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風の住処(番外編)
1 怖い保育士
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薫風に頬を撫でられて、颯介は目を開けた。
「そろそろか」
腕時計を見ると四時五十分だ。
公園のベンチで横になっていた颯介は、身体を起こして伸びをした。
今日は友人の絵里奈から、自分の代わりに娘の保育園のお迎えを頼まれている。
颯介と絵里奈は小学校からの腐れ縁で、中学生の時に一度付き合ったが、全く異性としてお互いに魅力を感じられないことがわかり、別れた。
それからは良い親友でもある。
絵里奈は去年離婚してシングルマザーだ。
颯介は最初からうまくいかないことがわかっていたが、盛り上がっている絵里奈は聞く耳を持たなかった。
案の定、相手の浮気とギャンブル好きが理由で、四歳になる娘の葵を連れて実家に戻ったのだった。(だからやめとけって言ったのにあんなパチンカス……)
離婚前から相談にはのっていたが、元のさやに戻ってうまくやっていくには無理な相手に思えていた。
颯介も片親になることが葵にとって不憫だとは思ったが、夫がさすがに他の女のところへ行ってしまったことが決定打になり、離婚に至った。
それから絵里奈は保育園に葵を預け、スーパーでフルタイムで働いている。
今日は棚卸のために残業になってしまうらしい。
絵里奈の両親も都合が悪く、なぜか颯介に葵のお迎えが回ってきてしまった。(気軽に使いやがって)
颯介は魚市場で働いているので、朝早く午後にはもう時間に余裕があった。
葵も颯介になついているので、絵里奈にとって一番頼め安い相手なのだった。
どんぐり保育園に到着した。
ピンク色の鉄のゲートのカギを開け園に入り、一番近くの大柄な保育士に声を掛ける。
「あのー。中野葵を迎えに来ました」
颯介がそういうと怪訝そうな顔をして保育士が答えた。
「委任状はありますか?葵ちゃんのお迎えの人が代わる話をお母さんからお聞きしてませんが」
「えーっと。電話が来てると思うんですが」
颯介は保育士の鋭い目つきにたじたじになって、しどろもどろに答える。
(なんだよ。電話してないのかよ)
「管理上、委任状や確認ができていない人のお引き取りは出来かねますので、確認が取れるまで待っていただけませんか?」
「は、はあ」
颯介は剣幕に押されて黙って待つことにした。(この保母さん、こええ)
待っていると葵が玄関にやってきた。
「颯介おじちゃん」
「おお。葵。今日はママ仕事が遅くなるから俺が来てやったぞ」
颯介は葵が自分のことを知ってると言う事を保育士にアピールするように、声を大きくしていった。
しかし保育士の態度は緩和されない。(融通聞かねえなあ)
しばらくして別の保育士が、
「早苗先生。葵ちゃんのママと連絡取れました。大友颯介さんって方がお迎えに来るそうです」
「わかりました。確認してからにしますね」
保育士が颯介の目の前にやってきた。
「免許証か保険証ありますか?」
「あ、はい」
がさがさとポケットから二つ折りの財布を取り出し、免許証を見せた。
「ご本人ですね。次回から事前にご連絡お願いしますね」
「すみません」
保育士はにこりともせずに言う。(まったく不愛想だな)
颯介はやっと葵と帰ることができた。
「先生。さようなら」
「葵ちゃん。さよなら。また明日ね」
ここでやっと保育士は笑顔を見せた。
少し疲労して颯介は葵の手を引っ張り保育園を後にした。
「そろそろか」
腕時計を見ると四時五十分だ。
公園のベンチで横になっていた颯介は、身体を起こして伸びをした。
今日は友人の絵里奈から、自分の代わりに娘の保育園のお迎えを頼まれている。
颯介と絵里奈は小学校からの腐れ縁で、中学生の時に一度付き合ったが、全く異性としてお互いに魅力を感じられないことがわかり、別れた。
それからは良い親友でもある。
絵里奈は去年離婚してシングルマザーだ。
颯介は最初からうまくいかないことがわかっていたが、盛り上がっている絵里奈は聞く耳を持たなかった。
案の定、相手の浮気とギャンブル好きが理由で、四歳になる娘の葵を連れて実家に戻ったのだった。(だからやめとけって言ったのにあんなパチンカス……)
離婚前から相談にはのっていたが、元のさやに戻ってうまくやっていくには無理な相手に思えていた。
颯介も片親になることが葵にとって不憫だとは思ったが、夫がさすがに他の女のところへ行ってしまったことが決定打になり、離婚に至った。
それから絵里奈は保育園に葵を預け、スーパーでフルタイムで働いている。
今日は棚卸のために残業になってしまうらしい。
絵里奈の両親も都合が悪く、なぜか颯介に葵のお迎えが回ってきてしまった。(気軽に使いやがって)
颯介は魚市場で働いているので、朝早く午後にはもう時間に余裕があった。
葵も颯介になついているので、絵里奈にとって一番頼め安い相手なのだった。
どんぐり保育園に到着した。
ピンク色の鉄のゲートのカギを開け園に入り、一番近くの大柄な保育士に声を掛ける。
「あのー。中野葵を迎えに来ました」
颯介がそういうと怪訝そうな顔をして保育士が答えた。
「委任状はありますか?葵ちゃんのお迎えの人が代わる話をお母さんからお聞きしてませんが」
「えーっと。電話が来てると思うんですが」
颯介は保育士の鋭い目つきにたじたじになって、しどろもどろに答える。
(なんだよ。電話してないのかよ)
「管理上、委任状や確認ができていない人のお引き取りは出来かねますので、確認が取れるまで待っていただけませんか?」
「は、はあ」
颯介は剣幕に押されて黙って待つことにした。(この保母さん、こええ)
待っていると葵が玄関にやってきた。
「颯介おじちゃん」
「おお。葵。今日はママ仕事が遅くなるから俺が来てやったぞ」
颯介は葵が自分のことを知ってると言う事を保育士にアピールするように、声を大きくしていった。
しかし保育士の態度は緩和されない。(融通聞かねえなあ)
しばらくして別の保育士が、
「早苗先生。葵ちゃんのママと連絡取れました。大友颯介さんって方がお迎えに来るそうです」
「わかりました。確認してからにしますね」
保育士が颯介の目の前にやってきた。
「免許証か保険証ありますか?」
「あ、はい」
がさがさとポケットから二つ折りの財布を取り出し、免許証を見せた。
「ご本人ですね。次回から事前にご連絡お願いしますね」
「すみません」
保育士はにこりともせずに言う。(まったく不愛想だな)
颯介はやっと葵と帰ることができた。
「先生。さようなら」
「葵ちゃん。さよなら。また明日ね」
ここでやっと保育士は笑顔を見せた。
少し疲労して颯介は葵の手を引っ張り保育園を後にした。
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