魔法系男子のゆふるわな日常(希望)

ねじまる

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第一章 青き衣(ジャージ)をまといし者

いちごぱんつは いいぱんつ

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 逃がしてなるものか。

 再教育してやる。
 親が怒らないから、平気で暴言を吐く。

 ついでに思い出した。

 親が怒らないから、店内でも平気に飲食するガキも増えているのだ。
 道具屋時代、何度、菓子でベタついて売り物にならなくなった薬草を処分したことか。
 何度、遊んで壊された杖やお守り人形を処分したか。
 見本じゃなくて、売り物だったんだぞ!

 この世の中、叱る人は必要だと俺は思う。

 そもそも「お店の人に叱られちゃうからぁ」と責任転嫁して言うのは大間違いだ。
 叱るのは親の役目だろうがぁ!

 おっと、昔を思い出して、つい熱くなってしまった。

 この世のモラル崩壊を止めるべく幼女を追ったのだが、彼女は意外と足が速い。
 俺が劣っているからというワケでは決してない。

 彼女は入ってはいけないという生垣の迷路に迷うことなく飛び込んだ。
 この家の子なのだろうから迷路の攻略法は知っているのだろう。
 良い逃げ場所だとは思う。
 しかし、彼女には一つ誤算がある。

 相手が魔法使いだということだ。

 俺も迷うことなく迷路に飛び込んだ。
 幼女の小さな背中がすぐに角へ消えた。
 その後を追って角を曲がると幼女の姿はない。
 だからといって焦る必要はない。

「あのさ、ここに入ってきた女の子、どっち行った?」

 そう、ここには沢山の目撃者……いや、樹木だから目撃樹?
 それらに直接尋ねれば良いことだ。

 迷路を形作る木々達が俺の問い掛けに風もなくざわめいた。

 この光景、魔法使いを詳しく知らない一般の人から見れば、不審者か精神にちょっと問題がある人と誤解されかねない。
 町中では滅多に使えない方法である。

「ありがと!」

 木々が幼女の行く先を積極的に教えてくれるので苦労することもなく相手を発見する。
 道の奥で幼女の小さい背中を見つけた。
 立ち止まり、空気を一生懸命に肺へ取り込もうと大きく揺れている。
 全速力で逃げていたのだ。無理もない。
 幼女は肩で大きく息を吐いていた。

「こるぁ! 待て、幼女!」

「うっそっ!」

 思いっきり気を抜いて油断をしている相手を驚かすというのは大変面白い。
 俺が追ってくるとは思っていなかった幼女は飛び上がって驚いた。
 ウサギのように再び逃げ出す。

「ふはは、逃げろ! 逃げるが良い!」

「いいやぁぁああ! なぜわかったのだぁぁぁああ!?」

 追われるのは嫌だが、追うのはやっぱり楽しい。

 しばらく緑の壁の間を走っていると、不意にぽっかりと開けた場所へ到着した。
 風が吹き、花びらが舞う。
 そこは色とりどりの花々が咲き乱れる花園だった。

 こんな寒い季節に花とは珍しいものだ。

「秘密の花園、か」

 甘酸っぱい少年少女の恋物語を連想させる。
 そして、どこかで見たような花だが名前が出てこない。
 まあ、特に花が好きというワケではないのでこういうものだろう。

 久々に見た綺麗な景色に心が洗われ、思わず目的を忘れそうになった。
 素早く目を走らせると、彼女は緑の壁にポッカリ空いた小さな穴へと入ろうとしている。
 白いワンピースが風に舞う。

「見えた! いやいやいや、待てっての!」

 いちごパンツだった。

 じゃなくて、声を掛けたところで幼女は止まるはずもない。

 そのまま穴の中へと入っていった。
 慌てて駆け寄ったが、穴は俺が通れる大きさではなく。
 穴の向こうには幼女の背中が森の中へと消えていくのが見えた。

 どうやら、敷地を抜けて森に続いているようだ。

 森で転んで怪我をした挙げ句に訴えられたら大変である。
 こちらは慰謝料を払う金もないのだ。
 ここはすぐにでも保護をするべきではないだろうか。モタモタしていられない。

「おーい、ごめん! 怒らないから戻ってこぉい!」

 風の呪文を口早に唱えてから宙を舞う。
 緑の外壁を飛び越え、森の中へ入った。


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