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プロローグ
しおりを挟むかつて天使と悪魔、そして人間は古くから共存していた。天界、人間界、魔界は入り乱れ、平和に共存していた。天使と悪魔は何の能力も持たない人間に『トリガー』を人間に分け与えた。その世は一人の天使の王様と、七人の悪魔の属性の王様が統治していて争いもなく、平和な世が数百年続く。問題など無かった。そう、なにもなかったのだ、その時まで。
一人の天使が呟いたのがキッカケだった。「人間が多くなってきたから、不平不満や犯罪が増えはじめた」と口を開く。そう告げたのは天使の王様でそれから事は素早く進んだ。天使が急に凶暴化して人間を襲っては殺し回りはじめたのだ。それに対抗するべく人間もトリガーで応戦するのだがやはり天使には敵わなかった、元々の戦闘力が違うのである。それを見兼ねた悪魔の七人の王様__七王はそれぞれが武器に憑依し、試練を行いはじめた。要は悪魔達は人間側に着いたのだ。七人の王様の試練は簡単、己の依り代とした武器に触れて精神世界で戦い、七王に勝てばその人物と契約し、それで天使に対抗する。しかしそれに一つ、大きな誤算が生じた。七王が強すぎたことだ。武具と契約を目的として人間達は武具に触れ、彼らと戦うも精神が潰されてしまい、死亡する者が続出する。これはダメだと悟った七王それぞれの部下達は武具となり契約するしか動く術を持てなくなってしまった七王を小さな島国……現在の日本各地に散らばせ、人間と共闘して天使と戦っていく。七王一人に付き契約者は一人。結局七人の契約者全員が揃ったのはピッタリ百年後だった。
悪魔にも寿命があり、平均500から2000。二代目七王は当時の契約者になったという。それを繰り返し天使との抗争は今になっても続いている。後に、フレデリという能力を持つものも現れはじめる。フレデリ使いは人物または武器だった前世を持ち、トリガーとは違う能力を駆使して天使と戦っていった。
私はそう書いて有る本をぱたりと閉じて小脇に抱え、玉座から立ち上がる。金色の長い髪をたなびかせながら私は儀式の場へと向かった。
……私の名はゼウス。七代目“雄神ゼウス”である。本名はとうの昔に捨てた独りぼっちの天使。現在私が、私達天使が行おうとしているのは人間界を消すという超破壊儀式。人間が鬱陶しいならその世界そのものを消してしまえば良いと言う事に決定したからだ。
こちらの天使一人を犠牲に人間が消えると言うなら犠牲などちいさなもの。万が一にもないと思うが七代目ゼウスである私が抵抗している人間達のリーダー格、齢13歳の風属性使いに敗れれば次の八代目ゼウスが控えている。……それに、私はあまり好まないが封印されているあの方も。心配はまあ、無い。皆無だ。
私は純白の廊下を堂々と、しかし早足に歩く。ふとした大きな気配に立ち止まって二つのレイピアを構えて溜め息を吐いた。目の前のボロボロな、トリガー使い特有の深紅の瞳を持つ薄黄緑色の髪の少年。先程脳裏に思い浮かべた風のトリガー使い。ここに来るまでいろいろと厄介な人材を配置し、仕掛けておいたはずだが、やはりこの男には通用しなかったらしい。全く、軍神の名が泣くじゃないか。やはり彼には心底驚かされる。
「……そんなボロボロな身なりで、私に勝てると思っているのかい? まだ、君の同年であり友人の……七王、闇の王の継承者の方が可能性があったかもしれないのに」
呆れたように私が呟けば、普通より小柄な彼はニヒルな笑顔を浮かべて「馬鹿言え」と告げ、藍色の大剣の切っ先をビッと私に向けた。
「お前を倒すのは俺、今お前と相対しているのは俺、だからお前を倒すのも俺」
「なんと傲慢な。流石“色瓶の呪い”の緑の呪受者と契約した男だ。まだ彼の解呪液は見つからんのか。七つの“色瓶の解呪液”があればあの方も復活できると言うのに」
「お前な……解呪液は色瓶の呪いを解くために有るんだ、そもそもそのための呪受者だしな」
「色瓶の呪いが生まれたのは『あの方』の封印があったからだがな」
「……おっと、時間だ。もう無駄口叩いていらんねぇ」
彼がそういった瞬間儀式場から轟音が響いてきた。恐らく雷の槍使い辺りが雷槍を節操無しに振り回しているのだろう。してやったりな彼の顔に私もつられる様に口角をあげ、眉間にしわを寄せた。あぁ、ゾクゾクする。やはり彼は私を退屈させないでくれる。目の前にいる近い未来の英雄に、私はこの時憧れた。せめて彼がもっと大きく持て囃されるよう私は大きな礎となってやらねばならない。あぁ、もう、彼と武器を交えるのも最後か。今までずっと邪魔してきて憎くて憎くて仕方なかったはずなのに、いざとなると泣きたくなるほど名残惜しい。思えば彼と出会ってまだ一年程しか経っていない。悔しい、悔しい悔しい悔しい悔しい、彼の最期を最後まで見られなかったことが、とてつもなく悔しい。何者にも曲げられない信念を持った彼が羨ましい。そういう様に憧れたのだと今更気付く。私は敵を名残惜しいと感じるとは何事かと自分に薄く嘲笑して彼をしっかりと見据えた。
「どうした? 震えてるぜ。なんだ、ビビってんのか」
「馬鹿言うな。歓喜さ、それも打ち震えるほどのな。お前の最期を見れないのが悔しいよ」
「そりゃ嬉しいが、負ける気か? それは感心しねぇ。何より俺がすっきりしない」
「そんな、君に見損なわれるようなことはしないよさ」
___なあ、英雄。
のち、彼は、彼らは世界を救った英雄となった。
この話は二世代目の、……とある少年少女の英雄鐔である。
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