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第二部
16 命
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春が来て緋紗の腹が目立つようになりはじめた。
和奏の言うとおりに男の子だった。
緋紗は直樹と出会ってから、これまでなんだかとても神秘的な体験をしているようで不思議な気持ちだ。
ぼんやり生きてきた自分がはっきりと明確な人生を生きている気がしてくる。
それは自分のやりたいこととか社会的なことではなくて、生き方への実感だ。
まだまだどこへ向かっているのかわからないが『こう生きたい』という自分のビジョンが見えてくるようだ。
直樹が優しく緋紗の腹をさする。
「こんなふうに絶対の安心感の中で漂うってどんな感じなんだろうね」
「お腹の中のことって覚えてませんもんね」
「なんだか。緋紗をとられたみたいだ」
子供っぽいことを言う直樹に緋紗は笑った。
「直樹さんがそんなこと言うなんて意外。女の子だったらお義兄さんや和夫さんみたいにメロメロになるのかな」
「さあね。でも今は赤ちゃんがうらやましいかな。しばらく禁欲生活か」
「あ、あの。別に激しくなかったらいいらしいですよ。私の体型が気にならなければですけど……」
「激しくしないなんて難しいね。少しの間だけだから譲るか」
こんなに子供っぽい直樹を見るのが初めての緋紗はなんだかとても幸せな気持ちになった。
(こんな気持ちって不思議)
「直樹さん。不思議ですね。ここに命があるんですね。いろんなとこにも」
緋紗は全ての『命』を感じる気がした。
「そうだね。命で溢れてるんだね」
二人はそっと抱き合った。
そして三人が暖かい繭に優しく包まれているような気がしていた。
和奏の言うとおりに男の子だった。
緋紗は直樹と出会ってから、これまでなんだかとても神秘的な体験をしているようで不思議な気持ちだ。
ぼんやり生きてきた自分がはっきりと明確な人生を生きている気がしてくる。
それは自分のやりたいこととか社会的なことではなくて、生き方への実感だ。
まだまだどこへ向かっているのかわからないが『こう生きたい』という自分のビジョンが見えてくるようだ。
直樹が優しく緋紗の腹をさする。
「こんなふうに絶対の安心感の中で漂うってどんな感じなんだろうね」
「お腹の中のことって覚えてませんもんね」
「なんだか。緋紗をとられたみたいだ」
子供っぽいことを言う直樹に緋紗は笑った。
「直樹さんがそんなこと言うなんて意外。女の子だったらお義兄さんや和夫さんみたいにメロメロになるのかな」
「さあね。でも今は赤ちゃんがうらやましいかな。しばらく禁欲生活か」
「あ、あの。別に激しくなかったらいいらしいですよ。私の体型が気にならなければですけど……」
「激しくしないなんて難しいね。少しの間だけだから譲るか」
こんなに子供っぽい直樹を見るのが初めての緋紗はなんだかとても幸せな気持ちになった。
(こんな気持ちって不思議)
「直樹さん。不思議ですね。ここに命があるんですね。いろんなとこにも」
緋紗は全ての『命』を感じる気がした。
「そうだね。命で溢れてるんだね」
二人はそっと抱き合った。
そして三人が暖かい繭に優しく包まれているような気がしていた。
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