華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~

はぎわら歓

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17 町から町へ

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 なだらかな道をロバの明々と一緒に進む。景色は草原からだんだんと砂漠に移り変わってきている。腹が目立ってきたが未だここに腰を落ち着けようと思える街には巡り合えなかった。
 それというのも、訪れた街には結構な確率で占い師が商売をしている。ほとんど詐欺まがいで、雰囲気だけだった。一般の占い師というものを体験してみようと、晶鈴もよく当たると評判の占い師に観てもらったことがある。

――町のはずれの一角に竹林で覆われた小屋がある。食堂で噂を耳にして晶鈴はロバを宿屋に預けて訪れた。なんでも見通すことができ、言った通りのことになるらしい。小屋といっても造りは頑丈で、小さな扉は艶やかな木材でできている。一人の若い下女が立っていて晶鈴に目を止め「占いを所望ですか?」と尋ねてきた。

「ええ。これからのことを観てもらおうかと」
「先生は今、おひとり観ておられますのでしばらくお待ちください。もう少しで終ると思います。どうぞそこへ座っててください」

 竹で編まれた椅子に腰かけると、下女が話しかけてくる。年齢や仕事、どこの生まれかなど根掘り葉掘り聞いてくる。元国家占い師であることを知られないほうが良いだろうと、隣町の農家の娘だと答えた。

「結婚はしてるの?」
「え、ええ」
「旦那さんも農家?」
「いえ、あの薬を売ってるわ」
「そうなのねえ」

 受け答えしていると、恰幅の良い男が満足そうな様子で出てきた。下女が「またお越しください」と頭を下げると「ああ、また先生に伺いを立てに来るよ」と懐から銅貨を出し彼女に渡した。ふと晶鈴に目をくれ「ここの先生の言うことを聞けば間違いないよ」と笑って立ち去った。

 「では、どうぞ」

 いよいよ晶鈴の番となった。中に通されると薄暗く、もやがかかっている。香が煙るほど焚かれているようだ。匂いに胸がムカムカするので晶鈴は袖で鼻先を押さえ席に着いた。暗がりで目を凝らすと頭から布を被った、恐らく老女が座ってこちらを見ている。しわがれた声で「名は?」と聞かれた。

「胡晶鈴です」
「夫の仕事を聞きたいのかな? それとも子供が授かるかどうかかな?」
「え、あ、えーっと……」

 下女から聞いた話をこの老女に伝えているのだろう。ここで普通なら夫や子供の相談に来たことが分かったと驚くのだろう。下女を使って情報をとりだし、誘導尋問によって当てていこうという方法なのだと晶鈴は悟る。

「あの、これから幸せな生活が送れるでしょうか?」

 ついつい漠然としたことを聞いてしまう。老女はしめた、という顔をする。おほんと咳払いすると「そなたの心がけ次第じゃ」と恭しく告げる。

「心がけとは?」
「自分より貧しいものがいたら施しをするとよい。徳につながるのでな」

 そのあと、商売には北東へ行くとよいとか、南の温泉には子を授かる効果があるなど教わった。礼を言い、銀貨二枚を支払って晶鈴は外に出た。
 下女がさっき恰幅の良い男に言っていたそのままのセリフを晶鈴に告げるので、晶鈴も男と同じように銅貨を渡した。

「相談する人はどれくらいいるの?」
「えーっと他の町の占い師は月に5人くらいでしょうけど、うちの先生は少なくても三日に一人は来ますよ」

 格の違いを見せるような言い方で下女を余裕のある態度をとる。月に5人でも十分な報酬になるが、ここの老女は評判通りよく儲けているようだ。

「これくらいでやっていけるのねえ」
「ん? なにか?」
「いえいえ、お世話になりました」

 頭を下げて立ち去った。占い師の老女は悪人ではなかったが、ただの話相手のようだった。

「そういえば、暗くてわからなったけど何か道具は使っていたのかしら?」

 何か道具を使えば、もう少し当たるだろうにと晶鈴は肩をすくめた。


 夕暮が広い平野を赤く染め始めた。

「今度の町はどうかしら」

 ロバの明々が鼻を鳴らす。

「あらあら、もう旅は嫌かしら」

 遠くない先では出産が待っている。そろそろ落ち着いて、子供との生活の基盤を作らなければならない。

「そろそろ落ち着けるといいわね」

 優しく鼻面を撫でると明々は嬉しそうに目を細めた。
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