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第一章 青き衣(ジャージ)をまといし者
なにをするにも おかねとワルツ
しおりを挟む「うぅ~」
呻り声を上げてカウンターに突っ伏すと、マスターの小さく笑う声が聞こえた。
「今日はずいぶんと荒れてるな」
荒れたくもなる。
あんなことがあれば、草食系で魔法系男子代表の温厚な俺だって、頑固オヤジのように激しくテーブルを引っ繰り返したくもなるさ。
うらめしげに目線を上げると、かちりと涼しげな目とあった。
「何かあったのか?」
「なぁんもかんも、大学から職員が来た」
俺は憮然として答えた。
「一学年後期の学費が未納らって、わざわざアパートまで出向いて来やがりましたよぉ」
思い出されるのは、今朝取り立てに来た女のこと。
まさか、大学からの刺客だとは!
開口一番「一学年後期の学費が未納です」の言葉に、俺の心に咲いた可憐な恋の花は儚くも散っていった。
俺のトキメキを、青春を返してくれ。
「しょせん、この世は金か」
「おバカ。未納にしてたら追い出されるだけでしょ! さっさと払っちゃいなさいよ」
ママは呆れた声を出す。
「俺はぁ、ギリッギリの生活なんれすぅ! 家賃れしょ? ギルドの会費っしょ? 光熱費モロモロ……ほら、貯えがほとんど飛んれった! タネも仕掛けもないれすよ!」
マジで泣いても良いですか?
光熱費などは除いた、家賃は格安の月額二万ポロリ。
オンボロアパートだが、住めば意外と快適である。
三ヶ月分の家賃を滞納していても、とりあえず部屋から追い出されずに済んでもいる。
土下座で泣きつけば待ってくださる、とても優しい大家さんで良かった。
それに魔法学校に入学すると共に籍を入れる魔法ギルドだって、学割価格の年会費一万ポロリ払えば良い。
まあ、これを納めないと魔法使用許可証を剥奪されるんだけど。
許可証なしに魔法を使用するのは犯罪にあたるので、許可証の有効期限には注意が必要だ。
俺は毎月泣きながら、少ない貯金を切り崩して生活費を払ってきたんだ。
その金すらも底が見えてきたから、一ヶ月ぐらい滞納しても許されるだろうと思っていた。
ところが、大学側はハイエナのように容赦なく俺の骨までもしゃぶり尽くそうと朝から……!
そのハイエナが、タイプの女の子だったからショックは更に倍だ。
現場に居合わせた、鬼畜エルフであるレオンのバカ笑いが今も耳から離れない。
「だったら、なぁんで道具屋のバイトを辞めちゃったのかしらねぇ?」
「あの新店長さえいなけりゃ、俺らって辞めなかったよ」
魔法学校の高等部時代から続けていた道具屋のバイトで何とか生計を立てていたのだが、半年前に就任した新店長と早々に喧嘩をして辞めている。
約三年半という月日に渡ってお世話になっていたが、新店長の経営方針には賛同できかねるものがあったからだ。
利益は大切だが、それでお客さんに対して感謝の気持ちどころか、見下しているのは人として間違っていると俺は思う。
口調はそれなりに丁寧なのだが、自分の専門知識をさも常識と言わんばかりに、「そんなのも知らないの?」的な半笑いで接客するのをヤメロ!
そりゃ、頭にくる「オマエ何様?」的な客もたまにいたけど。
「現にこうして貧乏暮らしなんだから、ぶらぶらしてないで、さっさとどこか魔法事務所のバイトに入れば良いじゃないのよぅ。後々の就活にも便利じゃなぁい?」
「時代が就職難じゃなければな」
俺は目をそらした。
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