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第一部
第45話 俺達と大物狩り
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「あ……あれ……ハァハァ……まさか……」
「《大物狩り》です、よね……」
ドロシア嬢とカカ嬢がそう言うと、《大物狩り》は自分の短槍を地面に突き刺し、横手でパチパチと拍手をしだした。
手袋まではめて肌が一切露出しないようにしている。正体を隠すのにかなりの徹底しているな。
……だがな、それならそもそも俺らの前に姿を現さず、遠距離から攻撃してきた方がより確実だったような気がするぜ?
いくらか、つけいる隙はありそうだ。
「ご名答! 自らそう名乗ったわけではありませんが……世間で言う《大物狩り》はそう、私です。なのです! ……おや?」
「く……そ……が!」
さっきまでうつ伏せで倒れていたリオが、自分の剣を支えにしながら弱々しく起き上がり始めた。
足元はフラフラ、全身の血管は浮き出ており、汗も滝のように流している。無理をしているのは一目瞭然だ。
「お……グォ……。こ、このクソ野郎……ふ、ふざけやがって……ッ! ぬぅおおおおおおおおおおおおお!」
「り、リオっ……!」
彼はそのまま剣を杖の代わりにし、《大物狩り》の方へ、一歩また一歩と近づいていこうとする。たった一歩がものすごく重たそうだ。
「おやおや《勇獅子》ことリオさん。噂に違わぬ勇猛さだ。背筋がゾクゾクしそうですよ……! まあ、うそです。今の貴方ではしないですよ。しかし妙ですね、聞いた噂によると、一人の少年の人生を台無しにしてえらく落ち込んでいるとお聞きましたが……? まだそんな気合いがあったんですね」
「テメェには、関係ねぇ……よっ……クソがッ……!」
「ふーむ、それにしてもよく魔力の欠乏の苦しみに耐えながら動いてるものだ。……どれ」
「おわっ⁉︎」
リオの握っていた白い剣が、彼の手元から消え去ったと同時に《大物狩り》の手の中に現れる。
自身の出現方法といい、どうやら人や生き物を瞬時に移動できる能力か宝具をヤツは所有しているようだ。
普通に相手したらめちゃくちゃ面倒そうな力を持ってやがるな。
何らかの方法で相手の魔力を欠乏させ、自身は自由自在に移動できる……なるほど。これに加えてある程度のステータスがあるのなら、AランクやSランクの強者達が容易く襲われてしまうのも無理はないだろう。
「ふむ。この剣は『ブレイブ』と言うのですか、いい名前だ。光属性の攻撃を極大強化し、所有者の勇気に呼応して強くなっていく……と。なるほどなるほど」
「か、返しやがれッ……! オレのけん……っ!」
「イヤですよぉ」
ヤツが『ブレイブ』という剣を自身の懐に入れ込むような動作を取ると、それはそこへ吸い込まれるように消えてしまった。
おそらく俺の『シューノ』に近い物入れがあるんだろう。
ヤツはそのあとすぐに、地面に刺していた槍を再び手に握る。
ああいう輩が次に取りそうな行動はだいたい予想がつく。攻撃を始めるんだ……雰囲気に殺気もこもってるしな。
俺は今にも倒れそうなリオの片足を手を伸ばして引っ張り、あえて転ばさせることにした。
「ごわっ⁉︎ ぶへっ!」
「闇波ッ……と。おや、残念」
リオが地面に倒れたのを見て、槍に魔力を纏わせながら何かしらの技の動作を行なっていた《大物狩り》は、それを途中でやめる。
ちょっと手荒だったが、リオに貸しひとつだなこれは。
「邪魔されましたか。しかし意外ですね、まさかあなたが《勇獅子》を庇うとは」
意外……。
なるほど、俺がリオを助けたことに対してそう言うってことは、俺がさっき話題に出た少年、その本人だってことをコイツは知っているんだな?
となるとヤツの正体は俺の知り合い……? いや、俺がこうなった理由の全容はロナにしか話していない。それはあり得ないだろう。
また、『リブラの天秤』の関係者という線も薄めかな。
不穏な動きをしている仲間、それも程の存在を、このSランクの冒険者四人や、あの大規模組織を支えているギルドマスターのような面々が見抜けないってのも考えにくい。
ま、フツーにさっきまでの俺達の会話を盗み聞きしていたってのが答えだろう。そもそもコイツは、俺たちがそろそろ会話を終わろうとしたいい感じのタイミングで出てきたんだし。
「し、知ってるのですか……か、彼とアタシたちのこと……⁉︎」
「おや、これは私としたことが口を滑らせてしまったようで。あちゃーって感じですね。とはいえ何をされたかまでは知りませんが……ま、この際ですしついでに言うとね、私、そこの帽子の少年には感謝しているんですよ」
「お、おれに? ど……いう……? うっ、おえー」
「この状況そのものが、あなたからのプレゼントみたいなものなんですよ! はははは!」
《大物狩り》は大袈裟に両手を広げ、嬉しそうに指をワキワキと動かしながら語り始める。
この余裕そうな仕草……おそらく俺が全然動けることはバレていないようだ。ふっふっふ、やっぱり超クールな俺は演技も優れているんだな。
リオを助けてやった時にバレたかと思ったが、これはいいチャンスだ。
相手が瞬時に移動できる方法を持つ凶悪な犯罪者である以上、下手な行動をすると気を刺激させてしまい、厄介な暴れさせ方をさせてしまう恐れもあった。だから今まで相手には何もせず様子うかがっていたが……。そろそろ出てきそうだな、隙が。
俺について語ってる間にテキトーに相槌うって、なるべく情報を自分から喋らせつつ、良さそうなタイミングで俺と『互角』にし、その上で不意打ちをかましてやろうじゃあないか。
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「《大物狩り》です、よね……」
ドロシア嬢とカカ嬢がそう言うと、《大物狩り》は自分の短槍を地面に突き刺し、横手でパチパチと拍手をしだした。
手袋まではめて肌が一切露出しないようにしている。正体を隠すのにかなりの徹底しているな。
……だがな、それならそもそも俺らの前に姿を現さず、遠距離から攻撃してきた方がより確実だったような気がするぜ?
いくらか、つけいる隙はありそうだ。
「ご名答! 自らそう名乗ったわけではありませんが……世間で言う《大物狩り》はそう、私です。なのです! ……おや?」
「く……そ……が!」
さっきまでうつ伏せで倒れていたリオが、自分の剣を支えにしながら弱々しく起き上がり始めた。
足元はフラフラ、全身の血管は浮き出ており、汗も滝のように流している。無理をしているのは一目瞭然だ。
「お……グォ……。こ、このクソ野郎……ふ、ふざけやがって……ッ! ぬぅおおおおおおおおおおおおお!」
「り、リオっ……!」
彼はそのまま剣を杖の代わりにし、《大物狩り》の方へ、一歩また一歩と近づいていこうとする。たった一歩がものすごく重たそうだ。
「おやおや《勇獅子》ことリオさん。噂に違わぬ勇猛さだ。背筋がゾクゾクしそうですよ……! まあ、うそです。今の貴方ではしないですよ。しかし妙ですね、聞いた噂によると、一人の少年の人生を台無しにしてえらく落ち込んでいるとお聞きましたが……? まだそんな気合いがあったんですね」
「テメェには、関係ねぇ……よっ……クソがッ……!」
「ふーむ、それにしてもよく魔力の欠乏の苦しみに耐えながら動いてるものだ。……どれ」
「おわっ⁉︎」
リオの握っていた白い剣が、彼の手元から消え去ったと同時に《大物狩り》の手の中に現れる。
自身の出現方法といい、どうやら人や生き物を瞬時に移動できる能力か宝具をヤツは所有しているようだ。
普通に相手したらめちゃくちゃ面倒そうな力を持ってやがるな。
何らかの方法で相手の魔力を欠乏させ、自身は自由自在に移動できる……なるほど。これに加えてある程度のステータスがあるのなら、AランクやSランクの強者達が容易く襲われてしまうのも無理はないだろう。
「ふむ。この剣は『ブレイブ』と言うのですか、いい名前だ。光属性の攻撃を極大強化し、所有者の勇気に呼応して強くなっていく……と。なるほどなるほど」
「か、返しやがれッ……! オレのけん……っ!」
「イヤですよぉ」
ヤツが『ブレイブ』という剣を自身の懐に入れ込むような動作を取ると、それはそこへ吸い込まれるように消えてしまった。
おそらく俺の『シューノ』に近い物入れがあるんだろう。
ヤツはそのあとすぐに、地面に刺していた槍を再び手に握る。
ああいう輩が次に取りそうな行動はだいたい予想がつく。攻撃を始めるんだ……雰囲気に殺気もこもってるしな。
俺は今にも倒れそうなリオの片足を手を伸ばして引っ張り、あえて転ばさせることにした。
「ごわっ⁉︎ ぶへっ!」
「闇波ッ……と。おや、残念」
リオが地面に倒れたのを見て、槍に魔力を纏わせながら何かしらの技の動作を行なっていた《大物狩り》は、それを途中でやめる。
ちょっと手荒だったが、リオに貸しひとつだなこれは。
「邪魔されましたか。しかし意外ですね、まさかあなたが《勇獅子》を庇うとは」
意外……。
なるほど、俺がリオを助けたことに対してそう言うってことは、俺がさっき話題に出た少年、その本人だってことをコイツは知っているんだな?
となるとヤツの正体は俺の知り合い……? いや、俺がこうなった理由の全容はロナにしか話していない。それはあり得ないだろう。
また、『リブラの天秤』の関係者という線も薄めかな。
不穏な動きをしている仲間、それも程の存在を、このSランクの冒険者四人や、あの大規模組織を支えているギルドマスターのような面々が見抜けないってのも考えにくい。
ま、フツーにさっきまでの俺達の会話を盗み聞きしていたってのが答えだろう。そもそもコイツは、俺たちがそろそろ会話を終わろうとしたいい感じのタイミングで出てきたんだし。
「し、知ってるのですか……か、彼とアタシたちのこと……⁉︎」
「おや、これは私としたことが口を滑らせてしまったようで。あちゃーって感じですね。とはいえ何をされたかまでは知りませんが……ま、この際ですしついでに言うとね、私、そこの帽子の少年には感謝しているんですよ」
「お、おれに? ど……いう……? うっ、おえー」
「この状況そのものが、あなたからのプレゼントみたいなものなんですよ! はははは!」
《大物狩り》は大袈裟に両手を広げ、嬉しそうに指をワキワキと動かしながら語り始める。
この余裕そうな仕草……おそらく俺が全然動けることはバレていないようだ。ふっふっふ、やっぱり超クールな俺は演技も優れているんだな。
リオを助けてやった時にバレたかと思ったが、これはいいチャンスだ。
相手が瞬時に移動できる方法を持つ凶悪な犯罪者である以上、下手な行動をすると気を刺激させてしまい、厄介な暴れさせ方をさせてしまう恐れもあった。だから今まで相手には何もせず様子うかがっていたが……。そろそろ出てきそうだな、隙が。
俺について語ってる間にテキトーに相槌うって、なるべく情報を自分から喋らせつつ、良さそうなタイミングで俺と『互角』にし、その上で不意打ちをかましてやろうじゃあないか。
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