私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

文字の大きさ
233 / 378

230話 村に帰って報告するのでございます! 2

しおりを挟む
「ふむふむ……となると、ヘルドックとそう大差はないのか。耐性や得意な魔法、見た目が違うだけで……ヘルドックの属性違いと考えたら早いの」


 でっかい本に超スピードでスケッチを書き込みながらおじいさんはそう言った。
 かなり再現できている。おじいさんのスケッチってこんなに上手だったんだ。数多くの新種を発見してきた人だし、当然なのかもしれないけど。
 というか筆記具って使ってるの羽根ペンだけよね? どうしてあそこまで精巧に描けるんだろう。

 ちなみにケル君は机の上に乗せられ、ピタッと動きを止めている。保存してある干し肉を大量に食べて良いと言われたから頑張っているの。


「この赤い首回りと目の淵にある柄は亜種によるものだと考えて良いな。通常なら真っ白じゃろう」
「そういえばアイリスちゃんの時は大変そうにしてたね」
「そりゃなぁ、新種なのに極至種で……通常がどういうものか考察するのは大変じゃったよ」


 ちなみに私が普通種だった場合、天使の輪っかも羽根もなく身体は白銀ではなく普通に白色であり、手足のつなぎ目や目と口が緑色に発光しているだけだったかもしれないという。
 想像してみるとだいぶ地味かもしれない。逆に私自身はごちゃごちゃしすぎだけど。


「よし、ケル。もう動いて良いぞ」
【ゾー。干し肉!】
「それは明日、進化して後に一度調べさせてくれたらじゃよ」
【ゾォ……】


 ケル君はしょんぼりとうなだれた。そのまま無言で机の上から降りてこの家に住んでいた頃にずっと眠っていた犬用ベッドまで行き、幼体化してそこで丸くなる。


「話を聞く限りじゃ相当な天才らしいが、ああいうところは変わってないの。まだ子供っぽい」
「干し肉あげても良かったんじゃない?」
「それには買ってこなきゃいかんからな。ケルがいなくなってからワシとガーナで干し肉は食い尽くしてしまったわい。まあまあ、約束通り明日にはあげるから問題なかろう」


 ははは、とおじいさんは笑う。
 なるほど、ないものを報酬にして先延ばしにしたわけだ。隙を見て街にでも行って買って来るつもりなのかも。
 ちらりと時計を見たおじいさんは、私を見て口を開いた。


「さて、と。用事は一段落済んだから……! ちょっとアイリスに色々聞きたいことが……!」
「あ、おじいちゃん!」
「む、どうしたリンネ」


 ちょっと鬼気迫る勢いで私になにか聞こうとしていたけど、リンネちゃんが割って入ってきた。どうやらロモンちゃんとリンネちゃんはおじいさんの鬼気迫るものに気がつかなかった様子。
 そしていま知ったけど、いつのまにか時間は午後三時にさしかかっていたの。


「ヘマに呼ばれてるからさ、ぼく、ちょっと行ってくるね!」
「…………なんじゃ、デートか」
「ちっ、違うよ! ぼくにはその気はないもの。久しぶりお話ししたいっていうから遊びに行くだけだよ」
「そうか、いってらっしゃい」


 リンネちゃんは軽く髪と身だしなみを整えてから家を飛び出して行ってしまった。
 

「うーん、じゃあ私もタイトとお話しでもしようかな。もちろんデートなんかじゃなくね。おじいちゃん、私も行ってくるね」
「ほぅ、いってらっしゃい」


 続いてロモンちゃんも。なんやかんやいって幼馴染とお話しできるというのは楽しいことなんでしょう、性別関係なくね。私にはよくわかる。でもなんでわかるんだろ?
 ……ま、どうせ前世の記憶か何かね。


「さて、アイリスや」
「は、はい」


 ケル君は寝て、双子は外に遊びに行った。ガーナさんもいつのまにか外に出ている。多分、お庭のお手入れの続きでしょう。おじいさんの気迫がすべて私に向けられた。
 なんだかものすごいプレッシャーを放っている。


「ここにきてからの近況報告で、彼氏ができた……と、行っていたの?」
「え、ええ! 私自身驚いてますが、私のことを好いてくれる人がいたんです。その人といまお付き合いしてますよ」


 口に出すと小恥ずかしい。私はどうやら彼氏がいるということを自認すると恥ずかしくなってしまうみたいだ。
 おじいさんはなぜか顔をしかめる。


「どんなやつだ?」
「とても優しい方です! 私にはもったいないくらい……。私が危ない目にあった時、全力で助けてくれた人なんです」


 そういうとおじいさんの表情は和らいだ。そして軽く首を揺らしながら質問を続けてくる。


「そうかそうか、名前は?」
「ガーベラと言います。そういえば私と同じ花の名前ですね、えへへ」
「ふむふむ……とりあえず悪い男ではなさそうで良かったわい。じゃが、なにか嫌なことをされたらすぐに離れるんじゃぞ? いいな?」
「はい、それは肝に命じております」


 そういうと、おじいさんはさらに満足そうなものへと表情を変え、家の奥に本と共に消えていった。
 あのすごい気迫はなんだったんだろう。


【ジーゼフ、イッタカシラ?】
【あ、ガーナさん……お庭に行ってたんじゃないんですか?】
【ジーゼフ 二 キガ ツカレ ナイヨウニ マド カラ ヨウスヲ ミテタノ】
【そうなんですか。なんでまた?】


 ガーナさんはため息(?)をした。蛇だから本当にため息かどうかはわからないけど。とにかくそんな感じのものを一つすると、私の足元をぐるぐると回り始めた。


【コレハ ワタシ イガイノ ジーゼフノ ナカマ カラ キイタ ハナシ ナンダケド】
【は、はい……】
【ジツハネ……】


 ガーナさんの話によるとジーゼフさんは自分の身内に恋人ができた時、あんな態度になるらしい。
 それがわかったのはお母さんがお父さんと付き合い始めの頃。とにかくお父さんを表面では肯定しながらも、結婚するまで様子を伺っていたのだとか。
 ロモンちゃんとリンネちゃんがいなくなってからも、双子に告白してきた二人を気にかけるような素振りを見せていた……とのこと。

 そっか、まあ父親や祖父ってそういう人結構いるからわかる。でもなんで実の娘じゃない私のことも気にかけてくれるのかしら? ガーナさんに聞いてみた。


【ソリャ、タブン、アナタ ノコトヲ マゴ ノ ヨウニ オモッテルンジャ ナイ?】
【そうなんですかね】
【ウン。マゴ ガ フエテ ウレシイッテ アナタガ イナイトキデモ タマニ イウシネ】


 そ、それはなんだか照れるなぁ。私ってばやっぱりいろんな人から愛されてる。元はただの小石なのにね。
 

「おう? どうしたんじゃ」
「おじいさん! おかえりなさい。……その袋は?」
「王都まで行きつけの店に干し肉を買いにな」
「本を置きに家の奥に行ったのではなかったのですか?」
「それにしては戻るのが遅すぎじゃろうて」


 たしかにあれから15分は経っている。いつのまに。
 修行の日々から気が抜けて、時間が経つのが早くなってるのかもしれない。
 おじいさんは干し肉が大量にはいった袋を台所の棚に仕舞うと、ロモンちゃんがさっきやっていたのと同じ順序で身だしなみを整え始めた。


「ちょっとまた王都まで行ってくるわい」
「おや、そうですか」
「せっかく孫たちがきているが……何分、王都でついさっきばったりと旧友に出会ってな。リンネとロモンと同じ、ワシも昔馴染みの友人と夕飯時まで話をしてくるよ。二人と違って男同士じゃがな! すまんが、二人とも留守を頼んだぞ」


 おじいさんはそう言うと転移魔法陣で王都まで行ってしまった。今日はみなさん旧友と出会う日みたい。
 私は前世の記憶以外では旧友なんていないから、ガーナさんと一緒に大人しくお留守番しておこうと思う。
 


#####

次の投稿は5/11です!
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

処理中です...