魔法系男子のゆふるわな日常(希望)

ねじまる

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第一章 青き衣(ジャージ)をまといし者

だいいちむらびと あやしい で けんさく

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「俺は残る。バルトは危ないから帰れ」

 きっぱりと伝えると、バルトの口元がふわりと和らいだ。
 よく見れば笑っている。

「アルカ、誰に何を言っているんだ? 俺はお前の部下である前に、魔法を教えた師匠だということを忘れるな」

 なぜか頭を撫でられてしまった。

 いやいやいや、成人している男にこの扱いはないだろう!
 そりゃ、エルフからすれば俺は子どもだろうけれど、いや、しかし!

「ほら、行くぞ」

 俺がモヤモヤしているうちに、バルトに抜かされてしまった。
 俺は慌てて後を追う。
 腹が減ったとか、そんなのはもうどうでも良くなっていた。

男達を追って森に入ったところまでは良かったのだが、

「えーっと、あれ? どっちに行ったんだ?」

 好き放題に枝を伸ばす木々に視界を阻まれ、すぐに男達の姿を見失っていた。
 どうしたものかと辺りを見回してみると、

「あ、第一村人発見。すみませーん!」

 今まさに木々の陰に消えようとする男の背中を見付け、慌てて声を掛ける。

「おう、どうした……って、オマエ!」

「あ、昨日の」

 こんなところでバッタリ出会ったのは、昨日、俺を捕らえた男達の中の一人なわけで。

「テメェ、脱走しやがったな!」

 あの極寒の部屋はともかく、ちゃんとカウロに確認を取ってから離れるべきだったか。
 自分から出てしまっているので、脱走したとも言えなくはない。
 俺が捕虜なのか、客人であるのか、そこも曖昧なところだ。

「脱走じゃない。解放されたんだ」

 とりあえず、ウソも方便ということで堂々と答える。

「そんなことよりも、もっと大切なことがあるんじゃないか? 勇者が現れたって聞いたけど」

「そうだ、それどころじゃねぇ。勇者を追い返してやらにゃあ」

「どの方角に現れたんだ? 俺達はそこに行きたいんだが」

 男の目が鋭くなる。

「勇者と合流して、俺達を倒すつもりか?」

「いや、無駄な戦いが始まる前に止めに行く」

「……まぁ、勇者が相手だろうと、敵じゃないけどな」

ぼそりと男は呟いた。

「長老が平和的に解決しようと言うからアレを使っているが……一気にファルメールを潰してしまえば話は早いだろうに」

 口元を笑みで歪めた男の顔は、少し不気味な雰囲気が漂っていた。

「アルカ、先を急ぐぞ」

「あ、あぁ」

 バルトに促されて俺は風の呪文を唱えた。

 一旦上空に出て、エルアルトの下へ向かった方が早いと判断したからだ。
 バルトも一緒に飛ばすため、魔法の効果を複数系で唱える。
 ふわりと体が宙に浮き、高度を上げていく。

 男の言うことが少し引っ掛かった。

 俺達を相手に敵ではないという自信はどこからきているのか。
 エルアルトがレジェンドクラスだということを知らないから言えるのだろうか。
 いや、今までここの人達はおっさんのところから来た傭兵軍団を退けることに成功している。
 しかも、傭兵軍団は逃げ帰ってきたと言っていたはずだ。

 何か秘密でもあるのだろうか?

 上空から辺りを見回すと、遠くに小さく屋敷の屋根が見えた。
 ファルメールのおっさんの屋敷と思われる。

「アルカ!」

 隣でバルトが小さく息を呑むのが分かった。
 俺は何も言わず、ただ頷く。

 屋敷と村、丁度ド真ん中に当たる森が、ぽっかりと大穴を開けたような焼け野原になっていた。
 カウロの言っていた、燃やされた森とはこのことだろう。

 その場所で、ムクムクと白い大きな『何か』が、複数うごめいているのが見える。

 エルアルト達の位置も気になるが、俺は焼け野原に向かった。


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