覚えるのが大変なのよね。


「となると、グランリザードの方で気をつけなきゃいけないのはステータスだね。とにかくとんでもなく高いもんね」
「ええ、それに亜種か超越種な上、ダンジョンボスとしての加護もあるようなので気をつけなければ」 
「上のリザードマンパラディンは……剣術を使ってくる上に光属性の攻撃までしてくるんだっけ、たしか」
「そうです。ただ、やはりダンジョンの魔物なのでそれだけではないと考えた方がいいでしょう」
「うわぁ……キツそう」


 私達だけで戦う敵だったら今までで一番強いってことになるかもしれない。ダンジョンボスの強さはもうわかってるしね。
 まあアーティファクトが増えている上に私達自身強くなっている分、あの時よりいくらか楽かもしれないけれど。


「とりあえず帰って作戦練らなきゃ」
「今日の戦利品売り払って、がっつりご飯食べて備えよう!」
「そうだねお姉ちゃん! それがいいね!」


 つまりあれか、ロモンちゃんとリンネちゃんは、今日は本気喰いすると言っているのか。
 確かにこの二人が翌日に全力を出すにはそれがいいかもしれないけど……はあ、仕方ない。 
 私も疲れたくないから外で本気喰いさせようかな」


「わかりました。ではお金が用意出来次第、どこかお店行きましょうか」
「「うん!」」

 
 二人は嬉しそうにニコニコ笑ってる。
 私はもう一度、この広場の目の前に転移魔法陣を貼り直し三人と一匹で街に帰った。

 運良くまだ昼食時が少し過ぎた頃であり、人もいなかったので一つのお店を貸切するという予約をする。私達の噂はこの街の飲食店ほぼ全部に伝わってるようで、良さげなお店にテキトーに入って、そこは初めてだったのにもかかわらず、すでに貸切たいと言っただけで何をするのか知られていた。ちょっと恥ずかしい。
 そのおかげですんなりオーケーしてくれたけど。

 そして魔物を売って得たかなりのお金で、その貸切にしたお店でロモンちゃんとリンネちゃんが暴食(あくまで食べ方は上品)の限りを尽くした。
 
 もちろん私とケル君はいつも通り、普通の分量だけ食べた。ロモンちゃんとリンネちゃんのお腹の中ってやっぱり、ダンジョンより謎かもしれない。


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