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第一部
第37話 俺と二つの宝箱 前編
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俺とロナはすぐに宿の部屋まで戻ってきた。
「はぁー、どっこいしょっと」
あまりに多すぎる荷物は、故郷で農作業を手伝っていた頃に担いだ肥料入りの麻袋などを思い出させる。
しっかし、我ながらなんとも紳士的じゃない間抜けな声だぜ。
ロナに田舎者だってことバレてなきゃいいが……ああ、どうやら気にしてなさそうだな。
「やっぱり、半分くらい持たせてくれても良かったのに」
「ふっ……俺は……紳士だからな。レディに荷物持ちはさせないの、さ」
「うーん……まぁ、ザンらしいけど」
とはいえ、腰や肩が痛いのは事実。
こうなるのはわかっていたし、ロナも何度も荷物持ちを提案してくれたが、俺はポリシーを貫いたんだ。ふふ、ジェントルだろう?
それに、この一連の運搬で、ハンマーとパンドラの箱一つ、合計で二つのものを浮かせて持ち運ぶという同時操作を、特に意識せずに行えたことになるんだぜ。
ちょっとした成長があったと言えるだろう。うん。
やっぱ、今日一日でだいぶ『ソーサ』の指輪の扱いに慣れたな。
「じゃ、調べてくとするか」
「なら私、その間にサッとお湯浴びしてきていいかな?」
「ああ。行ってこいよ」
「うん、じゃあね」
そう言って軽く手を振りながら、ロナはタオル等をもってこの宿の共同浴場へ行った。
俺もあとで浴びるか。香水も振り直したりしないとな。
では気を取り直して、宝箱の中身を見ていこう。
とりあえず開けてみると二つあるうちの一方は三つ、もう一方には四つのアイテムが入っていた。
三つの方には、高級そうな革でできた装飾のある小袋と、何かの札、そして保存玉。
その保存玉を割ると全体的に青白い、短めの剣が現れた。
四つの方には、陶器のように真っ白なリングに血のように赤い小さな宝石がついてる指輪と、似たようなデザインのナイフ、そして何らかの札が二枚だった。
そういや何気に、保存玉が入っていないパンドラの箱は、俺の運命を変えたあの箱以来か。
じゃ、三つ入ってた方のものから一つずつ見ていくとしよう。
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「異次元の皮袋 シューノ」(宝具)
際限なく物を入れることができる。生物は入れられない。
また、入れた内容物によって重さが変わることはない。
入れた物は、再び取り出されるまで入れられた当初の状態を保つ。
出し入れする物の大きさに合わせて一時的にこのアイテムの大きさも変化する。その際、必要に応じて魔力を消費する。
所有者は袋の中に手を入れることで、内容物を把握することができる。
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「四つ身の剣 フォルテット」(宝具)
魔力を40消費することで、所持者が解除するか一定時間が経つまで、この剣は四つに分裂する。
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「能力の札 『呼応招来』」(宝具)
この札を使用することで能力『呼応招来』を習得することができる。
・『呼応招来』
自身が正式な持ち主として所有している、アイテムの正しい名称を魔力を消費しつつ口に出して呼ぶことで、手元に引き寄せることができる。
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えーっと、まず『シューノ』とかいう皮袋の方からどう使ったらいいか考えていくか。
見た目よりモノが入るアイテムや建物があるっていうのは前々から知っていた。
というより日常に溢れてるし、全く珍しい効果ではない。
例えば俺の実家の倉庫や、さっきまで居た黄色い屋根の店の裏側も、見た目以上に中が広かった。
ロナのもつ鞄もそうだ。剣や防具、衣類など明らかに本来の容量を超えてモノを入れられているからな。
だがやはり宝具は宝具。
この『シューノ』は説明通りならば、その容量が無限。しかも入れた物は劣化せず、魔力さえ払えばなんでも入れられる。これ自体の重さも変化しない。
そもそも腰巾着程度の大きさなので持ち運びも楽ちん。
ああ、なんというか、便利すぎる効果のオンパレードだ。
おそらく『リキオウ』並の大当たりなんじゃないだろうか。
俺の荷物問題が全てこれ一つで解決するからな、絶対に手放したくないアイテムの一つだぜ、これは。
で、次に『フォルテット』という名前の剣。
……まず、人間の手は二本しかないのが普通だ。
なのに四つに分身してどうするんだ?
それに、『ヒューロ』や『バイルトン』のように何かしらの攻撃が強化されるような効果もついてない。
その上、文面通りなら「四つ」以外に本数を調整することすらできなさそうだ。
一応宝具だから、効果なしの剣として素体そのものはいい物と思えば……うーん、いや、なんにせよハズレだな。残念ながら。
ただ、最初はハズレだと思っていたクロスボウ『ハムン』が俺とは相性が良かったように、状況によっては使えることがあるかもしれない、たぶん。きっと。
そして最後の宝具は能力の札で、中身は『呼応招来』。
内容を見る限りでは、この能力は呪われてる俺でも覚えられるだろう。
魔力消費と名前を呼ぶだけで、アイテムの方から自分の方に来てくれる。……まるでペットだな。
例えば、昨日からずっと被ってる俺のジェントルな愛帽『ルナル』が風で吹き飛ばされ、俺から離れてしまうようなことがあったら、「ルナル」と呼びつつこの能力を使えば戻ってくるから、失くさずに済むってことか。
……ま、俺の場合は『ソーサ』で操れば良いよなぁ。
あ、でもそれこそこの指輪みたいに小さいモノを紛失し、どこにあるかすら判らなくなった時は『呼応招来』の方がいいのか?
でもどっちみち少しは魔力使うみたいだし、アイテムでしか魔力が無限にならない俺には使えないかもな。かと言って、ロナにも必要だとは思わないしな。
ま、この箱に関しては『シューノ』があっただけでも大したものか。
宝具ってのは、ピンからキリまでの差がすごいぜ。
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「はぁー、どっこいしょっと」
あまりに多すぎる荷物は、故郷で農作業を手伝っていた頃に担いだ肥料入りの麻袋などを思い出させる。
しっかし、我ながらなんとも紳士的じゃない間抜けな声だぜ。
ロナに田舎者だってことバレてなきゃいいが……ああ、どうやら気にしてなさそうだな。
「やっぱり、半分くらい持たせてくれても良かったのに」
「ふっ……俺は……紳士だからな。レディに荷物持ちはさせないの、さ」
「うーん……まぁ、ザンらしいけど」
とはいえ、腰や肩が痛いのは事実。
こうなるのはわかっていたし、ロナも何度も荷物持ちを提案してくれたが、俺はポリシーを貫いたんだ。ふふ、ジェントルだろう?
それに、この一連の運搬で、ハンマーとパンドラの箱一つ、合計で二つのものを浮かせて持ち運ぶという同時操作を、特に意識せずに行えたことになるんだぜ。
ちょっとした成長があったと言えるだろう。うん。
やっぱ、今日一日でだいぶ『ソーサ』の指輪の扱いに慣れたな。
「じゃ、調べてくとするか」
「なら私、その間にサッとお湯浴びしてきていいかな?」
「ああ。行ってこいよ」
「うん、じゃあね」
そう言って軽く手を振りながら、ロナはタオル等をもってこの宿の共同浴場へ行った。
俺もあとで浴びるか。香水も振り直したりしないとな。
では気を取り直して、宝箱の中身を見ていこう。
とりあえず開けてみると二つあるうちの一方は三つ、もう一方には四つのアイテムが入っていた。
三つの方には、高級そうな革でできた装飾のある小袋と、何かの札、そして保存玉。
その保存玉を割ると全体的に青白い、短めの剣が現れた。
四つの方には、陶器のように真っ白なリングに血のように赤い小さな宝石がついてる指輪と、似たようなデザインのナイフ、そして何らかの札が二枚だった。
そういや何気に、保存玉が入っていないパンドラの箱は、俺の運命を変えたあの箱以来か。
じゃ、三つ入ってた方のものから一つずつ見ていくとしよう。
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「異次元の皮袋 シューノ」(宝具)
際限なく物を入れることができる。生物は入れられない。
また、入れた内容物によって重さが変わることはない。
入れた物は、再び取り出されるまで入れられた当初の状態を保つ。
出し入れする物の大きさに合わせて一時的にこのアイテムの大きさも変化する。その際、必要に応じて魔力を消費する。
所有者は袋の中に手を入れることで、内容物を把握することができる。
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「四つ身の剣 フォルテット」(宝具)
魔力を40消費することで、所持者が解除するか一定時間が経つまで、この剣は四つに分裂する。
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「能力の札 『呼応招来』」(宝具)
この札を使用することで能力『呼応招来』を習得することができる。
・『呼応招来』
自身が正式な持ち主として所有している、アイテムの正しい名称を魔力を消費しつつ口に出して呼ぶことで、手元に引き寄せることができる。
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えーっと、まず『シューノ』とかいう皮袋の方からどう使ったらいいか考えていくか。
見た目よりモノが入るアイテムや建物があるっていうのは前々から知っていた。
というより日常に溢れてるし、全く珍しい効果ではない。
例えば俺の実家の倉庫や、さっきまで居た黄色い屋根の店の裏側も、見た目以上に中が広かった。
ロナのもつ鞄もそうだ。剣や防具、衣類など明らかに本来の容量を超えてモノを入れられているからな。
だがやはり宝具は宝具。
この『シューノ』は説明通りならば、その容量が無限。しかも入れた物は劣化せず、魔力さえ払えばなんでも入れられる。これ自体の重さも変化しない。
そもそも腰巾着程度の大きさなので持ち運びも楽ちん。
ああ、なんというか、便利すぎる効果のオンパレードだ。
おそらく『リキオウ』並の大当たりなんじゃないだろうか。
俺の荷物問題が全てこれ一つで解決するからな、絶対に手放したくないアイテムの一つだぜ、これは。
で、次に『フォルテット』という名前の剣。
……まず、人間の手は二本しかないのが普通だ。
なのに四つに分身してどうするんだ?
それに、『ヒューロ』や『バイルトン』のように何かしらの攻撃が強化されるような効果もついてない。
その上、文面通りなら「四つ」以外に本数を調整することすらできなさそうだ。
一応宝具だから、効果なしの剣として素体そのものはいい物と思えば……うーん、いや、なんにせよハズレだな。残念ながら。
ただ、最初はハズレだと思っていたクロスボウ『ハムン』が俺とは相性が良かったように、状況によっては使えることがあるかもしれない、たぶん。きっと。
そして最後の宝具は能力の札で、中身は『呼応招来』。
内容を見る限りでは、この能力は呪われてる俺でも覚えられるだろう。
魔力消費と名前を呼ぶだけで、アイテムの方から自分の方に来てくれる。……まるでペットだな。
例えば、昨日からずっと被ってる俺のジェントルな愛帽『ルナル』が風で吹き飛ばされ、俺から離れてしまうようなことがあったら、「ルナル」と呼びつつこの能力を使えば戻ってくるから、失くさずに済むってことか。
……ま、俺の場合は『ソーサ』で操れば良いよなぁ。
あ、でもそれこそこの指輪みたいに小さいモノを紛失し、どこにあるかすら判らなくなった時は『呼応招来』の方がいいのか?
でもどっちみち少しは魔力使うみたいだし、アイテムでしか魔力が無限にならない俺には使えないかもな。かと言って、ロナにも必要だとは思わないしな。
ま、この箱に関しては『シューノ』があっただけでも大したものか。
宝具ってのは、ピンからキリまでの差がすごいぜ。
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